【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2023年11月18日~19日

(写真:カリガネ 撮影:島田真司様)

四季を通して日本国内を旅していますが晩秋のこの時期に絶対に外すことができないのが今回訪れる宮城県の伊豆沼でしょう。伊豆沼はもちろんガンたちの姿も見事なのですが、各所で見られる風景が私が子供の頃によく遊んでいた環境によく似ていることもあってか、訪れるたびに懐かしさを感じてしまいます。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は10万羽を超えているとも言われています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道な上、駐車スペースが限られていることから我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これによりできる限りガンに近づけるようになり、それに伴って歩く距離も軽減され、広大な畑地の隅々まで探鳥可能で、警戒心の強いガン類に近づく手段として車内からの観察といった手法も可能になりました。今回はちょうど低気圧が通過した後のタイミングになり、天気予報はそれほど悪くはなかったものの、やや風が強くなるとの予報が出る中での出発となりました。

18日、早朝からほぼ快晴の東京駅を予定通り出発して新幹線でくりこま高原駅を目指しました。予定通り到着したくりこま高原駅は思ったほどの寒さはなく、むしろ穏やかな印象でした。改札前でご参加のお客様と合流後は一旦、徒歩にてホテルに向かい、まずはロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていますし、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日はまず伊豆沼に行ってみることにしました。ここはだいたい毎日マガンのかなり大きな群れが地上に群れているのですが、この日はまず目についたのはオオハクチョウの多さで、地面が真っ白く見えるほど大きな群れが点在していました。さらに進むとオオハクチョウの群れの奥にマガンの群れがいたことからバスを降りて観察していると農耕車の接近に驚いたマガンの群れが一斉に飛び立ちました。するとその中に3羽のハクガンの成鳥が混じっていたため接近して観察することにしました。地上に降りたハクガンはそれほど警戒していないようでしばらくの間、じっくりと観察することができました。観察後は一旦、バスに乗っていただき別の場所に行ってみました。ここでもオオハクチョウのかなり大きな群れが地面に降りていて、その中に混じるようにマガンが降りていました。この時間は一気に風が強まったことからバスの陰に隠れるようにして探鳥し、マガンの混じるかなりの数のヒシクイも見ることができました。その後は蕪栗沼まで移動して一旦、トイレ休憩を取った後は周辺をめぐりながらカリガネを探してみました。ただ、この日はなかなかカリガネに出会うことができず1時間ほど探し回ってようやく地面に群れている20羽ほどのカリガネの群れに出会うことができました。たまたま道がなかったこともあってバスを降りても問題がない距離感だったため、バスを降りて望遠鏡を使って観察しました。ちょうど光線が順光だったこともあって金色に輝くアイリングなどしっかりと観察することができました。そしていよいよ陽が傾いてきたことから防寒装備を整えて塒入り観察に向かいました。周辺ではコチョウゲンボウのメスが見られ、カモを襲うハヤブサ、さらには畑地を飛び回るハイイロチュウヒのメスも見られました。この日は雲が厚く、想定よりも早めに薄暗くなってしまいましたがガンたちは続々と塒に戻ってきて、シジュウカラガンの大群がやってきて地上に群れる光景を含め、次々に塒に帰ってくるガンの群れを見続けました。毎年見ていますが、この圧倒的な迫力は飽きることがなく、ぜひとも多くの方々に体感していただきたいなと毎回思います。幸いにもそれほど寒さを感じることなく過ごすことができ、周辺が薄暗くなった17:00に観察を終了してホテルに向かいました。

19日、この日は早朝の塒立ちを観察するため早朝にホテルを出発しました。この日の早朝は天気予報では曇りだったことから日の出は無理かなと思いながら外を見ると、空は比較的明るく、雲も切れていたことから少々期待しての出発でした。現地に到着すると日曜日ということもあって現地としてはやや多めな30人ほどの人の姿があり、我々も早速準備に取り掛かりました。ガンたちは湖面を覆いつくすように浮いていて、まずは奥にいた群れが飛び立ってやや近い位置に着水して群れがどんどん大きくなってきました。そして日の出時間よりもやや早い06:15頃からはガンたちが次々に飛び立っていく見事な光景を楽しむことができました。天気予報が悪かったですが、意外にも見事な日の出とガンたちが飛び立っていく風景を見ることができ幸いでした。観察後は一旦ホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発してこの日はまず化女沼に立ち寄りました。草地を歩くとカシラダカ、ミヤマホオジロの姿がありましたが飛び去ってしまい、じっくりと見ることはできませんでした。湖面にはマガモ、カルガモ、オナガガモ、コガモ、ハシビロガモにまじる、カワアイサ、ハジロカイツブリ、カンムリカイツブリが見られ、どこからか飛んできたオオタカの成鳥が飛び回っていました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりながらシジュウカラガンを探してみましたが、この日はなかなか見つからず、そのためさらに範囲を広げて探してみると、コハクチョウの群れの近くにマガンに混じるように数百羽のシジュウカラガンの姿がありました。ちょうどこの時間は強風が吹き荒れてしまい、良い観察条件ではありませんでしたが、最後はかなり近づくことができ、地面に群れる姿やくりこま山を背景に飛翔する姿を観察することができました。その後はトイレに寄ってから一旦各自昼食の時間とし、昼食後はヒシクイのポイントに向かって歩くことにしました。ただここでまず驚きたのがオナガガモの群れでした。数百羽、数千羽はいようかというオナガガモの大群が畑地で餌を採ったり、飛び立って湖面に戻ったりと飛び回る光景はガンの群れに負けないほど圧巻でした。ヒシクイが群れるポイントまで行くと、そこに混じるたった1羽のマガン、さらにはヘラサギも見ることができ、葭原を飛び回るチュウヒも観察してから来た道を戻りました。ただ塒入り観察まで少々時間があったことから再度、カリガネを探してみました。前日は出会うまでにかなり時間を使いましたが、この日は幸いにもあっさりと20羽ほどの群れ、さらには30羽ほどの群れに立て続けに出会うことができ、最後にはGPSらしきものを首につけた個体も見る事ができました。そしてこの日も16:00くらいに塒入り観察に向かい、途中3個体のコチョウゲンボウのメスを見ることもでき、最後は続々と塒に帰ってくるシジュウカラガン、マガンを観察しました。この日も残念ながら雲が厚く、美しい夕景とはいきませんでしたが群れ飛ぶガンたちの姿を17:00まで観察してツアーを締めくくりました。

今回は途中、強風やにわか雨はあったものの、両日ともに概ね良い天候の中で探鳥することができて幸いでした。初日にいきなりガン類5種の中で唯一、定期越冬していないハクガンに出会う幸運があり、マガン、ヒシクイ、カリガネ、シジュウカラガンと約半日で5種のガン類に出会うことができました。また翌日の朝は曇り予報ではありましたが見事な朝焼けに乱舞するマガンの群れを堪能することができ、その後はシジュウカラガンの群れ、ヒシクイの群れ、そして再度、カリガネを群れで見ることもできました。塒入りは雲が厚い中で見事な夕景とはいきませんでしたが、大迫力を体感していただけたことでしょう。またコチョウゲンボウ、ハヤブサ、オオタカ、ノスリ、チュウヒ、ハイイロチュウヒといった猛禽類、そして今回はオナガガモの大群も印象的でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ハクガン 撮影:島田真司様

 

シジュウカラガン 撮影:島田真司様

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