【ツアー報告】津軽海峡最北端の渡り 春の竜飛岬 2018年4月30日~5月2日

(写真:イスカとマヒワ 撮影:沼里和幸様)

春の渡りの真っ只中は離島でのバードウォッチングが主流となっていますが、船に乗って離島に行かなくても新幹線で行ける渡りの探鳥地があるのです。今回訪れる津軽半島最北端にある竜飛岬は普段なかなか目にする機会がない、小鳥たちが渡って行く姿、渡っている姿を実際に見ることができる場所なのです。もちろん過去、珍鳥との意外な出会いもあり、ほかにも海鳥、猛禽類、カモ類、カモメ類、カイツブリ類など3日間で100種超えしたこともありました。今回は次第に天候が悪くなってくるという天気予報の中、出発することになりました。

30日、カラッとした青空の中、順調に東京駅を出発して昼過ぎに到着。到着した新青森駅も青空が広がっていて心配された肌寒さは全くありませんでした。観察機材準備の後は早速、探鳥に向かいました。ここでは夏羽に換羽したユリカモメが飛び、オオセグロカモメ、ウミアイサ、ヒドリガモ、カルガモ、オナガガモの姿がありました。また反対側に移動するとマヒワの小群が飛び、海上にはホオジロガモの姿がありました。その後は竜飛岬に向かいながらも途中にある港にも立ち寄って、毎回よく見られているコクガンを探しましたがその姿はありませんでした。その後は道の駅で休憩してからさらに北を目指しました。同様に途中にある漁港に立ち寄り、コチドリ、セグロカモメ、ウミネコ、ヒメウ、ウミウなどを見て、いよいよ竜飛岬までやってきました。到着した頃には当地特有の強風が吹き荒れ、寒さも厳しくなっていて竜飛岬らしくなっていました。周辺を巡ると寒さと風に負けることなく、ホオジロ、ウグイス、ベニマシコの声が聞かれ、最後には斜面で寒さをしのぐようにじっとしているルリビタキの姿がありました。

5月1日、風は夜まで吹き続き、早朝も同様に強風が吹く中、05:30から探鳥を行いました。さすがは竜飛岬という寒さの中、斜面には風を避けるようにキビタキのオスの姿があり、どこからともなくホオアカのさえずりが聞こえてきました。草原ではモズ、ベニマシコが餌を探し、芝生には10羽ほどのツグミが群れていました。そしてホテル前まで来る30羽ほどのイスカの群れが我々の上を飛んでいきました。一旦朝食をとった後はバスにて竜飛岬の駐車場まで行き、しばらく観察することにしました。この日の主役はヒガラ、シジュウカラ、メジロで群れが何度も何度も湧き上がっては海に向かって飛んでいきました。またハイタカの個体数も多く、同時に数羽がまるで風に乗るように湧き上がってきていました。次第に空が明るくなる中、ノスリの渡りも活発となり次から次へと上空を通過していきました。結局2時間ほど観察した後、この日は峠を下りました。途中にある展望台は霧につつまれて視界がないことから通過し、一旦道の駅に向かいました。ここでは岩礁で採食行動しているウミアイサのオスとメスのほか、芝生で餌を探すツグミの群れ、また巣材を運ぶミサゴが見られ、その後は別のポイントに向かいました。ここは松林が広がっていることからイスカに期待していましたが、到着と同時に小鳥の群れが飛んでいるのが見えました。ひとまずバスを駐車場に止めて降りてみるとマヒワとアトリの群れが飛び交い、近くの木に止まりました。しばらく見ているとマヒワとアトリの群れがどこからともなくやってきてはこの木に止まりました。またイスカの大群が上空を何度も飛び、付近の松の木に止まって真っ赤な美しい姿を見せてくれました。その後は付近で昼食にしましたがその最中にもイスカの群れが飛び交い、松の木にはマヒワの群れがやってきていました。その後は十三湖周辺を巡り、途中にある河口ではヨシガモ、オカヨシガモ、カンムリカイツブリ、スズガモ、さえずっているアオジが見られ、北側にある駐車場から湖面を眺めるとオオハクチョウの群れ、そして浅瀬で休むオジロワシが見られました。そして最後はマヒワ、アトリの姿を見ていると夏羽に換羽したシメも見られ、クロツグミのさえずりを聞いて終了しました。この日は天候が回復したため美しい夕陽を見ながらホテルに向かうことができました。

5月2日、この日も同様に05:30からホテル周辺を歩きました。天気予報が悪かったため心配でしたが前日に予報が良い方向い変わり、この日は不思議なことに風もほとんどありませんでした。早朝からウグイスやアオジのさえずりが聞え、相変わらずマヒワ、イスカが飛び交う中、階段国道付近では珍しくクロツグミのメスが地上採食していました。またこの日の主役はヒヨドリに変わったようで数百羽の群れが岬を飛び交っていました。一旦朝食に戻った後は再び岬まで行きましたがこの日は小鳥類の渡りの数は前日ほどではなく、海面スレスレを渡っていくヒヨドリの群れ、前日同様にヒガラ、シジュウカラ、メジロなどが見られ、1羽のハヤブサが吹き上がる風を利用しては舞い上がり、時折接近してくるハシブトガラスに攻撃を加えるシーンが見られました。その後は林道を下りながら森林の野鳥と海鳥を探しました。最初の場所では川の流れに沿うように美しいオオルリのオスが舞い、新緑の緑との共演が見事でしかも上から観察することができました。ほかにもキビタキ、エナガ、ヤブサメなどの声が聞かれ、海が眺められる場所では岩礁で繁殖するウミネコ、グランドではツグミの群れとアカハラを見てから海岸付近にある公園までやってきました。ここではようやくシロエリオオハムの夏羽に出会うことができ、やや距離があったことから望遠鏡を使って観察することにしました。2羽見えましたがそのうちの1羽が頭が黒く、背中に白斑が出ている美しい個体でした。今回は海鳥類の個体数が少なく残念でしたが、最後の最後でようやくシロエリオオハムに出会うことができました。昼食後は次第に天候が悪化する中、無事新青森駅に到着することができました。

さて私にとって久しぶりとなる竜飛岬でしたが、以前と変わらない小鳥たちの渡りの光景を見ることができ感動的でした。鳥が渡ることは誰でも知っているでしょうが、実際にその姿を目にすることは貴重な経験です。また今季は冬鳥が多かったことからイスカの姿を毎日見ることができました。オスの真っ赤な姿は見事な美しさで、マヒワ、アトリと共にこのツアーを盛り上げてくれました。またハイタカ、ハヤブサ、オオタカ、ノスリ、ミサゴ、オジロワシといった猛禽類、カモ類、アビ類、カモメ類なども見られたことから3日間で77種の野鳥たちに出会うことができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ハイタカ 撮影:沼里和幸様

 

海を渡るヒヨドリの群れ 撮影:沼里和幸様

関連記事

ページ上部へ戻る