【ツアー報告】7月下旬の大洗~苫小牧航路 2017年7月28日~30日

(写真:オオトウゾクカモメ 撮影:飯田直己様)

多くのミズナギドリ類が遥か北の海域に移動してしまった後のため、全体的には海鳥の個体数が少ない7月航路。それでも南極からやってくるオオトウゾクカモメを観察するには最も良い時期で、過去、観察できなかったことはありません。またクロアシアホウドリの個体数も1年で最も多く、毎回、北上中のカンムリウミスズメが見られ、北の海域ではウミツバメ類にも期待できます。またカマイルカ、イシイルカなど鯨類も多く見られる時期です。今回は直前に発生した台風5号の影響が心配されましたが、たまたまコースが反れたため運航には問題はありませんでした。

 28日、やや蒸し暑さがありモヤがかかった状況の中、22:15には集合が完了したため、大洗フェリーターミナル内にて翌日の連絡、トラベルイヤホンのチェック、見られる可能性の高い海鳥の解説などを行い22:30に乗船しました。このツアーでは集合時間が遅いことから事前にツアー案内を送付してツアーの流れや連絡事項をご確認いただいています。そのため詳しいツアー説明を省くことが可能になり早めに乗船して就寝できるようにしています。

 29日、毎回、金華山沖からの観察としていますが、この時期は少々早く海鳥たちが観察できることが多いため1時間ほど早い07:00からの観察としました。ただこの日は霧のため視界不良の中でのスタートとなりデッキ上の気温は23と高く、生暖かい風が吹いていました。観察をしているとベタ凪だった海上は徐々に波立ってきて次第に風も強まってきました。早くもオオミズナギドリ、コアホウドリ、クロアシアホウドリが現れ08:30からは残念ながら小雨模様になってきました。09:00頃には立て続けにコアホウドリが飛び、09:15にはオオミズナギドリの群れが現れ乱舞していました。09:45にはハシボソミズナギドリが飛び、着水していたクロアシアホウドリが真下から飛び立ちました。10:30にはいつの間にか上がっていた雨が降り始め、再び霧で視界不良になってしまいました。10:40には霧の中、オオミズナギドリの群れと採食行動をするカマイルカが見られ、11:00にはアカアシミズナギドリが現れました。またほぼ同時に着水しているアカアシミズナギドリが見られました。11:10にはようやく視界が開け11:45には空が明るくなってきました。そして次第に海が穏やかになる中、12:20にはハシボソミズナギドリが飛び、12:30にはこの航路では大変珍しいカツオドリが飛んでいきました。13:20には穏やかな海上に浮かぶ7羽のクロアシアホウドリの姿があり、13:40にはかなり距離はあったものの2羽のトウゾクカモメが飛んでいました。14:45にはあまり姿を見る機会がないミンククジラが現れ、15:00には着水している数百羽のオオミズナギドリの群れが飛び立ち、よく見てみるとその中に3羽のオオトウゾクカモメが混じっていましたが接近はありませんでした。15:40にはカマイルカの群れが見られたかと思うと、そのすぐ近くを悠々と泳ぐゴンドウクジラ類と思われる鯨類の群れが見られました。その後は所々で着水しているカンムリウミスズメの群れが見られたほか、16:50にはどこに向かうのか、アオサギが船を追うように飛んでいました。17:20には再びカンムリウミスズメが見られ、17:40にはようやくフルマカモメが現れ、18:40には水面で採食するオオミズナギドリと共に100頭ほどのカマイルカの群れが出現して最後に盛り上げてくれました。船は予定通り19:45に苫小牧フェリーターミナルに到着、20:00に下船して一旦自由行動の後、22:00に再集合して往路の鳥あわせ、またおさらい的に識別ポイントを解説した後、22:30に再度乗船しました。

 30日、この日は前日に見ることができなかったウミツバメ類を狙って早朝04:30から探鳥を開始しました。気温は意外に高く20。どんよりとした曇り空でうっすらと霧がかかっていました。霧雨のような雨が降っていたことから条件は良かったのですが、残念ながらウミツバメ類に出会うことはできませんでした。ただ早朝からオオミズナギドリが飛び、クロアシアホウドリの姿もありました。また昨日、ほとんど見ることができなかったフルマカモメの姿を複数回見ることができたほか、アカアシミズナギドリの姿もありました。そして05:40にやや距離があったもののオオトウゾクカモメが船に並ぶように飛び、直後の05:45には船の後方から接近してきたオオトウゾクカモメが船体脇をかすめるように飛び、最後は悠々と船首を横切っていったため間近にその姿をじっくりと見る幸運がありました。05:50にはハイイロミズナギドリ、06:00には着水していたコアホウドリとクロアシアホウドリが間近を飛びました。そして06:15には驚いたことに船体のすぐ下をまとわりつくように飛翔するカワセミの姿がありました。カワセミが海上を飛んでいる姿を見るのは私は2度目ですが、いずれにしても大変貴重なシーンでした。07:00頃からは時より霧が発生する状況になりましたが07:20にはハシボソミズナギドリが飛び、その後、08:00頃からはようやく晴れ間が見え隠れする状況になってきました。09:15には3羽で浮いているカンムリウミスズメが見られ、10:00には一気に霧が晴れてこの日初めて陸地が見えてきました。この辺りは船が最も陸地に近い場所を航行するせいか、海鳥の出現が停滞するポイントですが、この日はオオミズナギドリが帯状に群れ飛んでいました。その後はみるみる天気が回復して空は青くなりデッキ上は蒸し暑くなってきました。11:00には数百羽のオオミズナギドリの群れが着水状態から舞い上がり乱舞し、その中に混じるクロアシアホウドリの姿も見られました。そして12:00には間近に着水しているクロアシアホウドリが見られたかと思うと、続けざまに間近に着水しているオオトウゾクカモメの姿があり、その後、翼を広げるような動作をするなど意外なほど近くで観察することができました。その後はコアホウドリ、クロアシアホウドリの姿を見ながら15:30まで観察して終了しましたが、終了間際にキアシシギの声が聞かれ、その後に姿を見られたお客様がいらっしゃいました。

 今年の7月航路はすでに北の海域に去ってしまっているはずのミズナギドリ類が比較的見られ、個体数は少ないながらもハシボソミズナギドリ、ハイイロミズナギドリ、アカアシミズナギドリの3種が揃いました。また例年夏にはそれほど見られていないコアホウドリがかなり多く見られました。一方、ウミツバメ類が見られず残念でした。ただ主役のオオトウゾクカモメは10個体ほど観察でき、そのうち2度はかなり近い距離感で観察できたことは幸運でした。またこの時期の定番であるフルマカモメ、カンムリウミスズメも観察することができ、カツオドリ、カワセミ、アオサギ、キアシシギといった意外な出会いも印象的でした。今後もトラベルイヤホンを使用し、海鳥の出現を参加者全員でリアルタイム共有できるシステムでご案内していきますのでご期待ください。この度はお疲れさまでした。

 石田光史

カツオドリ 撮影:飯田直己様

 

クロアシアホウドリ 撮影:巻島杉夫様

 

クロアシアホウドリ 撮影:飯田直己様

 

コアホウドリ 撮影:巻島杉夫様

 

カマイルカ 撮影:飯田直己様

 

オオトウゾクカモメ 撮影:巻島杉夫様

 

コアホウドリ 撮影:飯田直己様

 

オオミズナギドリ 撮影:巻島杉夫様

 

フルマカモメ 撮影:飯田直己様

 

アカエリヒレアシシギ 撮影:巻島杉夫様

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