【ツアー報告】東シナ海第二の秘島 甑島 2025年4月25日~28日
鹿児島県薩摩半島から西へ約30km。東シナ海に浮かぶ上甑島、中甑島、下甑島と縦に3島を連ねる甑島は国定公園にも指定されています。今回は鹿児島空港から川内港フェリーターミナル、そこから高速艇甑島で下甑島にある長浜港に向います。タイトルにもある通りの秘島で、過去の渡り鳥の出現データを見る限りではなかなか興味深いものがあり、その内容は春の渡り鳥観察の定番、与那国島にも決して負けていない充実ぶりです。さらに心強いのは現地在住で、毎日時間を見つけては渡り鳥の状況を見ていてくれる現地ガイドさんが同行してくださることです。また宿泊は大浴場完備で海の幸をふんだんにいただける心地よい宿に3連泊するため、毎日の荷物の出し入れなく過ごすことができ大変楽です。今回は最終日に雨の予報が出ているものの、前半の3日間は概ね天気が良いとのことでした。
25日、早朝からどんよりとした曇り空の羽田空港を予定通り出発して鹿児島空港に向い、集合時間の12:00前には11名のお客様のご集合が完了したことから、甑島に向かうフェリー乗り場に向かいました。バスは順調に進んだのですが、ここで船会社から連絡があり、海況悪化に伴い、予定していた長浜港ではなく上甑島にある里港に到着地が変更になるとのことでした。フェリーターミナル到着後は各自自由行動で買い物などしていただき、その後、14:00に再集合していただき14:10から乗船し、高速艇甑島は14:30に出航して上甑島の里港に向いました。海況が悪化しているとのことでしたが、これといった大きな揺れはなく、15:20に里港に到着後は現地ガイドさんと共にバスにて宿に向いました。上甑島、中甑島を経由して宿がある下甑島まで約1時間移動し、到着後は観察機材を準備していただいてから下甑島のメイン探鳥地に行ってみました。相変わらずの曇り空でやや風が吹いていたことから肌寒く感じる中、最初の畑地ではムナグロが見られ、その後は畑沿いに歩いてみました。ここではキジが歩きまわり、草地からはカルガモが飛びたちました。またハシブトガラスが騒いでいたことから見てみるとアオバトが追われていて林に逃げ込んでいきました。さらに歩くと美しい亜麻色のアマサギが見られ、地上採食しているキマユホオジロ、ムネアカタヒバリ、タカブシギが見られました。その後は少々時間があったことから畑地で探鳥し、ここではホオアカ、コホオアカ、アトリ、セッカ、コシアカツバメなどを見て宿に戻りました。宿に戻った後は島の魚介類をふんだんに使った豪華な食事に舌鼓をうったのでした。
26日、この日は快晴の中、早朝に宿周辺を歩いてみました。昨年はカラスバトの声がかなりしていましたが、この日はこれといった鳥の気配はなく、ヒヨドリやツバメが飛び交っていました。林道を歩くとヤブサメやエゾムシクイの声が聞こえ、数羽のアオバトが木に止まっていました。さらに歩くとカワラヒワやヤマガラが見られ、コサメビタキがフライキャッチをしては電線に止まっていました。そして最後にようやく複数で飛び立ったカラスバトが見られ、アカハラの姿もありました。その後は宿に戻って07:30から朝食をいただき、08:30に現地ガイドさんと合流して、この日もまずは水田に行ってみました。ここではシマノジコが見られているとのことで、しばらく観察していると、美しいシマノジコのオスが複数回やってきては畔に乗ったり、草地を歩いたりしてくれました。ここではほかにもノビタキ、キマユホオジロ、コホオアカ、タヒバリが見られ、付近の水田にはたった1羽ながらツバメチドリの姿もありました。その後は下甑郷土館で休憩するとともに現地ガイドさんが撮影した野鳥の写真を見学させていただきました。その後は観光も兼ねて上甑島に移動しました。途中、鷹落浜では断崖の景観を楽しみ、その後は甑島大橋からウミネコの群れや繁殖中のミサゴを見ることができました。この日は快晴だったこともあって見事な景観を各所で見ることができました。その後は上甑島で名物のオオウナギを見てから昼食の時間とし、昼食後は一気に水田に向い、まずは草地でシマアオジの出現を待ってみました。ここではスズメやカワラヒワ、アトリの群れが飛び回っては草に止まっていて、しばらく見ているとホオアカ、コホオアカ、キマユホオジロ、シベリアアオジが時折、草に止まってその姿を見せてくれましたが、残念ながらシマアオジは見られず、神社に立ち寄ってから一旦、トイレに寄ってから別の水田に行ってみました。ここでは亜麻色のアマサギの群れが目立ち、朝にシマノジコを見た場所ではいまだにシマノジコが見られていました。周辺ではノビタキ、コホオアカ、キマユホオジロ、アオジが見られ、やや歩くとオウチュウの姿があったことからやや接近して観察、撮影することができました。観察後に戻ると水田にはコチドリ、シベリアアオジ、ムネアカタヒバリがいたことからじっくり観察し、最後はツバメチドリを見てこの日の探鳥を終えました。そしてこの日も島の魚介類をふんだんに使った豪華な食事に舌鼓をうったのでした。
27日、この日はさらに快晴で、早朝からきれいな青空が広がっていました。昨日同様に早朝に宿周辺を歩いてみました。相変わらずヒヨドリやツバメが飛び、メジロが騒がしくさえずっていました。海を眺めるとカツオドリが飛んでいて、ダイビングしては魚を狙っていました。林道を歩くとこの日も複数のアオバトが見られ、その後はヤマガラ、サンショウクイ、そしてビンズイの姿もありました。戻る途中では再び3羽のアオバトを見ることができ、新芽を盛んについばんでいて、付近ではオオルリの姿も見られました。宿に戻って07:30から朝食をいただき08:30に出発して、この日は公園に行ってみました。ここではシベリアムクドリが見られていたとのことですが、この日は残念ながらその姿はなく、その後は神社に行ってコイカルを探してみました。すると向っている途中で数羽のコイカルが飛んできて電線に止まり、その後は木に止まってから飛び去りました。結果的にはわずかな時間でしたがひとまずその姿を見ることができ幸いでした。その後は草地でシマアオジの出現を待ってみました。この日は晴天だったせいか一気に鳥の数が減ったようで、スズメ、カワラヒワは目立ちましたが、それ以外はアトリも2羽になり、キマユホオジロ、コホオアカ、ホオアカが時々草に止まる程度でした。ただしばらく待っているとシマアオジのメスと思われる個体が何回か姿を見せてくれ、草に止まった姿をなんとか観察することができました。またこの日はオオヨシキリ、ホシムクドリも見られました。その後は公園まで移動して昼食の時間とし、昼食後は別の水田に行ってみました。ここで相変わらずシマノジコが見られていて、ほかにもノビタキ、コホオアカ、キマユホオジロ、シベリアアオジが見られ、ふと見るとオウチュウが間近にやってきていたことから、ようやく良い距離感で観察、撮影することができました。また付近の水田には2羽のタカブシギと1羽のウズラシギが見られ、コチドリ、ツバメチドリも見ることができ、一旦休憩を挟んで再び反対側の草地に行ってみました。この時間は風がなかったことからかなり暑さが厳しく、鳥の動きが悪かったですが、コホオアカ、キマユホオジロ、ホオアカを見ることができました。そして最後の1時間は再び反対側の水田に向い、ようやく落ち着いてきた光線の中でシマノジコを観察、撮影することができ、この日の探鳥を終えました。そしてまたまたこの日も豪華な食事に舌鼓をうったのでした。
28日、天気予報通り、前夜から降り出した雨が朝まで続いていました。この日はそもそも早朝探鳥の予定はなかったことから、予定通り07:30から朝食をいただき08:30に出発して現地ガイドさんの勧めもあって島の反対側にあるナポレオン岩に向いました。小雨が降り続き、ややもやがかかっている中でしたが目の前にナポレオン岩を望むことができ、上空にはアマツバメが飛び交っていました。その後は西山小学校跡を通って、平田医師が瀬々野浦への往診の道すがら「往診の道すがら見し しんきろう」の句を詠んだとされる、しんきろうの丘を通り、その後は椋鳩十が著した「孤島の野犬」の舞台が下甑島であることを記念して建てた、孤島の野犬像を見てから最後に水田に行ってみました。この頃にはようやく雨が上がり、風が吹いてきたせいか、昨日とは打って変わって肌寒く感じました。全体を見渡した感じではかなり鳥の数が減っているように感じましたが、いきなりハヤブサが捕らえた獲物をつかんで飛び、畑地ではムネアカタヒバリが群れていて、遠くの電線にはオウチュウが止まっていました。また別の水田では数羽のシベリアアオジが群れで地上採食していて、うち1羽はかなり色鮮やかな個体でした。また観察中には電線にムクドリとホシムクドリが見られ、その後は宿にて昼食をいただいてから長浜港に向いました。
今回の甑島は日中に真夏のように暑い日もあれば、早朝や夜には暖房が必要なほどの寒さがあったりと、気温差がかなり大きい4日間でした。ただ現地ガイドさんのおかげで、美しいオスのシマノジコをじっくり見ることができ、メスながらシマアオジの姿も見られました。またオウチュウも見られ、鳥相から甑島らしさを実感できました。ほかにもキマユホオジロ、コホオアカ、シベリアアオジ、コイカル、ツバメチドリなども見られ、亜麻色のアマサギの数が多かったことも印象的でした。ご参加くださいました皆様、ありがとうございました。そして快適な空間と豪華なお食事が準備してくださった宿スタッフの皆様、大活躍してくださった現地ガイドさんにも合わせて感謝申し上げます。
石田光史