【ツアー報告】シャチとヒグマが棲む世界遺産知床・トリプルクルーズ 2023年6月17日~19日

(写真:シャチ 撮影:石田光史)

平成17年7月に世界自然遺産に登録された知床。ここには魅力的な生き物たちが数多く生息しています。今回はカムイと称されるさまざまな生き物たちにスポットを当て、特にシャチとヒグマを観察するためのクルーズに計3回乗船する行程を軸に、タンチョウやシマフクロウ、オジロワシ、ギンザンマシコといった鳥類、エゾシカやキタキツネといった哺乳類も含めて知床に生息するさまざまな生き物たちを観察することを目的としました。またせっかく羅臼町にきていただくことから何かしらおもしろいイベントはないかと調べた結果、やはり羅臼といえば羅臼昆布だろうとのことから夜には1時間ほど時間をとって羅臼漁協、ならびに知床羅臼町観光協会のご協力の元、羅臼昆布のヒレ刈り体験をしていただき、その昆布をそのままお土産としてお持ち帰りいただいています。観光船を主体としたツアーのため、天候や海況が特に気になっていましたが、今回は天気は概ね良いとの予報で安心していましたが、週末にかけて漁師さんがもっとも嫌がると言われている北西風が吹くとのことでやや心配しての出発となりました。

17日、この日の東京都内は最高気温が30℃近くまで上がるとのことで羽田空港周辺は朝から晴れて真夏のような陽射しが照り付けていました。このツアーは初日からいきなり観光船クルーズを行うことから、観光船のスタッフの方とやりとりをしていましたが、この日は海況に関しては非常に良いとの連絡をいただいていました。集合場所の羽田空港では予定通りご集合が完了したことから、資料の配布、今日の連絡事項をお伝えしてから搭乗口に向かいました。やや揺れたこともあってか20分ほど遅れて到着した中標津空港はどんよりとした曇り空。遅れてしまっていたことから急いで準備をしていただき羅臼町に向かいました。羅臼町に向かう途中ではやや霧が出てきていて国後島ははっきりとは見えていませんでした。ただ到着した羅臼港は曇ってはいたものの視界は悪くはなく15:30に乗船して出航しました。聞くところによると前便ではシャチの群れが見られていたとのことでしたがやや国後島側だったとのことで30分ほど走ることになりました。港の堤防にはオジロワシ、オオセグロカモメの姿があり、船が進むにつれて霧が晴れて視界が良くなってきました。15分ほど進むと遠くに真っ黒い二等辺三角形のシャチの大きな背びれが見え、よく見ると周辺には複数のシャチの群れがいるようでした。船が進むといよいよシャチの群れに取り囲まれるような状況になり、間近に浮上するシャチの姿をしばらくの間、観察することができました。また時間とともに天気も良くなってきて国後島を間近に見られるようにもなりました。この日は50頭前後のシャチたちを約2時間にわたって観察することができ、船の周りを飛び回るフルマカモメやハシボソミズナギドリの姿も楽しむことができました。その後は一旦、宿に戻ってシマフクロウ観察の準備をしていただきました。この日の日没は19:00ですが、ほかにも観察している方々がいらっしゃることから19:00よりも少々前に到着して準備を進め、まずは夕食の時間としました。この時期は比較的シマフクロウの出現率が高く、それほど心配はしていなかったのですがなぜかこの日はシマフクロウの気配が全くないまま時間が過ぎていきました。その後はやや霧が出る中での観察となり、ようやく22:30頃から連続した鳴き交わしが聞こえ始めました。これには期待感が高まりましたがシマフクロウの姿はなく、ようやく00:00近くなってから真後ろの木から鳴き交わしが聞こえるようになりました。そのため見てみるとつがいと思われる2羽のシマフクロウが枯れ木に並ぶように止まっている姿を見ることができました。

18日、この日は前日の穏やかさがウソのように予報通り北西風が吹き始めたことから、午前中に乗船予定だったヒグマを観察するクルーズは残念ながら欠航になってしまいました。そのため朝食後に出発してまずは毎年見られているタンチョウの親子を見に行ってみることにしました。空は幸いにも青空が見える中での出発でしたが、南下するに従って曇りから一時的に雨が降るなど、めまぐるしく天気が変わる状況でした。途中、道の駅で休憩後は原生花園に向かい、ひとまずタンチョウの姿を探してみました。すると湿地帯になっている場所で1羽のヒナを連れたタンチョウに出会うことができ、しばらく観察していると遠くにいたもう1羽の親鳥が飛んできてくれ、計3羽の親子のタンチョウの姿を見ることができました。その後は来た道を引き返して羅臼町に向かいましたが少々時間があったことから野付半島に立ち寄ってみました。この日はやや風があったものの駐車場付近ではノビタキ、オオジュリンが飛び回り、シマセンニュウが元気にさえずっていました。また砂浜にはトドのような哺乳類が打ちあがっていてオジロワシ、ハシブトガラスが群れていました。その後は道の駅で時間をとって昼食、そしてお買い物の時間としてから知床峠に向かいました。羅臼町内は穏やかな快晴でしたが峠に向かう途中からは霧が立ち込めてきて、その後は風も強まって雨も降ってきてしまいました。そのため一旦、知床峠はスルーして知床五湖に向かうことにしました。ただここでも雨が強く、残念ながら知床峠まで戻ってみました。ただ知床峠も状況が変わらなかったことから羅臼町まで戻って、その後はヒグマクルーズに乗船する相泊港まで行き、その後はルサフィールドハウスに立ち寄ってから宿に戻りました。そして18:00からはこのツアーで毎回大好評を得ている「羅臼昆布のヒレ刈り体験」を行い、実際に昆布漁をされている漁師さんから羅臼昆布の知識を得る講座を実施していただき、最後は全員で実際に昆布のヒレ刈りを体験して、それをそのままお土産として持ち帰っていただきました。その後は19:00から夕食をいただき終了となるところでしたが、昨夜にシマフクロウが見られなかったことから再度シマフクロウ観察を行いました。翌朝が早いためこの日は終了時間を決めて出発しましたが、この日は前日よりもさらにシマフクロウの気配はなく残念ながら出会うことはできませんでした。

19日、この日は午前中にシャチ観察クルーズ乗船予定でしたが、海況不良が回復しないことから早くも欠航が決まってしまっていました。ただ早朝は予定通りに出発して知床峠に向かいました。外に出るとちょうど雨上がりといった感じで水たまりはあったものの空は青空が見えていました。ただ峠に向かうと風が強まってきて雨も降り始め、しかも霧で視界不良といった状況だったことから引き返してオジロワシを見に行ってみました。晴れ間が出てはいたものの、ここでも残念ながらなぜか雨に待ってしまう中で観察してみましたがオジロワシの姿はなく、一旦戻って朝食をいただきました。朝食後に再びオジロワシを見に行くとなぜかここでもまた雨の中となってしまいましたが周辺からはエゾセンニュウ、センダイムシクイ、コマドリ、ツツドリのさえずりが聞こえ木に止まっているオジロワシの姿がありました。そしてオジロワシを見ていると数羽のミヤマカケスが盛んにオジロワシに対してモビングをしていました。観察後は野付半島に向かい遊歩道で探鳥をしてみました。途中ではかなりの数のエゾシカの群れに出会うことができ、バスを降りると周辺からはシマセンニュウのさえずりが聞こえていました。少々歩くとノビタキのヒナの姿があり、周辺では親鳥が飛び回ってはヒナに餌を与えていました。また巣があるのかオオジュリンのつがいがハマナスに止まり、最後はけたたましく鳴きながらカッコウが現れて枯れ木や電線に止まってくれ、飛んで行くオオジシギを見て探鳥を終え空港に向かいました。

毎年恒例になっている初夏の知床羅臼ですが今回は海況不良と天候不良が重なってしまい思ったような成果がなく残念でした。私がこのツアーで皆様に見ていただきたかったシャチに関しては過去最大といってもよい成果があり大満足でしたが、ヒグマクルーズの欠航、さらにはシマフクロウに出会うことができず、また行く先々で天候が荒れてしまい知床峠や知床五湖では探鳥することができませんでした。ただ、羅臼から野付半島ではシマセンニュウやノビタキ、カッコウ、オオジシギ、オジロワシ、エゾシカ、キタキツネなどが見られ、タンチョウの親子も印象的でした。また羅臼昆布のヒレ刈り体験も毎回大盛り上がりで幸いでした。知床羅臼は生き物好きにとってはとにかく素晴らしいところです。海生哺乳類の季節が終わると、あっという間に流氷の季節になります。またぜひ季節を変えて知床羅臼にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またご一緒できましたら幸いです。

石田光史

ハシボソミズナギドリ 撮影:石田光史

 

フルマカモメ 撮影:石田光史

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