【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2025年6月26日~29日
この時期、本州は梅雨の時期を迎え、また多くの野鳥たちが繁殖期を終えて静かになってしまうため探鳥は不向きになります。一方でちょうどバードウォッチングの最盛期を迎えるのが北海道です。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。今年は本州はすでに梅雨入りしているものの雨は少なく、真夏のような陽気の暑い日が続いていて、一時的に激しい雨が降るなど、不安定な天気の日もありました。一方、道内はしばらくは安定した晴れの天候が続くとの予報が出ていました。
26日、この日は朝から不安定な天気で晴れ間があったかと思うと、真っ黒い雲が出てきて小雨が落ちるといった感じで、蒸し暑さは早朝から続いていて不快な暑さといった感じでした。平日にもかかわらずかなり混雑している羽田空港に予定通りご集合いただいた後は、資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に進み稚内空港に向かいました。稚内といえばだいたいどんよりしていて、過去には濃霧や霧雨といった天候で肌寒いことが多いのですが、この日はやや風があったものの暖かく、稚内ではなかなか見られない青空が広がっていました。この日はまず原生花園に向い、途中にある池では繁殖中と思われる夏羽に換羽した2羽のアカエリカイツブリが見られ、ほかにも数つがいのヨシガモが見られました。バスを降りると忙しそうにコヨシキリがさえずっていました。木道を歩くと間近にノゴマの姿があり、付近にヒナがいるのか、餌をくわえたオスが忙しそうに動き回っていました。その後はやや場所を変えましたが、コヨシキリが見られたくらいだったことから移動しました。バスを降りるとヒバリがさえずり、アマツバメが飛び回っていました。木道に入るとここでもコヨシキリがさえずり、巣立ったヒナに餌を運ぶノビタキのつがいが見られました。また周辺ではホオアカもさえずり、どこからともなくチュウヒが飛んできて飛び回っていました。観察しているとオオジシギの声が聞こえたため探してみると、草原に降りている姿を見ることができ、大きな口を開けて盛んに鳴いていました。さらに歩くとツメナガセキレイが見られ、バスに戻る間際には上空を鳴きながら飛ぶ、オオジシギが見られました。その後は少々、時間があったことからもう一カ所行ってみることにし、ここでは飛び回っては低木に止まるツメナガセキレイのほか、ノビタキ、オオジュリン、コヨシキリ、そして道北ではあまり見られないシマセンニュウが盛んにさえずっていたことから、じっくりとその姿を見ることができました。この日は道北とは思えないような暖かな中での探鳥とまりました。
27日、この日は早朝探鳥のために早朝に外を見ていましたが、天気予報よりも天候が悪い感じでかなりどんよりとしていました。さすがに早朝は肌寒く感じる中での出発となりました。全体にややもやがかっていて霧雨が降ってくる中での探鳥となりましたが、相変わらずツメナガセキレイは元気に飛び回ってはエゾカンゾウの花に止まり、遠くからはマキノセンニュウのさえずりが聞こえていました。またこの日はオオジュリンを観察していると付近にはヒナの姿があり、じっくりと観察することができました。またコヨシキリ、シマセンニュウもさえずっていて、その姿を楽しむことができました。探鳥後は一旦ホテルに戻って朝食をいただき、再度出発しました。この時間は曇り空ながら時折日差しがあり、天候はやや回復したようで次第に蒸し暑くなってきていました。この時間もまずは同じ場所に向かい、再びエゾカンゾウに止まるツメナガセキレイをはじめ、この時間はホオアカもエゾカンゾウに止まってくれ、ほかにもノビタキ、シマセンニュウなども見てから木道を歩いてみました。この時間はすっかり暑くなってきていてもう上着がいらないような状況でした。この時間の主役はオオジシギで2羽で盛んに鳴きながらディスプレイフライトを見せてくれ、急上昇、急降下、そして独特の羽音を堪能することができました。また枯れ木にはつがいと思われる2羽のアリスイが止まり、同時にベニマシコの姿もありました。その後は天売島に行くフェリーに乗るために羽幌港に向かいました。この時間になると再び空はどんよりとした曇り空に変わり、車窓からはチュウヒの姿が見られました。羽幌港到着後は海の幸満載の昼食をいただき、予定通り出航して天売島を目指しました。この航路からもウトウやケイマフリが数多く見られ、今回は出航直後に着水しているウトウが複数見られたほか、飛翔しているハシボソミズナギドリが見られ、1時間ほどして焼尻島に接近したころからは次第にケイマフリが目立ち始め、港の中に入っているウトウを見ることもできました。そしてほとんど揺れることなく天売島到着後は徒歩にて探鳥しました。早速、フェリーターミナル付近でも複数のノゴマのさえずりが聞こえ、その後も飛び交うアマツバメの群れを見ながら歩いていくと、かなりの数のノゴマのさえずりが聞こえ、ようやく枯れ枝に止まってさえずるノゴマをじっくり見ることができたほか、鳴きながら電柱に止まったツツドリも見ることができました。さらに歩くとコムクドリの声が聞こえ、周囲で営巣でもしているのか、オス、メスともに枯れ木に止まった姿をじっくりと観察することができました。そして宿に戻った後は少々早めの夕食をいただき、夕食後には天売島のメインともいえるウトウの帰巣風景を観察しに赤岩展望台に向かいました。なかなか晴れてくれない天売島ですが、この時間は雲が次第に取れ、美しい夕陽を見ることができました。夕陽を眺めていると眼下の水面には数えきれないほどのウトウが着水していて、空に目を移すとウトウの姿が双眼鏡に飛び込んでくるようになり、気が付くととんでもない数のウトウたちが飛んできていました。前日までは濃霧の影響で灯台も見えないほどだったそうですが、この日は見事に条件が揃い、見事な帰巣風景を堪能することができました。
28日、この日はボートクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況や天気をチェックしましたが、事前の予報通り天気も良く、海は凪いでいました。幸いにも05:10には出航が決まり、今回は定員の関係から2回に分かれて乗船していただきました。天売島としては珍しい青空の下、海況も過去に記憶がないほどにべた凪で青空が映った海は青く見えました。ウトウの群れはほぼ全行程で見られ、この日は海況が穏やかだったこともあり、赤岩の直下まで行くことができました。ここではウミガラスが繁殖している崖下から観察し、デコイが並ぶ岩棚にはかなりの数のウミガラスがいることがわかりました。観察中にはこの岩棚から飛び出してくる個体も見られ、群れで飛翔する様子は圧巻でした。またケイマフリが繁殖している入江では間近にその姿を見ることができ、岩礁に止まったり、飛翔したりとかなり動きがあり、何より「ピピピピ・・・」という声の多さには驚かされました。ほかにもオオセグロカモメ、ウミネコ、繁殖中のヒメウも見られ、飛び回るアマツバメも印象的でした。ボートクルーズ終了後は天売港フェリーターミナルに10:00にご集合いただき、たまたまウニの水揚げ作業を見学してから10:25発のフェリーに乗船し、穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウ、ウミウなどを眺めながら進みました。羽幌港到着後はこのツアーで最も長い移動となり、まずは昼食の時間とし、その後は高速道路を走って美瑛町からは見事な青空を背景に十勝岳が見えてきました。そして宿泊地到着後は一旦お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。晴天ということもあって当地とは思えないほどの暑さの中での探鳥となり、早速、林の中からはキビタキのさえずりが聞こえていました。ただ意外にも小鳥類のさえずりは少なく、ひとまずアオバトを見にいってみました。この時間はまだまだ動きは少なかったですが、針葉樹にはアオバトが群れで止まっていて緑と紫の姿が見事でした。その後は一旦、遊歩道を歩いて探鳥し、針葉樹ではアカゲラの声が聞こえ、見てみるとまずはニュウナイスズメの姿があり、その後はヒナを連れたヒガラ、そしてハシブトガラ、シロハラゴジュウカラと続々と登場し、ハシボソガラスの巣立ったばかりの幼鳥の姿もありました。また観察中には上空高くハチクマが飛んでいました。そして時間が過ぎたことから最後は再びアオバトを観察し、塒に向かうのか、次々に飛んできては我々の頭上を越えていく圧巻の風景を観察してこの日の探鳥を終えました。終始、青空に映える十勝岳や美瑛岳が美しく見えていました。
29日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。とにかく天気が重要なのですが、この日は早朝から快晴で何一つ心配がない状況でした。探鳥ポイントに向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイは夏シーズンになると始発が08:00から06:30に変わります。我々のツアーでは気温が上がり陽炎が立ってくるとギンザンマシコがクリアに見られなくなること、また観光客が増える前に現地に行きたいといったことから始発が06:30に変わるタイミングに合わせてツアー企画することにしています。到着した山麓駅は雲一つない快晴で、いつもの涼しさはなく、すでに気温が上がってきているような気がしました。暑くなってきていました。予定通り06:30のロープウェイに乗って姿見駅を目指すと遠くの山々まではっきり見え、いつも濃霧に悩まされることがウソのようでした。姿見駅に到着後はキバナシャクナゲやエゾノツガザクラなどの花々を見ながら歩き第三展望台に向かいました。もうすでに20年近く当地に来ていますが、とにかく年々残雪が減り、過去、雪が積もっていた遊歩道はほとんど積雪がなく驚かされました。到着してわずかな時間でまずはギンザンマシコのメスが2羽で現れ、続けざまに真っ赤なオスがハイマツに止まってくれました。観察していると驚いたことに我々のわずか1mほどのところにつがいが飛んできて止まりました。その近さにはかなり驚きましたが、過去にもこういったケースがあり警戒心の薄いギンザンマシコらしさをこの日も見ることになりました。その後は一旦、姿が消えてしまいましたが、ノゴマ、カヤクグリが頻繁に現れ、ビンズイがさえずり飛翔するなど楽しませてくれました。そして09:30を過ぎたころからは、ギンザンマシコが頻繁に姿を見せてくれハイマツの実をついばむ姿を見せてくれました。そして気が付くと汗ばむくらいの陽気になっていて11:45のロープウェイで山麓駅に向かい、その後は買い物の時間をとるなどしてから旭川空港に向いました。
本州の梅雨を避けて北海道に来るという感覚でツアー企画していますが、今回はこれが見事に当たりお天気に助けられた4日間でした。道北の原生花園ではシマアオジには出会えませんでしたが、ツメナガセキレイ、シマセンニュウ、ノゴマ、オオジュリン、ホオアカ、コヨシキリ、ノビタキ、アカエリカイツブリ、アリスイなどが見られ、オオジシギのディスプレイフライトも見事でした。天売島でも天候に恵まれ、美しい夕景の中で押し寄せるかのように群れ飛ぶウトウの帰巣風景はまさに圧巻で、さらにはこれ以上ないといえるほどの海況でボートクルーズを楽しむことができ、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ヒメウなどをたっぷりと観察できました。そしてこのツアーの目玉でもあるギンザンマシコも汗ばむような陽気の中で、真っ赤なオス、若草色のメスを堪能することができ、白金の森で見たアオバトの群れも見事でした。北海道は魅力的な場所で季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。現地でお世話になった方々にもあらためて感謝申し上げます。
石田光史