【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島 2018年4月8日~10日

(写真:アカヒゲ 撮影:脇正太郎様)

ここに行かなければ見ることができない固有種と固有亜種たちが豊富な奄美大島を訪れる春恒例のツアー。毎年雨が多いことが気になるツアーではありますが、今回は3日間共に晴れマークが出る天気予報の中で出発することができました。現地では地元、奄美野鳥の会のガイドが案内をしてくださるため現地ではガイド2名体制でのご案内となります。

8日、今回は直行便のため羽田空港から奄美大島空港にスムーズに移動することができ、予定よりも15分ほど遅れたものの大きなトラブルなく無事到着することができました。到着後は観察機材準備をしていただいてからバスにて出発しました。奄美大島といえば毎回暑さが厳しい印象がありましたが、この日は天気は良かったものの心地よい風が吹いていました。この日は固有種を求めて森に向うことにしましたが、途中にはダイサギ、コサギ、アオサギに混じる黒いクロサギを観察することができました。到着後は早速観察を始めました。森に入るといきなりオーストンオオアカゲラのドラミングが間近に聞こえ、まずはじっと木にとまっているオス個体を観察することができました。種名はオオアカゲラですが、全体に黒っぽい姿は別種のキツツキ類を連想させるものがありました。またしばらくするとメス個体も姿を見せてくれたためオスとメスの両方を観察することができました。毎回、意外と観察に苦労する種だけに幸先の良いスタートでした。また僅かな時間ながら杭に止まって歌うアカヒゲも見られました。その後は森の奥を散策し、叫ぶような声で鳴きながら飛び回るルリカケス、木の実にやってきたカラスバト、ズアカアオバトに出会うこともできました。そして最後には建物の下を動き回りながら採食しているアカヒゲのオスとメスに出会うことができましたが全員で観察することができませんでした。この日は夕方にかけて風がより冷たくなりフリースジャケットがないといられない肌寒さでした。

9日、日の出前にホテルを出てこの日も固有種を求めて森に向いました。まだ月が輝く中、やはり空気が冷たく感じました。途中からの林道ではゆっくり走りながらアマミヤマシギの姿を探しましたが残念ながら出会うことはなく、この日は到着と同時にここ数日見られているというオオトラツグミに絞って観察することにしました。まだ薄暗い中出現を待っていると意外なほどあっさりとオオトラツグミがやってきて小道を歩きながら餌となるミミズを捕食していました。しばらく観察しているとオオトラツグミは何度もやってきてくれ、ほんの数メートルといった距離までやってきてノコノコと歩き回る姿を見せてくれる場面もありました。例年、オオトラツグミはその声を聞くことしかできておらず、今回のように姿をじっくりと観察したことがなかったため大変驚きました。その後は少々時間があったことから水田に立ち寄ってからホテルに戻ることにしました。今年はシギ類の飛来が少ないとのことでしたが、タカブシギ、タシギの姿があり、間近にさえずるセッカの姿を観察して早朝探鳥を終えました。一旦ホテルにて朝食をとった後は林道が続く峠に向いました。

ここではカラスバトの姿がよく見られているとのことでしたが、まずはこのツアーでよく見られているズアカアオバトの姿があり、付近ではアオジ、ウグイスといった奄美大島の冬鳥たちの声がしていました。すると目の前を横切るようにカラスバトが飛び、わっと盛り上がりました。その後はけたたましく鳴くルリカケスが電柱に止まり、その姿を楽しませてくれました。その後は林道を抜けて見事なマングローブ林を眺めてから昼食としましたが、この頃からは日射しが強くなり本来の奄美大島といった感じになっていました。昼食後はアマミヤマガラ、リュウキュウツバメ、リュウキュウサンショウクイの姿が見られました。午後からは過去に渡り途中の珍鳥がよく見られている場所を巡ろうということでまずは運動公園に向いました。ここではこれといった鳥には出会えませんでしたが、渡り途中と思われるツグミ、そして水路ではササゴイの姿がありました。その後は林道を進み広大な公園に向いました。この場所も毎回何かしらの鳥に出会えていますが、この日は残念ながら鳥影が薄く、最後にようやくオーストンオオアカゲラに出会うことができ、付近では渡り途中と思われるシロハラの群れが見られました。そしてやや時間があったことから最後に海沿いにある公園に立ち寄ってみました。ここは夕陽を見るポイントとして知られていますが、芝生広場にはハクセキレイの姿があり、遠くの梢にはサシバ、そして上空をミサゴが飛翔しました。また木の実にはズアカアオバトの姿があり、みなさんでじっくり撮影してこの日の探鳥を終了しました。

10日、ここまでアカヒゲの姿は見られていましたが、まだ不十分との判断からこの日も同様に日の出前にホテルを出て森に向いました。到着すると数羽のアカヒゲが歌い、遠くからはリュウキュウコノハズクの声も聞かれ、ズアカアオバト、カラスバトが飛び交っていました。ひとまずこの時間はアカヒゲに絞ってと考えていたため森の奥にあるポイントでじっと待つことにしました。いつものことながら神出鬼没な鳥で、しかもさえずりが聞こえたからといって見えるものでもないという手強い鳥のため、毎回ポイントを絞って待つという手段を使っていますがこの日は全く気配がありませんでした。ただもう間もなく出発という時間になってようやくポイントにアカヒゲがやってきました。地面を這うように歩き回り、しかも日陰だったことからなかなか姿が見えませんでしたが最後になってようやく倒木に止まってくれ、しかも珍しくじっとしていてくれたので最後の最後でようやく全員でじっくりと観察することができました。一旦ホテルにて朝食をとった後は空港方面に移動し、まずは漁港に立ち寄りました。ここも毎年のように何かしらの珍鳥が見られていますが、この日は3羽のマミジロタヒバリに出会うことができました。突っ立ったような姿勢と長い嘴が特徴的で飛んでは降り、飛んでは降りといった感じで地上採食していました。また隣の荒地にはほぼ夏羽に換羽したムネアカタヒバリの姿もあり、ほかにもイソヒヨドリ、シロチドリの姿もありました。そして最後は海岸に向いました。この頃にはすっかり真夏のような日射しになる中、セイタカシギ、アオアシシギ、オバシギ、ダイゼン、コチドリ、そしてホバリングしているミサゴ、餌を求めて飛び交うクロハラアジサシ、そして最後にツバメチドリの姿を見て探鳥を終了し、奄美群島の郷土料理として知られている鶏飯をいただいてから空港に向いました。

さて、奄美大島といえば雨のイメージが強いのですが、今回は3日間共に晴天で幸いでした。固有種に関しては毎回苦戦するアカヒゲは今回も手強かったですが、とにかくオオトラツグミの姿をじっくりと見られたことが最大の成果でした。オオトラツグミといえば声を聞くのも難しいという印象が定着していましたので今回の出会いには大変驚きました。またオーストンオオアカゲラも意外に苦労するのですが今回はかなりしっかりと観察することができ幸いでした。渡り中の鳥は数少なく、マミジロタヒバリ、ムネアカタヒバリのみでしたが本州ではなかなか出会えない鳥のため貴重な出会いでした。現地でお世話になった奄美野鳥の会のガイドさん、そしてご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

石田光史

オーストンオオアカゲラ 撮影:久野守正様

 

オオトラツグミ 撮影:脇正太郎様

 

ズアカアオバト 撮影:久野守正様

 

ルリカケス 撮影:脇正太郎様

 

オオトラツグミ 撮影:久野守正様

 

オーストンオオアカゲラ 撮影:脇正太郎様

 

オオトラツグミ 撮影:久野守正様

 

アカヒゲ 撮影:脇正太郎様

 

オーストンオオアカゲラ 撮影:久野守正様

 

ズアカアオバト 撮影:脇正太郎様

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