【ツアー報告】春の渡り鳥を求めて!新潟県・粟島A 2021年4月24日~26日

(写真:ヒメコウテンシ 撮影:大林修文様)

春と秋の渡りの時期はさまざまな離島に出かけて普段なかなか目にできないような珍鳥との出会いに期待するというバードウォッチャーは多いのではないでしょうか。離島に行くためには船に乗らなくてはいけないため少々面倒であり、欠航のリスクもありますが行かなくては目的達成ができないのも事実です。今回訪れる新潟県の粟島は探鳥地のほとんどが小さな畑であり、歩く道も極めて細いことから、周辺住民の方々への配慮を含めて我々は6名様限定という超小型ツアーで企画し、全員で出現した鳥たちを観察できるようさまざまな配慮をしています。

24日、晴れの東京駅から出発して次第に曇ってくる中、船の運航時間の関係から通常よりも遅い16:00に岩船港を出港して、この日は高速船で1時間、穏やかな中を順調に航行して粟島には17:00に到着。船を降りると空は曇り空でとにかく寒い。急いで宿に入った後は準備をしていただき約1時間ほどながら徒歩探鳥に出かけることにしました。宿周辺ではこれといって鳥の気配はなかったのですが、ある場所では30羽ほどのツグミが群れていて、よく見るとカワラヒワ、アトリ、カシラダカもいてなかなか賑やかな状況になっていました。期待しながら1羽1羽丁寧に見ていきましたが珍しい鳥は混じっておらず、それでも個体差のあるツグミたちの姿を興味深く観察することができました。しばらく見ているとハクセキレイがやってきて、最後はどこからやってきたのか1羽のベニヒワのオスが姿を見せてくれ、いきなり良い出会いがありました。少々時間があったので付近の畑にも行ってみると電柱でイソヒヨドリが歌い、きれいな夏羽のアトリが木々に群れ、それに混じるニュウナイスズメ、畑の支柱にとまるジョウビタキのメスを見てこの日の観察を終了しました。

25日、この日は朝から晴れ間が見える中、05:30から宿周辺を徒歩探鳥することにしました。早朝ということもありクロツグミのさえずりが聞こえ、ヒヨドリの群れが帯状に飛んで渡っていく様子も見られました。少々歩くとベニマシコのメスの姿があり、地面には数羽のアオジが群れていました。ある場所ではツグミ、カワラヒワ、アオジ、カシラダカがせっせと地上採食していました。畑まで行くと相変わらずアオジが多く、ホオアカの姿もあり、アオサギ、ダイサギが飛び、昨日は見かけなかったアカハラが3羽、地上で餌を探していました。海岸まで行くとウミウ、ヒメウ、ウミネコ、オオセグロカモメの姿がありました。08:00から宿にて一旦朝食をとった後は別の場所に向かいました。ツアーでは北部への移動は距離があることから送迎をしていただいているため10分ほどで到着することができます。やや風があり肌寒く感じる中、ひとまず畑を見てみました。こちらは残念ながら鳥影は少なく、強風に流されるようにかなりの数のツグミの大群が飛んでいました。ほかには木に群れる10羽ほどのマヒワの群れ、飛び回るハヤブサの姿があっただけで、その後は突然の雨のため一旦宿周辺まで戻ることにしました。集落までくると幸い雨はほとんど降っておらず、木の実に群れるツグミ、アカハラ、クロツグミ、校庭ではツグミの群れを見てから一旦、宿にて昼食としました。北部の鳥の状況が今一つなことから午後からは再び宿周辺を見てみました。畑まで行くとカキの木に止まるクロツグミの姿があり、色鮮やかなアトリの夏羽が群れていました。そのため群れを見ていると、その中に混じるヒメコウテンシの姿があり、やや草丈が高かったもののなんとかその姿を見ることができました。その後は海岸線を歩き牧場に向かいました。海岸ではウミウ、ヒメウ、ウミネコ、オオセグロカモメが見られ、海上に浮いているカルガモの姿もありました。牧場に向かう道もとにかくアオジの姿が多く、亜種シベリアアオジの姿も見られました。また道端に出てきて餌を探すルリビタキのメスも何度も見られ、最後は畑で昨日見たベニヒワのオスが地上で餌を探し学校方面に飛んで行きました。

26日、深夜にかなり強風が吹いていたのが気になりましたが早朝はそれほどでもなく、一部に青空が見える中、この日も05:30から宿周辺を歩きました。畑はやや寂しく数羽のカシラダカ、カワラヒワのみで、その後はヒメコウテンシを再度探してみました。畑地を歩きながら探してみましたがその姿はなく、ただ最後に飛んでいる姿が見られたのでまだ渡ってはいないことだけはわかりました。その後は06:30から別の場所に向かい、強風の中で探鳥を行いました。ただこの日も鳥影は少なく、岬付近で飛び回る15羽ほどのイスカの姿を見るにとどまりました。その後は一旦宿にて朝食をいただき、09:45からは宿周辺から畑を歩いてみました。するとようやく全身が見える形でヒメコウテンシを見ることができ、じっくりと時間をかけて観察することができました。またこの日はイスカの群れが飛び回っていて、たまたま松の木に止まったことから順光側に回って観察しました。その後は再び畑を見てまわりましたがイスカの群れは今度は畑のほうまで飛んできてくれ、賑やかな状況になりました。ただここで黒い雲がやってきたかと思うと、突然、あられが降ってきたため屋根のある場所に逃げ込んで止むのを待つ場面がありました。その後は畑に降りているクロツグミ、飛び回るノビタキなどを見ることができましたが、ここでこの日の高速船が欠航するとのアナウンスがあり延泊することが決定してしまいました。島内は風はすでになくなってはいましたが沖合は波が高いようでした。一旦、宿まで戻ってひとまず昼食をとっていただき14:00から北部で探鳥することにしました。本来であれば粟島のメイン探鳥地であるはずですが、今回は何度来てもこれといった鳥に出会うことができませんでしたが、この日はようやく枯れ草に止まったコホオアカに出会うことができ、別の場所ではカワラヒワ、カシラダカと一緒に地上採食している2羽のベニヒワに出会うことができました。昨日まで見られていた個体は胸まで真っ赤なオスでしたが、この日に出会った2羽はメスで仲良く採食していました。ただ、それ以降は鳥影がなかったことから早めに集落まで移動して公園で亜種シベリアアオジなどを見てから宿に戻りました。

27日、この日は08:00発の高速船に乗るため06:30から朝食をいただく予定でしたが、早朝から快晴無風の中、05:30から1時間だけ歩いてみました。いきなり宿前の草地にずっと見られているベニヒワのオスの姿があり、その後は畑でカシラダカ、アトリ、ニュウナイスズメ、そしてこの日も飛び回っている15羽ほどのイスカの群れが、たまたま杉の木に止まってくれたためその姿を観察してから朝食をいただき、この日は予定通り08:00の高速船で粟島を出発し、穏やかな海を進み帰路につきました。

今回は離島ならではの定期船の欠航、延泊といったアクシデントがありご苦労をおかけする形になってしまいました。ただここ数年では最も鳥の数が多い印象で、初日に見たツグミの群れや鮮やかな夏羽のアトリの群れは特に印象的で、カシラダカの夏羽も見事でした。そんな中、数多くの亜種シベリアアオジが見られ、久しぶりにヒメコウテンシにも出会うことができ、コホオアカ、ベニヒワ、イスカといった鳥たちも盛り上げてくれました。また秋にはやや違った鳥たちが渡っていきます。もちろん離島での観察は運次第ではありますが、気長に通ってみるのも良いものです。またの機会、ご参加いただけましたら幸いです。この度はありがとうございました。

石田光史

コムクドリ 撮影:大坪昭允様

 

ベニヒワ 撮影:大林修文様

 

ノビタキ 撮影:大坪昭允様

 

コホオアカ 撮影:大林修文様

 

ヒメコウテンシ 撮影:大坪昭允様

 

クロツグミ 撮影:大林修文様

 

カシラダカ 撮影:大坪昭允様

 

アトリ 撮影:大林修文様

 

ルリビタキ 撮影:大坪昭允様

 

シベリアアオジ 撮影:大林修文様

 

アトリ 撮影:大坪昭允様

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