【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森(追加設定)2023年6月2日~3日

(写真:チゴモズ 撮影:杉崎明登様)

梅雨入り間近の時期ですが5月末のこの時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すと長年にわたってこういった風景が全く変わらない点は驚きで、それだけに現地の環境にも配慮し、小型バスを使ったかなり小さなツアーにしています。タイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するピンク色のタニウツギや紫色の桐の花も見事な時期です。今年は季節外れの台風の発生で天気予報を気にしながら過ごしていましたが、たまたま台風が進路を変え、本州に向かってくるタイミングになってしまいました。

2日、この日の東京都内は昨夜から降り出した雨が降り続いていて台風接近を印象付けていました。進路の関係から我々が向かう新潟県はこれからが雨のピークで関東地方は明日がピークとのことでした。ただご集合は順調に進み、予定よりも15分ほど早く東京駅前を出発することができました。出発後は関越自動車道を走り、午前中はほぼ移動のため車内では今回のツアーで見られる可能性が高い種について解説しながら進み、途中、サービスエリアに立ち寄り、さらに進みもう一カ所のサービスエリアで休憩をして、さらにここからは雨が激しくなる中、二つの峠を越えて現地に向かいました。到着時にはちょうどお昼頃だったことから一旦、昼食の時間とし、合わせて観察機材の準備もしていただきました。昼食中にはさらに雨が強まりましたがたまたまアカショウビンの声が聞こえたため、昼食後は林内を歩いてみました。雨音にも負けないくらいの大音量でキビタキがさえずり、シジュウカラの姿もありましたがアカショウビンの声は途切れてしまったことから観察を終了することにしました。その後は雨が激しくチゴモズのような小鳥類観察は無理だろうと諦めて、ブッポウソウのポイントに行くことにしました。ブッポウソウはそれなりの大きさもあるのである程度行動していることが予想できます。まずは翌日には立ち寄れないだろうとのことから物産館で休憩、そしてお買い物をしていただき、それからポイントに向かいました。幸いにもこの頃には雨が弱まっていて数羽のブッポウソウが予想通りに飛び回っていました。しばらく観察していると3羽のブッポウソウの姿があり、時折飛び立ってくれましたが光線状態が悪く、独特のグラデーションを見ることはできませんでした。周辺ではサシバが見られ、ブナの木には飛んできたサンショウクイが止まりました。またブナ林からはアカショウビンの声が聞こえていましたが姿を見るには至りませんでした。しばらくブッポウソウを観察した後は宿に向かい18:00から夕食をいただき終了となる予定でしたが、たまたま雨が止んでいたことから、急遽19:00からナイトウォッチングを行うことにしました。ただ19:00前に外に出るとここで雨が一気に激しくなってしまったことから残念ながら過去のヨタカの状況をご説明してこの日の探鳥を終えました。

3日、前日の天気が芳しくなかったことから、この日はヨタカに期待して日の出に合わせて04:30からまずは宿周辺での探鳥を行いました。幸いにも雨は降っておらず空は明るくなってきていました。薄暗いうちからアカショウビンやホトトギス、ノジコの声は聞こえていましたが、残念ながらヨタカの気配はなく、その後に再出発しました。この日も数羽のブッポウソウが飛び回っていたため観察していると付近からアカショウビンのさえずりが聞こえてきました。比較的遊歩道に近い場所から聞こえていたことから、急いで声がするほうに行ってみました。するとさえずりはかなり近いブナ林の中から聞こえていて、探してみると高いブナの横枝に止まって鳴いていました。そのため望遠鏡で捉えて観察していただきましたが、この時はわずかな時間で飛んでしまい、じっくりと観察することができませんでした。ただその後も周辺からはアカショウビンのさえずりが聞こえていたことからしばらく観察していると、さらに高いブナの枝に止まって鳴きだし、この時はその真っ赤な姿を比較的ゆっくりと見ることができました。その後は一旦宿に戻って朝食をいただき、この日は前日に全く見る機会すらなかったチゴモズを集中的に探すことにしました。途中、休憩を挟んでから前回チゴモズの姿が見られた場所に行ってみました。一度では見られないことが多いため、午後も来ることを想定して早めに来てみましたが予想通りなかなかその姿を見ることはできませんでした。ただ1時間ほど経った頃、かなり距離はあったものの杉の木の上に止まるつがいと思われる2羽が見つかり、しばらく観察しているとオスは求愛行動と思われる行動をとっていました。その後も頻繁に姿を見ることができたものの距離が遠く、はるか遠くの杉の木を見るような状況でした。ただそろそろ昼食の時間かと思われた頃、オスが間近に現れて餌を捕る行動をとりはじめました。しばらく観察していましたが木から木へと飛び移っては、時々地面に降りて昆虫を捕食していてようやく良い距離感で観察することができました。観察後は一旦現場を離れて昼食の時間にしようかと思いましたが走り出したバスの前にヤマドリのメスがノコノコ歩いて現れました。さすがにバスを降りることはできませんでしたが、車内から間近にその姿を見ることができました。昼食の後は主にノジコを探して別のポイントを歩いてみました。まずは元気なオオヨシキリが歌い、どこから飛んできたのかイカルが間近にその姿を見せてくれました。また電線ではノジコがさえずり、わずかな時間ながらニュウナイスズメのメスも見られました。さらに歩くとクロツグミ、サンコウチョウのさえずりが響き、我々をかすめるようにクロツグミのオスが飛んで行きました。ここでも再びレモンイエローが美しいノジコが電線で延々さえずり、続けてキセキレイもやってきたことから黄色い鳥が2種類揃って観察できました。さらには口に昆虫を咥えたノジコがじっと止まっていて、その後は草むらに飛び込んだことからおそらくは繁殖しているようでした。そして探鳥を終える頃には昨日の大雨がウソのような青空が広がっていました。

今回は台風接近のタイミングに合ってしまい、残念ながら初日は十分な探鳥ができず、そのため2日目の探鳥開始を早め、さらには帰着時間を遅らせるといったことまで考えましたが、結果的には予定していた時間に東京駅に戻ることができました。ブッポウソウは悪天候の影響から緑、紺、黒、赤の独特のグラデーションを見ることができず残念でしたが、美しい飛翔形を見ることができ、チゴモズに関しては今回、つがいと思われる2羽が見られ、オスの求愛行動が見られました。また幸いにもアカショウビン、ヤマドリを見ることができ、当地を代表するノジコもレモンイエローの美しい姿とさえずりを堪能することができました。ほかにもサシバ、イカル、サンショウクイ、クロツグミなどが見られ、声だけでしたがサンコウチョウも確認できました。今後も当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが保たれるようご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

チゴモズ nanazo様

 

ノジコ 撮影:杉崎明登様

 

チゴモズ 撮影:nanazo様

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