【ツアー報告】落石クルーズで夏羽のエトピリカに会いたい!(追加設定) 2021年7月7日~9日

(写真:エトピリカ 撮影:遠藤英一様)

コロナウイルス感染拡大から長らく運休していた根室落石ネイチャークルーズ。この夏こそはとの思いでツアー企画しましたが、残念ながらなかなか運行再開の連絡はきませんでした。ただようやく6月初旬になって、数日前からの健康観察データ提出など一部条件付きながら運行を再開するとの連絡が入りました。この落石クルーズには実は営業運行以前からお付き合いさせていただいており、試験運行時の乗船やその後の意見交換会にも出させていただきました。その後、営業運行が始まってからも道東ツアーではこの落石クルーズをツアーには必ず入れるようにして微力ながら応援してきました。そのため今回1年半ぶりに乗船できることは感慨深いものでした。

7日、曇り空の羽田空港をほぼ予定通りに出発して釧路空港に向かいました。本来であれば中標津空港に行く予定でしたが残念ながら減便による欠航。結果的には目的地の根室までは3時間ほどかかり、当初の倍ほどの時間を要することになってしまいました。釧路空港に到着後は観察機材を準備してから出発し、宿泊地である根室市を目指しました。早速、根室特有の霧、さらには霧雨模様の中、この日はわずかな時間ながら途中で探鳥するため、まずは道の駅に立ち寄り、その後は湖畔に佇むタンチョウの姿を見ることができました。繁殖期のタンチョウは各湿原に生息していて、ちょうど今頃はヒナを連れていてもおかしくはない時期ですが、この個体は繁殖をしていない個体のようでした。その後はエゾカンゾウの花が咲き乱れる湿原の道を走ってみましたが、ここではタンチョウの姿はなく、見る見る霧が濃くなる中、最後は岬に行ってみました。ただここでは残念ながらさらに霧が濃くなり雨も降る中、湿原から聞こえるノゴマ、シマセンニュウの声を聞き、地上を歩きながら餌を探すヒバリの姿を見てから根室市内のホテルに向かいました。

8日、天気予報は終日曇りながらも、夜に雨が降ったようで早朝は地面が濡れていました。この日も相変わらずの霧の中、ホテル近くにある公園に早朝探鳥に出かけました。バスを降りると残念ながら霧雨も降っていて傘が必要な状況でした。早速、シロハラゴジュウカラの親子連れが愛想良くその姿を見せてくれ、さらに進むと巣立ったばかりのヒナを連れたノビタキの親子が公園内を飛び回っていました。またハシブトガラ、ヒガラもヒナを連れていて忙しそうにしていて、付近の樹洞ではシジュウカラが営巣中でした。その後は芝生で餌を探すアオジ、さらには真っ赤なベニマシコもちらっと姿を見せてくれ、池ではオオセグロカモメ、ウミネコの美しい夏羽個体が水浴びを繰り返していました。ただ雨のせいか期待していた小鳥類のさえずりは少ない印象でした。一旦、ホテルで朝食をいただいた後は落石漁港まで移動して落石クルーズに乗船しました。雨のためやや時間を遅らせてホテルを出てみましたが、状況はそれほど変わらず霧雨の中を進み、到着後は各自準備をしていただいてから出航しました。この日は波は穏やかな予報でしたが、前日のうねりがやや残り、出航後はしばらくの間、大きなうねりの中を進みました。まずはウトウの群れが海上に群れ、その後はうねりがあったせいかこのクルーズではあまり目にしないミズナギドリ類の群れが霧の中から出現しました。うねりが大きくじっくり観察することはできませんでしたが、ハシボソミズナギドリ、ハイイロミズナギドリの混群で、その中には嘴がピンク色のアカアシミズナギドリの姿もありました。また悠々と飛翔するコアホウドリの姿もあり、着水した姿も間近に見ることができました。その後はさらに霧が濃くなる中を進み、ケイマフリが着水しているエリアではディスプレイする様子や声も聞くことができました。その後はようやくうねりが収まってくる中、ようやくエトピリカの成鳥生殖羽が現れましたが船の間近だったことから飛んで逃げてしまい、じっくりと観察することができませんでした。その後は空がやや明るくなる中、ラッコが船にグイグイ寄ってきて愛嬌を振りまいてくれ、最後は岩場で休んでいるチシマウガラスを観察。エトピリカの成鳥生殖羽も貴重ではありますが、このチシマウガラスの成鳥生殖羽を国内で観察できることもさらに貴重な経験と言えるでしょう。この日はあまり光の具合は良くありませんでしたが、岩場に止まる複数の個体を見ることができました。下船後は30分ほどバスにて移動して各自昼食を購入していただいてから霧雨の中、野付半島にあるネイチャーセンターに移動しました。到着した野付半島は雨は落ちてはいなかったもののどんよりとした空模様で風が冷たく、肌寒く感じました。遊歩道沿いに歩きながら小鳥類を探しましたが、寒さのせいか鳥たちの声はほとんどなく、草原に群れるエゾシカだけが元気な様子でした。それでもオジロワシが飛び、わずかながらシマセンニュウのさえずりが聞こえてきました。この場所では4個体ほどのシマセンニュウが鳴き交わしていて、それなりに賑やかにしていてハマナスの上でさえずる姿を見ることもできました。また人気のノゴマもさえずりはなかったもののオス、メスを見ることができ、さえずるオオジュリンも見られました。またエゾカンゾウが咲き乱れる場所では飛び回るカッコウの姿も見られました。その後は根室に向けて移動を開始し、途中、道の駅に立ち寄り、最後は湿原でタンチョウの親子を見てこの日の探鳥を終えました。

9日、天気予報は相変わらず曇りながらも、この日は全道的に天気が良いことから期待して早朝に外を見ると雲ってはいるものの雨が降った形跡はなく、なんとなく空が明るく感じました。前日に比べて肌寒く感じる中、この日も早朝に公園に向かいました。雨が止んでいたせいか、この日はエゾセンニュウが独特のさえずりで歌い、池では相変わらずオオセグロカモメが水浴びをしていました。周辺ではコムクドリの姿があり、ようやくさえずるノゴマに出会うことができました。林ではハシブトガラやヒガラ、ノビタキがヒナを連れて動き回り忙しくしていました。そうこうしている間にも空には青空が広がりだし、ようやくチャンス到来とばかりに期待しながら一旦ホテルにて朝食。その後は昨日同様に落石漁港に向かいました。途中、空を見上げると見る見るうちに青空が広がり霧もない絶好のコンディション。しかも無風、波もうねりもない状況で船を出すことができました。間近に見るユルリ島は緑が濃く、空の青が海面に映り見事な風景。どこまでも見渡せるためウトウの群れも数が多く感じられとても鮮やかに感じました。かなり距離はありましたがウミガラスのつがいがいたことから船をつけていただき手に取れるような距離感でじっくり観察。するとどこからやってきたのかクロアシアホウドリが悠々と飛んで行きました。その後はエトピリカの非生殖羽個体をまずは観察し、ついには念願のエトピリカの美しい生殖羽個体を3個体ほど堪能することができました。もちろんラッコの親子連れやゴマフアザラシも観察し、チシマウガラスやケイマフリも昨日に比べて光線が良かったことからじっくりと観察することができ、なかなか体験することができないような最高のコンディションでのクルーズを終えて釧路空港に向かいました。

さて、果たして落石クルーズに乗船することができるのだろうか?という状況の中でのスタートではありましたが、幸いにも直前になって乗船できることになり本当に幸いでした。夏季は海況不良は少ないものの道東沿岸特有の濃霧があり、今回も天候不良もあって苦戦のスタートでした。ただ9日のクルーズはこの時期としては極めて珍しい快晴無風。もちろんの濃霧もなかったことからかなり遠くまで見通すことができ、おかげさまで成鳥生殖羽のエトピリカを堪能することができたほか、ウミガラス、チシマウガラス、ケイマフリ、ウトウ、さらにはコアホウドリやクロアシアホウドリ、ラッコも観察することができました。またクルーズ以外の時間はなかなか良い条件にはなりませんでしたが、タンチョウ、ノゴマ、シマセンニュウ、オオジュリン、ベニマシコ、ノビタキ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラなどを見ることができました。北海道は素晴らしい探鳥地です。また季節を変えてぜひお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

エトピリカ 撮影:岩尾信治様

 

クロアシアホウドリ 撮影:遠藤英一様

 

コアホウドリ 撮影:岩尾信治様

 

ウトウ 撮影:遠藤英一様

 

シマセンニュウ 撮影:岩尾信治様

 

ウミガラス

 

ケイマフリ 撮影:岩尾信治様

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