【ツアー報告】空の王者 イヌワシに会いたい! 2020年8月1日~2日
(写真:イヌワシ 撮影:坂東俊輝様)
今年は梅雨明けが大幅に遅れてしまい、とにかく天気が心配でしたが幸いにもツアー直前に梅雨が明け、例年通りのような厳しい暑さとキリッとした夏空が帰ってきてくれました。そもそもこのツアーは暑さが厳しくなってくるとなかなか行く場所が見つからないこと、また暑い季節のためなるべく涼しい場所に行き、できればあまり歩き回りたくないといった要素を考慮して企画しました。ただやはり天気が良く視界も良いほうが観察に最適であることから天気が重要なのですが、過去の天気予報をデータ化して最も天気が安定する時期に合わせています。実は意外なことに当地は2週目以降はあまり天候が安定しないことが多いのです。
1日、梅雨明けの遅れでどうなることかと心配でしたが、なんとか直前に梅雨が明けてくれました。この日の東京駅はまだ曇り空といった感じでしたが、新幹線に乗り、どんどん時間が過ぎて行くと空は見る見る明るくなり、到着した米原駅は青空が広がっていつもの暑さを感じることができました。米原駅前を11:00に出発してひとまず山頂を目指して走り出しました。ゲートまで来ると山頂付近の気温は25℃、視界はやや良好となっていました。登って行くと晴れているエリアと霧がかかっているエリアが交互に来るような出入りの激しい高山帯らしい景色が見られ、到着した山頂付近は霧で視界不良でした。ひとまずトイレに寄っていただいてから観察開始。幸いにも観察開始時は視界はあり、時折、霧が流れてくるといった状況でした。すると早速12:50頃から眼下の谷間を2羽のイヌワシが旋回し始め、いきなりの出会いに驚きました。その後は図面を使ってポイントを説明していると、直後の13:15に左側の尾根裏からイヌワシが出現してこちらに向かって飛んできました。よく見るとイヌワシは2羽で音もなく羽ばたくこともなくあっという間に我々の真下までやってきて斜面に沿って旋回し、ふわっと浮き上がるかのように絡まりながら右の山の裏側に消えていきました。ただ緊張感はそのまま続き、直後には右の山の上から旋回しながら出現したかと思うと我々の真上をかすめるように通過していきました。その後も14:20にも1羽が飛び、14:30には左側の尾根にある岩に2羽が止まりました。距離はありますが望遠鏡を使えばその姿をしっかりと見ることができ、15:50には羽が真下に向かってきりもみするかのように飛び、16:00には左尾根付近から飛び出したイヌワシが右の山の岩場に止まってくれ、その直後に飛び去ってしまったもののイヌワシがかなりよく動いてくれ、さまざまなシーンを短時間の中で観察することができました。結果的にはずっと快晴ではなく、霧が出たり晴れたり曇ったり小雨が降ったりと、出入りの激しい天候ではありましたがイヌワシ登場時に視界があったことは幸いでした。
2日、この日は曇りベースの晴れという予報が出ていましたが直前に天気予報が変わり、近畿地方各地で危険な暑さに関する予報が出るほどの晴れ予報。早朝はその予報通りスッキリとした青空が広がっていました。朝食後の08:00にホテルを出発してゲートまで来ると頂上付近は気温17℃、視界良好とのことでひとまず安心して頂上駐車場に向かいました。一旦トイレに寄っていただき、暑さ対策として水を買っていただいたりしてから観察開始。昨日に比べると明らかに視界が良く、ただ風が全くなく蒸し暑くなりそうな雰囲気でした。午前中は小鳥たちが渡っているのか、鳴きながらイカルが通過し、ヒガラの親子が賑やかに飛び回ったり、メジロの群れが眼下の木にやってきたりしていました。またお気に入りのソングポストにはホオジロがやってきてさえずりを聞かせてくれました。その後は10:50にチョウゲンボウが飛び、11:00にはノスリも出現してざわつきました。11:30頃からはやや風が出てくる中、ホトトギスのけたたましいさえずりが聞こえ、ヤマガラ、シジュウカラの姿もありました。ただ良い雰囲気ながらこの日はイヌワシの動きは全くなく、ひとまずお昼の時間となりました。午後にはいるとうっすらと霧が立ち込めるようになり、風向きが北寄りに変わって吹き上げてくるようになってきました。すると13:45に読み通り左側の尾根裏からイヌワシが現れましたが一瞬で視界に白斑が見えたことから、それが幼鳥であることがわかりました。最初、幼鳥と成鳥1羽が絡まり合うように出現し、それを追うように成鳥が1羽、計3羽のイヌワシが目線ほどの高さを右尾根裏に向かって真っすぐ飛び、僅かな時間ながらその姿をこの日も見ることができました。その後は黒い雲がやってきて14:00からは小雨、ただすぐに雨は止み14:30にはどこからやってきたのかミサゴが飛び、14:45にはハチクマのオスが旋回するなど比較的多くの猛禽類が見られ、15:40にアカゲラも登場してくれましたが残念ながらその後はイヌワシの登場はなく17:00に逆光に輝く谷間を見ながら探鳥を終了しました。
今年は梅雨明けが遅れてしまい、どうなることかと心配していましたが、ツアーに合わせるように梅雨が明けてくれ、幸いにも2日間共に視界のある中で、しかも厳しい暑さもなく観察できたことは幸でした。今回は目的だったイヌワシに両日共に出会うことができ、特に初日には間近の眼下を音もなくすーっと飛翔するイヌワシの姿が見られ感動的でした。気流はあったのでしょうが、全く羽ばたくことなく長時間飛翔できることは驚きです。さらに翌日には短時間ながら幼鳥の姿も見られました。長らく期待されていた若いワシの登場は嬉しいものであり、今後も定期的に若いワシがこの地から飛び立っていくことを祈りたいものです。今後も夏の定番ツアーとして企画していきますので、またの機会、当地にお越しいただきイヌワシの見事な飛翔をお楽しみいただけましたら幸いです。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史