【ツアー報告】フォトツアー落石クルーズで夏羽のエトピリカに会いたい!2025年6月21日~23日
鳥の観察会の道東ツアーでは必ずといってよいほど乗船してきた落石クルーズ。このクルーズの素晴らしさは見られる海鳥の顔ぶれを見ていただければ一目瞭然で、さらに普段撮影可能な距離感で見られることがほとんどないウミスズメ類を間近に見られることです。ただ実はもっとすごいことがあるのです。それは実際に毎日毎日忙しく漁をされている漁師さんが海鳥たちに興味を持って運行されていて、さらには海鳥の識別をもほぼ完璧にマスターされているということです。ただ小型の漁船を使ったクルーズのため当然のことながら欠航のリスクは常について回ります。今回も出発前日から風が強く波も高い状況が続き、ひとまず2日目の乗船予定を午前中から夕方にあらかじめ変更してからの出発となりました。
21日、ここ数日は梅雨と思えない晴天が続き、気温も最高気温が30℃を超えることが当たり前のようになっています。この日の東京都内もやや雲が多いながらも朝からどんどん気温が上がってきていました。昼前に羽田空港にご集合いただいた後は資料配布、今期の落石クルーズの状況などをお伝えしてから搭乗口に進みました。ただこの日はそもそも中標津空港便に天候調査が出ていて、その後、解除になったものの、今度は機材の準備に時間がかかっているということで結果的には1時間ほど遅れて出発し、15:00頃にようやく中標津空港に到着しました。かなりどんよりとした曇り空の下、15:15に中標津空港を出発して、この日は時間が押してしまったことから直接、現地に向かうことにしました。曇り空で少々、霧が出ている状況ながら、現地に到着すると湿地帯には2羽のヒナを連れたタンチョウの姿があり、しばらくはバスの中から観察しましたが、警戒する様子がなかったことからその後はバスを降りて望遠鏡を使って観察することにしました。ヒナは思っていたよりも大きく、時折、親から餌をもらっていました。観察しているとアリスイの声が聞こえたことから探してみると、姿は見られませんでしたが、代わって電線にはコムクドリのメスが止まり、追ってオスもやってきて2羽で並んで止まってくれました。また周囲からはツツドリのさえずりが聞こえ、ノビタキのオス、そしてメスが周囲を飛び回っていました。その後は一旦バスに乗って移動してみると、やや風が強まる中、間近に1羽のタンチョウの姿があり、さらに遠くにはつがいと思われる2羽のタンチョウの姿がありました。観察していると1羽のタンチョウが風に乗るように飛んでいて見事な飛翔を見ることができました。観察後はトイレに立ち寄ってから来た道を戻り、その途中では複雑なさえずりを繰り返すコヨシキリが見られたほか、アオジ、ベニマシコ、ノビタキも見ることができ、最後はエゾカンゾウが咲き乱れる原生花園で盛んにさえずっているシマセンニュウを見てホテルに向かいました。
22日、この日はこのツアーはメインとなる落石クルーズに午前中に乗船する予定でしたが、海況が悪いことはあらかじめわかっていたことから、数日前に船長と協議して夕方に乗船できるよう変更していました。まずは早朝探鳥を05:30から予定していましたが早朝に外を見ると想定外の雨と台風のような強風が吹き荒れていたことから早朝探鳥は中止としました。そのため朝食後の08:30に出発しました。この日は南西風が強く、そのためこの風を避けられる場所を選択しました。幸いにも雨は止んでいて次第に強風を受けなくなってきました。まずは休憩をとってから進みました。途中、電柱に止まっているオジロワシが間近に見られ、その後は咲き乱れるエゾカンゾウやハマナス、センダイハギなどを見ながら進み、バスを降りて探鳥しました。幸いにもここは風がほとんどなく探鳥には影響がないように思えました。早速、シマセンニュウがさえずり、電柱に止まってさえずっているオオジシギが見られました。観察していると杭に止まって鳴いているアリスイが見られ、周囲にはノビタキの姿がありました。よく見てみると周辺には巣立ったばかりと思われるヒナの姿があり、親が餌を運んでいるようでした。さらにはコムクドリが水浴びにやってくる場所で待っているとコムクドリの群れに混じってニュウナイスズメのメスも見られました。その後は昼食を買ってから休憩をとり、移動しました。途中、杭に止まってさえずっているオオジシギを観察し、現地では早速、枯れ木に止まってアオジがさえずり、周囲からはシマセンニュウのさえずりが聞こえていました。歩きだすとさえずっているオオジュリンが見られ、展望台から海を眺めると群れているウミウの姿や海上に浮いているケイマフリが見られました。遊歩道を戻ると一気にシマセンニュウがさえずる出し、ようやく枯れ枝やシシウドに止まってさえずっている姿をじっくり見ることができました。その後は海上を見てみるとラッコがのんびりと浮いていて、その姿をたっぷりと見てから最後は公園に行ってみることにしました。時間も限られていたことから、まずはベニマシコを探してみました。ここでは枯れ枝にノビタキのオスが止まっていたことから観察していると、入れ替わるように真っ赤なベニマシコのオスがやってきて止まってくれたことから、良いタイミングでその姿をじっくりと観察することができました。その後はシジュウカラ、ヒガラの声を聞きながら歩き、森の入り口ではエゾセンニュウが大きな声でさえずり、最後はツツドリの声を聞きながらこの日の探鳥を終えました。
23日、ここまでなかなか落石クルーズに乗船することができなかったですが、この日は風も波もかなり収まる予報だったことから前日に再び船長と相談し2回運航という変則日程で進めることにしました。幸い、早朝に外を見るとみるみる青空が広がり、街路樹もまったく揺れていなかったことから条件は良さそうでした。予報では昨日まで吹いていた12mの風は6mになり、波も1.3mとかなり収まっているとのことでした。ひとまず早朝にホテルを出発して落石港に向かい、到着後は準備を進めました。この時期の落石クルーズはとにかく霧に悩まされることがほとんどですが、この日はうねりはややあったもののほぼ霧がなく快晴で視界良好でした。出港直後からウトウの数が多く、次第にケイマフリも混じってきました。そして各所でハシボソミズナギドリの群れに出会い、間近にすいすいと飛んでいく姿は圧巻でした。またそこには少数ながら北海道近海では少ないオオミズナギドリが混じっていました。ユルリ島周辺では湾内でゼニガタアザラシ、ラッコがじっくり見られ、飛翔するオジロワシも頻繁に見られました。またケイマフリが群れている姿、飛翔する姿をたっぷり見られました。またエトピリカと並んで夏の落石クルーズの主役になりつつあるチシマウガラスは見事な繁殖羽個体が複数見られ、岩礁に止まっている姿をたっぷり見ることができました。結果的にはエトピリカに出会うことはできませんでしたが、良好な海況、さらには良好な視界の中、さまざまな海鳥たちを間近に見ることができました。
小型船を使ったツアーは欠航というリスクがあるため出発前から心配が尽きないのですが、今回は出発前から海況が悪く、また初日の到着遅れもあって全行程で臨機応変なツアーになってしまいました。クルーズでは残念ながらエトピリカに出会うことができませんでしたが、海況、視界ともに良好なクルーズが2回でき、繁殖羽のチシマウガラスやケイマフリ、ウトウ、そして間近を飛び回るハシボソミズナギドリの群れは圧巻でした。またラッコやゼニガタアザラシも多く楽しめました。原生花園では真っ赤なベニマシコやさえずるシマセンニュウ、オオジシギ、オオジュリン、アリスイ、コムクドリ、そしてタンチョウの親子やノビタキのヒナも見られ、頻繁にオジロワシの姿も見られました。この落石クルーズは冬季にはウミバトをはじめ、コウミスズメ、エトロフウミスズメといった小型ウミスズメ類に期待できます。ぜひまた季節を変えてご乗船ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。特別に同行していただいた宮島仁さんにも感謝いたします。
石田光史