【ツアー報告】春の佐渡島 繁殖期のトキと渡りの小鳥たち 2022年4月22日~24日

(写真:トキ 撮影:渡邉哲文様)

学名、ニッポニア・ニッポン。トキは日本を象徴する鳥とも呼ばれ、バードウォッチャーなら誰でも一度は見てみたい鳥でしょう。日本では20世紀初頭までに個体群が急速に減少し、環境省レッドリストでは野性絶滅の状態にまでなってしまいました。ただその後の保護活動により、2000年代以降は個体数が回復し、現在、推定個体数は478羽になりました。この貴重な鳥を観察するツアーは絶対に不可欠と思ってはいましたがなかなか前に進まないまま時間が過ぎてしまいました。その後もさまざま思いを巡らせつつ現地の状況を見極めてきましたが、結果としてやはり現地で現地のトキ観察のルールを熟知した方の同行がツアーにはどうしても欠かせないと判断しました。そしてこの度、とあることから現地案内を引き受けてくださる方と知り合うことができ、長らく思いを巡らせていた佐渡島ツアーがようやく企画、催行決定となりました。

22日、朝から晴れている東京駅を予定通りに出発して新幹線はひとまず新潟駅を目指しました。ただ天気は不安定で越後湯沢駅付近からは残雪がある中、小雨模様となってきました。ただ新潟駅までくると天候は回復していて薄曇りの中、佐渡汽船フェリーターミナルに向かい、待ち時間を利用して各自昼食をとっていただいてから乗船。おけさ丸はに佐渡島両津港に向かって出航しました。船からの観察は予定していませんでしたが出航後はウミネコが乱舞し、その後は穏やかな海上を飛ぶ、オオミズナギドリを見ながら進み両津港に到着。到着後はドライバーさん、そして現地ガイドさんと合流後は、観察機材を整えてバスに乗車。この日は時間が限られていることから広範囲の探鳥は避け、トキに絞って案内していただくことにしました。この日はまず加茂湖近くの水田まで行き、ここでは飛翔するトキの姿を観察することにしました。ここも現地ガイドさんが早くから目をつけてくださっていた場所で、到着後、いきなり雨が落ちてきてしまいましたが、わずかな時間で早くもトキが飛んできて我々が乗るバスの上を飛んだり、針葉樹の林の中に飛び込んでいく様子などを観察することができました。その後は水田をめぐって、今度は水田を歩きながら餌を探しているトキの姿をバス車内から観察することができました。トキはダイサギなどの白いサギ類と見間違うのかと思っていましたが、繁殖期のトキは灰黒色の部分があり、その面積や場所が個体により異なっていてなんとも言えない独特の風貌でした。また夕方は塒に飛んでくるトキを待ちました。周辺ではホオジロがさえずり、キジのつがいも歩いてきていました。ただこの日は遠くを1羽のトキが飛んだのみで思ったような収穫はありませんでしたが、思いのほかトキの姿を堪能することができたスタートとなりました。

23日、この日は早朝に宿周辺を歩いてみました。塒から飛び立ったと思われるトキが1羽飛び、家屋の屋根ではイソヒヨドリがさえずっていました。雑木林ではシジュウカラ、エナガが見られ、ミサゴが上空を飛んでいました。海岸まで行くとカルガモ、ヒドリガモが見られ、美しい夏羽のカンムリカイツブリの姿もありました。ただ、期待していたような渡り途中の小鳥類に出会うことはなく、その後は宿にて朝食をいただいてから出発しました。この日もなかなかすっきりしない空模様でしたが、この日は幸いにも枯れ木に止まっているトキを観察する幸運があり、なかなか見る機会がない貴重なシーンを思いのほかじっくり見ることができました。周辺では数羽のトキが飛び、美しいトキ色も堪能することができました。その後はトイレ休憩がてらさまざまなトキグッズを購入する時間をとり、その後は再び水田をめぐると、今度は2羽のつがいと思われるトキが枝渡しと呼ばれる行動をしている場面に遭遇。落ちている木の枝をじゃれ合うかのように渡す貴重なシーンを見ることができ、その後は一旦昼食の時間としました。昼食のメニューに関しても現地ガイドさんのオススメをあらかじめお聞きし、この日はお寿司をいただきました。食事中、お店のご主人がわざわざ来てくださりネタの解説をしてくださり、最後は見送りまでしてくださいました。こんな時、ふと旅っていいなと思うものです。そして午後からは一旦、トキのことは忘れて佐渡島各所をめぐりました。この時間はすっかり快晴になり、真っ青な海がまぶしく見えました。宿周辺には小鳥らしき小鳥はいませんでしたが北に進むにつれてアオジやツグミが飛び交い、灯台周辺ではメジロの群れが移動していきました。その後は大野亀、跳坂を走り、岩谷口洞窟では「山から響く波の音」を体験させていただきました。そして最後は佐渡金山跡地、北沢浮遊選鉱場跡も訪れ、圧倒されるような景観を見ることができました。その後は相川を通って海が一望できる場所へ。ここでは海上に群れている夏羽のユリカモメ、ハシビロガモ、スズガモのほか、かなり距離はあったものの夏羽のオオハム、シロエリオオハム、アカエリカイツブリも見られ、砂浜ではコチドリ、セグロセキレイも見られました。そして少々時間があったことから最後に再び水田をめぐり、たまたま出会った4羽のトキが夕景の中を飛ぶ姿を見てこの日を終えました。

24日、この日は朝から快晴の中、早朝にバスを利用して昨日、木に止まっているトキが見られた場所に行ってみることにしました。この道は比較的山寄りの道です。途中、何度かトキの姿があり飛翔する姿を観察することができました。たださすがにこの日は木の周辺にトキの姿はなく、これといった成果のないまま宿に戻って朝食をいただき、朝食後は残り3時間ほどの探鳥に出かけました。この時間も主に水田で餌を探すトキを観察しました。中には警戒心が薄い個体もいてバスを止めて待っていると少しずつ寄ってくる個体もいて繁殖期特有の灰黒色と朱鷺色の美しいコントラストを見ることができ、特に羽ばたいたり、わずかにジャンプしたりした時はその美しい朱鷺色を見ることができました。そして最後はトキのテラスに立ち寄って展望台から広大な田畑の景観を眺めながら、現在のトキの様子やトキの一年間の生活を見られるパネルなどを見てから両津港近くにある食堂で昼食をいただき、その後は今回お世話になった現地ガイドさんからご挨拶をいただき両津港に向かいました。

私の中で長年の懸案だった佐渡島へのツアー。ツアーを作る立場で考えるとどうしてもツアー造成したい場所でしたが、結果的にはなかなか前に進むことがなく時間が過ぎてしまいました。やはりツアーを催行させるには現地のルールに精通した方の同行が不可欠と考える中、今回は現地在住で宿を経営されている伊藤善行さんと知り合うことができ、またツアーにご協力いただけるとのことでようやくツアー企画に至りました。結果的には渡りの小鳥たちはやや残念な印象ではありましたが、この時期特有の灰黒色と朱鷺色のコントラストが美しいトキの姿を堪能することができ、木に止まる姿、飛翔する姿、水田で餌を探す姿、そして枝渡しする貴重なシーンも見ることができ、思っていた以上の成果を得ることができました。この度はご参加いただきましてありがとございました。また現地でさまざまお世話になった現地ガイドさんにも重ねて感謝申し上げます。

石田光史

トキ 撮影:坂東俊輝様

 

トキ 撮影:鈴木真様

 

トキ 撮影:渡邉哲文様

 

トキ 撮影:坂東俊輝様

 

トキ 撮影:鈴木真様

 

トキ 撮影:渡邉哲文様

 

ノスリ 撮影:坂東俊輝様

 

コチドリ 撮影:鈴木真様

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