【ツアー報告】空の王者 イヌワシに会いたい! 2019年8月3日~4日

(写真:イヌワシ 撮影:宅間保隆様)

ここ数年、夏といえば危険レベルなどという過去に聞いたことがないような単語でその暑さが表現されるようになりました。もちろんそもそも真夏の時期は国内でのバードウォッチングは一休みではありますが、それでも高山帯や亜高山帯に出かけたり、外洋に出ての海鳥観察など、僅かながらツアーを企画しています。その中でも長期に渡って盛夏の時期の恒例ツアーになっているのがこのイヌワシに会いたいです。何より暑い日は下界よりはやや涼しい場所に行きたいものです。そして歩き回ることも困難なため定点観察が良いだろうとの考えもあり、ちょうどそれらにマッチしたのがこのツアーだったというわけです。今年は梅雨明けが大幅に遅れたことから心配されましたが、台風接近もなく逆にちょうど晴天続きの予報の中で出発することができました。

3日、朝からムッとするような暑さの中、週末で混み合う東京駅を予定通りに出発しました。新幹線は順調に進み、車窓からは真夏を連想させるような青空が見えていましたが、それだけに現地の暑さも気になりました。米原駅到着後はムッとするような暑さと照り付ける太陽の下、当日日帰り参加のお客様と合流してから専用バスにて早速、伊吹山ドライブウェイに向かいました。1時間ほどの移動ではありましたが、バス車内ではイヌワシについて基本的な解説をさせていただき30分ほどで到着したドライブウェイのゲートでは山頂付近は視界やや良好、気温26℃との表示がありました。くねくねとした道をバスはグイグイ登り、次第に眼下に広がる町並みが遠くなっていきました。山頂駐車場までやってくると全体に霞んだような視界ではありましたが、濃霧による視界不良はなく、ひとまずトイレに寄っていただいてから熱中症対策として水を購入していただき、それから観察を開始しました。この日の観察はほぼ午後のみのためあまり時間はありませんが、イヌワシの観察例は午後のほうが多いため期待して待つことにしました。太陽がジリジリと照り付けて次第に暑さが厳しくなってきましたが、森の中からはイカルやホトトギスの声が聞こえ、付近ではホオジロがさえずっていました。また見上げるとツバメ、イワツバメが飛び、コシアカツバメの姿もありました。そして夕方、どこからともなくやってきたイヌワシが眼下にある大きな岩に止まりました。距離がありなかなか目につく場所ではなかったですが、望遠鏡で見るとそれとわかる姿を捉えることができ、時折羽繕いをする様子を見ることができました。ただいつもならばつがいでいることが多いのですが、この日はなぜか1羽での登場で、結局その後、音もなく飛び立つと対岸の森に向かって飛んでいきました。この方向はこの時間は逆光になることから、飛翔している姿は光を浴びて銀色に輝いてみえました。ひとまずイヌワシには出会えましたが、この日の登場はこの1度だけでした。

4日、早朝からムッとするような暑さの中、この日も日帰りでご参加の皆様と合流してから専用バスにて伊吹山ドライブウェイに向いました。昨日よりも時間が早いこともあってか山頂付近の気温は21℃、視界は同様にやや良好と表示されていました。この日もまずは山頂駐車場を目差しましたが、周辺の風景を見る限りでは山頂駐車場付近にはうっすらと霧がかかっているものの、昨日よりも天気が良く、眼下の視界に関してはより良いように感じました。昨日同様にまずはトイレに寄っていただき、また水を購入していただいてから観察機材準備をして観察を開始しました。この日も見る見るうちに青空が広がり、ツバメやイワツバメが飛び交っていました。またこの日はなぜかアカゲラやメジロがやってきて付近の木に止まってくれたり、ホトトギスがけたたましく鳴き交わしていました。ただ午前中は全くイヌワシの動きはありませんでした。午後になると、光線の関係から暑さが次第に厳しくなってきてしまい、当然のことながら疲労も増してくのですが、それでもなかなかイヌワシは姿を見せず、ただ反面、イヌワシに期待ができる時間に近づいてきていることは確かでした。午後になるとなぜか周囲を複数のトビが飛びはじめ、あたかもイヌワシが飛翔しているかのような光景が連続して見られました。ただ飛翔形の翼先の特徴や尾の形など、ここではバス車内でのレクチャーが生かされたようでした。そうこうしているとようやく対岸の一番遠くの稜線沿いに2羽のイヌワシが飛翔している姿が目に飛び込んできました。かなり距離がありましたが、大きく翼先を持ち上げたスタイルはイヌワシの特徴通りで、悠々と見事な飛翔をしていました。ただ高度が下がったらしく、稜線下の逆光の部分に入ってしまったことから一旦見失ってしまい焦りましたが、イヌワシは崖に沿って飛翔しており、見る見るうちに近づいてきました。その後は一旦高度を上げると羽ばたきもせず高速で我々のいる場所の裏山に入り、そのため一旦見失いましたが再び頭上から現れると、上空で急旋回するような行動を見せ、翼をたたんだような形にしたまま対岸の岩に止まりました。もう1羽は姿を消しましたがその後、飛んできて寄り添うように岩に止まり、結局つがいの状態で観察することができました。しばらく観察していましたが1羽が風に乗るようにふわっと飛び立つと、もう1羽もそれを追うように音もなく飛び立ち、その後ろ姿は見る見るうちに離れていきました。イヌワシが去ってしまった後もその余韻は続き、イヌワシが持っている独特の存在感のようなものを全員で感じることができ、厳しい暑さの中でじっと待ち続けた苦労が報われほっとしたのでした。

すっかり忘れていましたが、イヌワシ観察には天候と視界が重要です。今回は濃霧に悩まされることなく2日間の観察ができたことがまずラッキーでした。ツアー中にもお話ししましたが、通常3~4日程度は時間が欲しい大型猛禽類観察ですが、ここでは単にラッキーなのか、イヌワシの行動範囲が狭いのか、かなりの確率でイヌワシに出会うことができ、今回も2日間ともにイヌワシに出会うことができました。イヌワシは天然記念物に指定され、生息数が少ない貴重な猛禽類です。ごく限られた場所でしか見ることができないですが、今年もその姿を見ることができました。今後もこの場所で見られ続けることを祈ると共に来年はぜひ巣立った若鷲の姿を見たいものです。極めて暑い中での探鳥となりご苦労様でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

メジロ 撮影:中谷博之様

 

イヌワシ 撮影:高木信様

 

イヌワシ 撮影:須崎明男様

 

イヌワシ 撮影:日下部桂子様

 

イヌワシ 撮影:宅間保隆様

 

アカゲラ 撮影:中谷博之様

 

イヌワシ 撮影:高木信様

 

イヌワシ 撮影:須崎明男様

 

イヌワシ 撮影:日下部桂子様

 

イヌワシ 撮影:中谷博之様

 

イヌワシ 撮影:須崎明男様

 

イヌワシ 撮影:日下部桂子様

 

イヌワシ 撮影:日下部桂子様

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