【ツアー報告】夏休みに行く!東京~小笠原父島航路 2017年8月19日~21日

(写真:オガサワラヒメミズナギドリ 撮影:早川弘美様)

我々の看板商品でもある定期航路からの海鳥観察ツアー。さまざまな航路で企画していますが魅力的な海鳥たちが遥か北の海域に去ってしまっているこの時期は南方系の海鳥たちの中でも比較的珍しい種を求めて南の海域に向かいます。今回訪れる小笠原諸島は世界自然遺産にも登録されている憧れの地ですが、ここに行くためには小笠原海運のおがさわら丸に乗船するしか方法がありません。しかもおがさわら丸の通常航路は5泊6日を一航海とする長い日程のため、そう簡単に足が向かないのが現状です。ただ夏季に3日間で東京と父島を結ぶ「着発」と呼ばれる日程が組まれることからこれに合わせてツアーを企画し、お忙しい方にもわずかながら小笠原を楽しんでいただけるようにしています。今年は台風が多くとにかく出発まで心配でしたが穏やか予報の中、出発することができました。

19日、早朝の東京は曇り空ながら昨夜の蒸し暑さそのままの暑い朝でした。09:00に竹芝桟橋に到着して準備をしていましたが、この日のおがさわら丸はそれほど混んではいないようで人影はまばらでした。集合予定の10:00前にはほとんどのお客様がご集合されていたことから資料、トラベルイヤホンを配布し簡単なツアー説明をした後、乗船チケットを配布し10:20頃から番号順に乗船開始となりました。この日は乗船人数が少なかったせいか順調に乗船は完了し、予定通りおがさわら丸は11:00に東京竹芝桟橋を出港しました。ここから約3時間は東京湾内を航行することから14:00までは一時小休止し、各自船内を見学したり、お昼を食べたりしながら過ごしていただきました。13:30にデッキに出るといよいよおがさわら丸は東京湾を出ていくところで少ないながらもオオミズナギドリが飛んでいました。通常は東京湾を出ると波が高くなるのですが、この日は珍しいくらいのベタ凪で東京湾を出た後も船体の揺れは変化がありませんでした。オオミズナギドリの群れが着水している中、大島沖に到達する30分前の14:30にこの航路では初めて見るコアホウドリの姿があり、14:40には大量のオオミズナギドリが乱舞する中、アナドリが飛翔しました。15:40には再び着水しているコアホウドリと飛翔するアナドリが見られ、16:10にはまたまたコアホウドリが現れました。さらには16:40、17:00にも着水しているコアホウドリの姿がありました。結局八丈島近海に到達する18:30まで観察しましたが、この日はベタ凪ぎだったことから着水してしまっている個体が多く、それだけに目に入ってくる海鳥の個体数は少ない1日でした。

20日、日の出は05:05ですが4:30には準備をしてデッキが開くのを待ちました。デッキは04:45に開放され、それと同時に外に出ると小笠原に来たことを実感させられるような蒸し暑さが待っていました。早朝はやや曇っていましたが次第に小笠原らしい青い空と海が広がってきました。ただ海がやはりベタ凪で早朝は鏡のような海面を背景にアナドリがスイスイと飛んでいました。05:15には小笠原海鳥基本種のオナガミズナギドリが飛び、05:30には小笠原のシンボルバード的存在のカツオドリが船尾から追いかけるように飛んできました。しばらくの間、カツオドリのダイビングを見ていましたが06:15にはちょっとしたスコールがあり見事な虹がかかって盛り上がりました。そして06:30頃にはいつのまにか7羽のカツオドリがおがさわら丸上空を乱舞するという小笠原らしい光景を楽しむことができました。06:45頃には船首方向から飛んでくるオナガミズナギドリの数が増え、オオミズナギドリとの違いを確認しながら観察することができました。ただその後は海鳥の出現は少なくなり、目立ったところでは07:15にクロアジサシが飛んだことくらいでした。その後、08:20に船首側のゲートも開いてより船首側での観察が可能になる中、再び08:40にクロアジサシが飛び、09:00にはハシナガイルカと思われるイルカの群れ、そして09:20にはクロウミツバメを観察された方がいらっしゃいましたが、新たなミズナギドリ類の出現はなく、おがさわら丸は11:00に父島に到着しました。到着後は一旦下船して父島待合室にご集合いただき人数確認後、14:30まで自由行動としました。また南島クルーズご希望のお客様は11:45再集合とし、12:00発で約2時間のクルーズに出かけました。岸壁でハジロクロハラアジサシが見られ、海に出るとベタ凪だったことから海の青が際立っていました。早速、ミナミハンドウイルカの群れに出会うことができのんびりとクルーザーの近くを泳ぐ姿を観察することができました。南島ではまず岩礁に佇むクロアジサシを間近に見ることができ、たくさんのカツオドリが休んでいる岩礁にも立ち寄っていただきました。その後は南島を周遊しながら岩棚に佇むカツオドリのヒナを見ながら進みました。カツオドリのヒナは真っ白ですが大きさはもうかなり大きくなっていて親鳥と変わらないほどでした。また父島に戻ってくるとアカガシラカラスバトが待っていてくれるという幸運もありました。なお父島散策をされたお客様はクロハラアジサシ、オガサワラノスリ、アカガシラカラスバト、ダイゼン、ムナグロ、アマサギ、ヒバリシギ、タカブシギなどをご覧になったとのことでした。14:30にご集合いただいた後はチケットを配布して14:45頃から番号順に乗船開始となりました。ただ帰りは乗船する人数が多かったことから出港がやや遅れ15:40におがさわら丸は東京竹芝桟橋に向けて出港しました。出港後はお馴染みとなっている出港セレモニーが30分ほど続くため観察は16:00頃からスタート。いよいよこの航路の最も期待できる時間帯に向かって船は進んでいきました。海は相変わらずベタ凪でしたが時間帯のせいか海鳥の個体数は多く、アナドリ、オナガミズナギドリが飛んでいました。中には着水している個体もいて船が近づくと慌てて飛び立っていました。しばらくこの状況は続く中、16:50にはシロハラミズナギドリが飛び、塒に戻るのか、遠くを飛翔するカツオドリの姿が目立ってきました。そして17:15にようやく小刻みな羽ばたきで飛翔するセグロミズナギドリが出現しました。この個体は2時方向に出現した後、3時方向に離れていってしまいましたがお客様がなんとかその姿を撮影され、画像を確認してみるとこの個体はセグロミズナギドリではなく、オガサワラヒメミズナギドリであることがわかり一気に盛り上がりました。また17:45には同じようなコースをセグロミズナギドリが飛び、距離はあったもののなんとか観察することができました。

21日、20日同様に04:45にデッキに出ましたがこの日はかなり北まで来ていたため、それほど蒸し暑さを感じない朝でした。天候は曇りでしたがなんとか日の出を見ることができました。この海域までくるとオオミズナギドリばかりですが、04:50にはオナガミズナギドリが1羽だけ見られました。05:30には数十頭のミナミハンドウイルカと思われるイルカの群れが複数見られ、06:00頃には複数のマンボウも見られました。この日はやや早い07:30に船首側のデッキがオープンする中、上空を複数のトウゾクカモメ類が飛翔し、07:50、08:20にはコアホウドリが着水していました。08:30には着水している100羽ほどのオオミズナギドリの群れが一斉に舞い上がり09:00、09:20には上空をシロハラトウゾクカモメが飛んで行きました。10:15にはアナドリが飛び、10:40には2羽のコアホウドリが着水していました。10:45にはやや遠くをクロアシアホウドリが飛び、11:30に2羽のアカエリヒレアシシギを観察して東京湾に入る12:30に観察を終了しました。この日も終日ほぼベタ凪だったことからなのか、海鳥の個体数はそれほど多くはなかったですが鯨類を含めさまざま観察できました。

案内文にも書きましたが、この時期は小笠原航路としては必ずしもベストシーズンではなく当たりはずれがあるという点はほぼ想定内でした。また海況が珍しくベタ凪だったこともあってか、さらに目に入ってくる海鳥の数が少なかったようで残念でした。ただ、何かしら珍しい種が見られればと期待して企画したことから考えると、オガサワラヒメミズナギドリという最も高いハードルをクリアできたことは最大の収穫で、またそれを画像として残すことができたお客様がいらっしゃったことは幸運でした。海鳥観察は瞬間的であることがほとんどのため、見逃しもあり成果が上げづらい場合も多いですが、知識よりも経験や慣れが大切だと思っています。ぜひまたさまざまな海鳥たちに会いにお出かけいただけましたら幸いです。この度は長時間の船旅、お疲れさまでした。

石田光史

アカガシラカラスバト 撮影:須崎明男様

 

カツオドリ 撮影:鈴木真様

 

オナガミズナギドリ 撮影:須崎明男様

 

クロアジサシ 撮影:鈴木真様

 

コアホウドリ 撮影:須崎明男様

 

カツオドリ 撮影:鈴木真様

 

アナドリ 撮影:須崎明男様

 

カツオドリの親子 撮影:鈴木真様

 

クロアジサシ 撮影:須崎明男様

 

ハジロクロハラアジサシ 撮影:須崎明男様

 

オナガミズナギドリ 撮影:須崎明男様

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