【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2025年7月3日~6日

(写真:ケイマフリ 撮影:斎藤恭様)
この時期、本州は梅雨の時期を迎え、また多くの野鳥たちが繁殖期を終えて静かになってしまうため探鳥は不向きになります。一方でちょうどバードウォッチングの最盛期を迎えるのが北海道です。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎の影響を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。今年は本州はすでに梅雨入りしているものの雨は少なく、真夏のような陽気の暑い日が続いていて、一時的に激しい雨が降るなど、不安定な天気の日もありました。一方、道内はこの4日間は曇りベースながらも雨の予報は出ていませんでした。
3日、この日の東京都内は早朝からほぼ快晴で気温がぐんぐん上がってきていました。羽田空港に予定通りご集合いただいた後は、資料の配布、そしてこの日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に進みましたが、この時点では稚内便には天候調査が出ていました。ただ結果的には条件付きながら15分遅れで出発することができ、少々遅れながらも無事に稚内空港に到着しました。到着後は空港内にて観察機材の準備をしてからバスに向かいましたが、この日は曇り空の中、かなり強い風が吹いていました。この日はまず池をのぞいてみると、つがいと思われるヨシガモの姿がありました。その後はバスを降りるとノビタキの姿があり、付近では忙しそうにコヨシキリがさえずっていました。木道を歩くと風が強く吹きていましたが、どこからともなくツメナガセキレイの声が聞こえ、周囲を見てみると低木に止まる、真っ黄色のツメナガセキレイの姿がありました。また付近からはノビタキのヒナの声が聞こえ、看板に止まっている1羽のヒナが見られました。しばらく観察していると1羽、また1羽とノビタキのヒナの数が増え、同じ枯れ木に3羽、4羽と止まっている姿も見ることができました。やや場所を変えると再びツメナガセキレイが見られ、ここでもノビタキのオス、メスとともに複数のヒナが見られ、上空をアオバトが飛んでいきました。また木道を出るあたりでは低く飛んでいくハイタカ、そして草原を飛ぶチュウヒの姿も見られました。その後は原生花園に向かいました。この頃には空には青空も見えていましたが、風はより強く吹いているように感じました。木道を歩くと枯れ木でホオアカがさえずり、別の個体は木道近くの低木でさえずっていて、まずは2個体のホオアカが見られました。その後は木道を一周歩くも、見られたのはノビタキとホオアカのみだったことから、最後にもう一カ所行ってみました。ただこの時間になっても相変わらず強風は収まっておらず、ここでも鳥の声は少なく感じました。それでも低木にはツメナガセキレイが止まっていて、草原内ではノビタキがさえずり飛翔をしていました。また風に乗るように遠くからオオジュリンのさえずりが聞こえ、枯草に止まってさえずっている姿を見ることができました。ただ結果的には強風は収まることがない1日になってしまいました。
4日、この日は早朝探鳥のために早朝に外を見てみましたが残念ながら強風は収まっておらず、空はどんよりとしていました。ひとまず予定通り出発して原生花園に向かいました。到着すると草地で餌を食べているエゾユキウサギの姿があり、少々距離をとってバスを降りて観察しました。その後は木道を歩こうとは思ったのですが、なにしろ風が強くてどうにもならないため、風が避けられる場所で、揺れる低木に止まって必死にさえずっているコヨシキリを見るにとどめ、一旦、宿に戻って朝食をとることにしました。ただ、朝食中には羽幌沿海フェリーから連絡があり、今日の羽幌港→天売島は3便が欠航を決めていて、我々が乗船する予定のフェリーに関しては13:00に判断するとのことでした。朝食後はまだまだ強風が吹き荒れていたことから原生花園での観察はあきらめて付近の林に行ってみました。まずは屋根に止まっているハクセキレイのヒナが見られ、林の中からアカゲラの声がしたことから探してみると、巣立ったばかりの幼鳥が2羽で木の幹を登っていました。しばらく見ていると驚いたことに付近にはヤマゲラのオスの姿があり、珍しくじっと止まって羽繕いをしていました。また電柱で子育て中のニュウナイスズメが出入りを繰り返していて、シロハラゴジュウカラ、アオバトも見ることができました。その後は短時間ながら原生花園に向かい、風を避けてコヨシキリ、ニュウナイスズメを観察し、最後に風に流されるように飛ぶ、ハリオアマツバメを観察してから予定通り羽幌港に向きました。まずは霧に包まれる状況でしたが、進むにつれて視界ははっきりしてきて、海を眺めると波はかなり落ち着いてきているように感じました。そうこうしているうちに羽幌沿海フェリーから連絡があり、我々が乗船する予定の便は通常運行とのことで、なんとか天売島に渡れることになりました。羽幌港到着後は海の幸満載の昼食をいただき、予定通り14:00に出航して天売島を目指しました。この航路からもウトウやケイマフリが数多く見らましたが、まだまだうねりが残っていて、船が大きく揺れるシーンが何回もありました。そして15:35に天売島到着後は一部に青空が見えてくる中、徒歩にて探鳥しました。早速、フェリーターミナル付近でさえずっているノゴマを見ることができ、その後はさらに歩いていくと、今度は電線でさえずっているノゴマ、さらにはコムクドリも見ることができました。さらに歩くと飛んできたノスリが電柱に止まり、帰り間際にはアリスイをたっぷり見ることもできました。宿に戻った後は少々早めの夕食をいただき、夜には天売島のメインともいえるウトウの帰巣風景を観察しに赤岩展望台に向かいました。ただこの時間になると一気に霧が立ち込めてきて、展望台付近は強風が吹いていました。それでもウトウたちは次々に飛んできては巣に戻り、霧の中から続々と現れるウトウの姿はそれはそれで雰囲気があるものでした。そしてこの日は巣立ったばかりのウトウのヒナが突然現れ、我々の足元を走り回ってイタドリの中に消えていきました。
5日、この日はボートクルーズの予定だったためかなり早めに起きて海況や天気をチェックしました。昨夜の霧、そして強風を思うとさすがに厳しいかと思いましたが、幸いにもこの日は事前の予報通り天気も良く、霧も晴れて海は凪いでいました。そのため05:10には出航が決まり、今回は定員の関係から2回に分かれて乗船していただきました。天売島としては珍しい青空の下、一時的にうねりはあったものの海況は良く、ウトウの群れはほぼ全行程で見られ、この日は海況が穏やかだったこともあり、赤岩の直下まで行くことができました。ここではウミガラスが繁殖している崖下から観察し、デコイが並ぶ岩棚にはかなりの数のウミガラスがいることがわかりました。観察中にはこの岩棚から飛び出してくる個体、さらには飛び込んでいく個体も見られました。またケイマフリが繁殖している入江では間近にその姿を見ることができ、今回は特に岩礁に止まっている個体が多かったことから、真っ赤な足を見ることができました。ほかにもオオセグロカモメ、ウミネコ、繁殖中のヒメウも見られ、飛び回るアマツバメも印象的でした。ボートクルーズ終了後は天売港フェリーターミナルに10:00にご集合いただき、10:25発のフェリーに乗船し、穏やかな海でウトウ、ケイマフリ、ヒメウ、ウミウなどを眺めながら進みました。羽幌港到着後はこのツアーで最も長い移動となり、まずは道の駅で昼食の時間とし、その後は高速道路を走って途中、美瑛町からは見事な青空を背景に十勝岳が見えてきました。到着直前には観光地として知られる青い池の渋滞があったものの、ほぼ予定通り白金温泉到着後は一旦お部屋に入っていただいてから再度ご集合いただき周辺を探鳥しました。すでに17:00だというのに当地とは思えないほどの暑さの中での探鳥となり、さすがに暑さのせいか鳥の声はほとんどありませんでした。ただ森の中からはキビタキのさえずりが聞こえ、昆虫を咥えたオスが目の前に飛んできて、しばらくその姿を楽しませてくれました。道を戻ると川沿いからオオルリのさえずりが聞こえたものの姿は見えず、その後は続々と塒に帰っていくアオバトを見に行きました。この時間はまだまだ動きは少なかったですが、広葉樹には美しい緑色のアオバトが止まっていて、しばらくすると次々に飛び立っては我々の頭上を越えていきました。そして周囲が薄暗くなってきた18:40にこの日の探鳥を終えました。前週に引き続き、青空に映える十勝岳や美瑛岳が美しく見えていました。
6日、この日はこのツアーの大きな目的の一つであるギンザンマシコを探しに行くため早朝にホテルを出発しました。とにかく天気が重要なのですが、この日は早朝から青空が見えていて一安心といった感じでした。探鳥ポイントに向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイは夏シーズンになると始発が08:00から06:30に変わります。我々のツアーでは気温が上がり陽炎が立ってくるとギンザンマシコがクリアに見られなくなること、また観光客が増える前に現地に行きたいといったことから始発が06:30に変わるタイミングに合わせてツアー企画することにしています。到着直前にははっきりと姿見駅が見えていたことから安心していましたが、その後はみるみる霧が濃くなってきてしまい、始発のロープウェイに乗った頃にはすっかり視界がなくなってしまいました。ただ、到着した姿見駅では思ったほど視界が悪くなかったこと、また空が晴れてきたことから観察ポイントを目指して歩きだしました。この日も遊歩道には全く積雪はなく、少ないながらもキバナシャクナゲやエゾノツガザクラなどの花々を見ることができ、チングルマに関しては大きな群落が見られました。到着後は各自、準備を進めてギンザンマシコの登場を待ちましたが、この頃には見事に視界が開けてきて、条件はどんどん良くなってきていました。周囲からはルリビタキやノゴマ、カヤクグリ、ウグイスなどの声が響き、この日もまずハイマツの上に真っ赤なオスがやってきてしばらくさえずってくれたことから、意外にもじっくりとその姿を見ることができました。そしてこの日はかなり近い距離にあるハイマツのオスが数回止まり、驚かされるシーンがありました。08:30頃を過ぎると一旦、ギンザンマシコは姿を消してしまいましたが、ハイマツに止まってさえずっているウグイスが見られたり、ウソが飛び回ったりとにぎやかで、普段あまり見かけないノビタキ、サメビタキ、そしてキクイタダキの姿も見られ、小鳥類を狙っているのか、ハイタカの姿もありました。そして10:00頃からは再びギンザンマシコの姿が見られるようになり、ハイマツの実を食べている姿や、ひょっこり目に前に現れたりと美しい姿をたっぷりと見せてくれました。この日も気温はだいぶ高いようでしたが、風があったことから、それほど厳しい暑さを感じることなく探鳥することができました。そして11:45のロープウェイで山麓駅に向かい、その後は買い物の時間をとるなどしてから旭川空港に向いました。
今回は4日間を通して傘の出番がなかったことは幸いでしたが、全体的に気温が高く蒸し暑い中での探鳥が続きました。また初日の天候調査に始まり、その後は強風、高波と心配が絶えないツアーになりご苦労をおかけしました。結果的にはサロベツが強風の影響で十分に探鳥ができず、オオジシギやマキノセンニュウを見ることができませんでした。ただ急遽変更して訪れた林ではヤマゲラ、アカゲラ、ニュウナイスズメ、シロハラゴジュウカラなどが見られました。天売島は海況悪化のため心配が尽きませんでしたが、なんとか島に渡ることができ、濃霧の中ではありましたがウトウの帰巣風景を見ることができ、ノゴマ、アリスイ、コムクドリにも出会えました。また翌朝のボートクルーズは一気に海況が良くなり、ウミガラス、ケイマフリ、ウトウ、ヒメウなどをたっぷりと観察でき、最後は見事な風景の中でギンザンマシコの真っ赤なオス、若草色のメスを堪能することができました。また、白金の森で見たアオバトの群れも見事でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。現地でお世話になった方々にもあらためて感謝申し上げます。
石田光史