【ツアー報告】津軽半島最北端の渡り 春の竜飛岬 2023年4月28日~30日

(写真:ハイタカ 撮影:石田光史)

春の渡り期の定番ツアーとして長らく企画してきた竜飛岬でしたが、宿泊するホテルの予約がなかなか取れないなどの問題があってしばらく停滞していましたが、前回からは青森市内のホテルに宿泊することによりシングル部屋利用ツアー、さらにバス席お一人様2席利用ツアーとしてリニューアルすることでようやく安定してツアー企画することができるようになりました。また新幹線利用であれば新青森駅まで4時間ほどかかり移動時間が長時間に及ぶことから、思い切って飛行機を使って青森まで往復することにし、たった1時間ほどで移動できるよう変更しました。この時期の竜飛岬はあたかも渡り期の離島のような探鳥ができることが特長で、夏鳥、冬鳥はもちろん、猛禽類、カモ類、カイツブリ類、海鳥、そして渡り途中の珍鳥にも期待できます。そしてもちろん実際に対岸の北海道に向かって飛び立って行く鳥たちの渡り風景を実際に見ることができます。ただし竜飛岬は風の岬とも呼ばれ、強風が吹き荒れることで知られています。今回は最終日の天気予報が芳しくなく、天気予報を注目しながらの進行となりました。

28日、早朝からほぼ快晴でやや蒸し暑い羽田空港に予定通りご集合いただいた後はわずか1時間ほどの空の旅となり青森空港に向かいました。着陸直前には機体が大きく揺れましたがほぼ予定通り到着。到着後は観察機材を準備していただいてからバスにて出発しました。やや雲がありましたが天気には問題はなさそうで、最終日の天候が不安定なことからひとまず竜飛岬に向かうことにしました。車窓から外を見るとちょうど桜が満開で、この日は風があったことから花びらを散らしていました。山間部に入るとちょうど芽吹きの時期のため新緑が美しく見えました。まずは道の駅で一旦休憩をとると、桜にはかなりの数のヒヨドリが集まり、芝生広場にはこれから繁殖地を目指すであろうツグミが群れていました。その後は竜飛岬を目指して進み、到着直前には漁港に立ち寄ってみました。バスを降りるとこれぞ竜飛岬といった感じの強風が吹き荒れていましたが、ハイタカが飛び、断崖を見上げるとヒヨドリの群れが行ったり来たりしていました。あまりの強風のため竜飛岬での探鳥が可能なのか不安になりましたが、ひとまず竜飛岬の展望台に向かいました。駐車場ではそれなりに風は吹いていましたが、元気なシジュウカラの群れが頭上をかすめるように飛んで行き、展望台までくると意外に風がなく、相変わらずヒヨドリの群れが津軽海峡方向に飛んでは戻り、また飛んでは戻るという行動を繰り返し、それを狙ってかハヤブサの幼鳥がやってきて飛び回っていました。またメジロ、ヒガラが飛び交い、名物のような存在のハイタカも間近を飛んで行きました。観察後は別の場所で探鳥してみました。ただこの日は渡り鳥の姿はなく、畑にアオジがいたのみでこの日の探鳥を終えました。

29日、この日は薄雲がかかる中、朝食後に出発して竜飛岬を目指しました。出発時は雲が多くそれほど期待していませんでしたが、道の駅までくると空は次第に明るくなってきていました。その後は一気に竜飛岬まで移動して駐車場までやってきました。バスを降りると竜飛岬とは思えない穏やかな陽気で気温もぐんぐん上がってきていました。付近ではベニマシコが鳴き、展望台まで来るとこの日は北海道、そして下北半島もしっかりと見ることができ、とにかく快晴無風で驚くような風景が広がっていました。陽気がいいせいか、この日は猛禽類の渡りが活発でノスリが次々に渡り、相変わらずハイタカは頻繁に現れて、岬からの観察のため眼下やほぼ目線ほどの高さを飛ぶ姿を何回も何回も見ることができました。また北海道ではほとんど見かけないサシバが飛んできたのは驚きでした。小鳥類も次々に白神岬方面に向かって海上に飛び出す姿が見られ、シジュウカラ、ヒガラ、メジロを中心に、シメ、マヒワ、そしてこの冬を象徴するかのようにキレンジャクの群れも飛んでいきました。また夏鳥のサンショウクイ、ニュウナイスズメも見られ、北海道には生息していないアオゲラの声が付近から聞こえ、カケスの小群が枯れ木に止まっていました。野鳥が渡りをすることは誰でも知っていることですが、手のひらに乗ってしまうような小鳥が実際に海上に飛び立っていく様子を見られる探鳥地はおそらくここだけでしょう。お昼近くには魚の群れを追っているのか、カマイルカと思われるイルカの大群がやってきて海面を揺らしていました。岬での探鳥は午前中で終えることにし、その後は昼食をとってから日本海側に向かって進みました。最初の探鳥地に向かう途中、この日はそれほど風がなかったことから峠にある展望台に立ち寄って竜飛岬方面の眺望を楽しんでいただき、到着後は周辺の草原で探鳥しました。建物ではイソヒヨドリが朗々とさえずり、周辺からはアオゲラの声が聞こえてきていました。林では今度はクロツグミがさえずり、草地ではホオジロ、カワラヒワ、そして最後は胸の赤みが強く、かなり鮮やかに見えるノビタキのオスに出会うことができました。その後は十三湖方面に向かいましたが、途中には毎年、ミサゴが繁殖している岩場があることから立ち寄ってみると、今年も岩場の上に大きな巣があり、そこに乗るようにミサゴの姿がありました。そのためバス車内から観察してから十三湖に向かいました。ここでは夏羽が美しいカンムリカイツブリや群れるコガモ、キンクロハジロ、スズガモが見られ、最後は流木にとまっているハヤブサを見てこの日の探鳥を終了しました。

30日、天気予報が見事に当たってしまい昨夜から降り始めた雨はこの日の早朝も激しく降り続いていました。天気予報では09:00頃に雨が上がるとのことだったので、この日は早朝の出発は止め、竜飛岬までの移動時間を逆算して06:30に出発することにしました。途中、朝食を購入してから一旦、道の駅まで移動して朝食をとっていただきました。この時点ではまだ雨は激しく降ってはいましたが、芝生には20羽ほどのツグミが群れて餌を探していました。その後は竜飛岬を目指して移動しましたが、まだまだ雨が上がる時間ではなかったことから海岸に立ち寄りました。ここではスズガモが群れ、海岸線ではアオアシシギ、ヨシガモのつがいが見られました。その後はさらに進み公園に立ち寄りました。ここでは岩礁で繁殖するウミネコ、オオセグロカモメ、さらにはテトラポットに止まっているヒメウの夏羽を観察し、かなり雨が小降りになってくる中、初日にも立ち寄った場所に行ってみました。この頃には空には青空が見え始めていて、この日は芝生にかなりの数のツグミが群れ、その中にはアカハラの姿もありました。また昼間にもかかわらず活発に歩き回って餌を探すヤマシギを見ることもできました。また周辺を歩いてみるとモズの姿があり、杉林では4羽のオオルリのオスが美しい青色を輝かせながら飛び回っていて見事でした。またジョウビタキのオスも見られ、その後は風がある中でしたが雨上がりの竜飛岬に向かいました。この日は一転して強風、曇り空といった状況のためか小鳥類の動きは芳しくなく、相変わらず飛び回っているハイタカ、ミサゴ、そして海上では無数のウミネコ、オオセグロカモメ、そしてこの日はユリカモメも混じって乱舞していました。帰り間際には崖の下から風に吹き上げられるようにキビタキのオスがやってきて枯れ木に止まって最後に盛り上げてくれました。

風の岬と呼ばれる津軽半島最北端の竜飛岬。風の強さや向きによっては探鳥地を変えながら進行しなくてはならないため運行が難しく、今回は最終日の雨の状況を読みながらの運行となりました。ただ幸いなことに初日はまずまずの状況、そして2日目は竜飛岬とは思えないような穏やかな陽気の中で探鳥することができました。オオルリ、キビタキ、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、ノビタキといった夏鳥、シメ、マヒワ、ツグミ、ジョウビタキ、キレンジャクといった冬鳥、そしてサシバ、ノスリ、ハイタカ、オオタカ、チュウヒ、ミサゴ、ハヤブサなどの猛禽類、さらにはシジュウカラ、ヒガラ、メジロ、アオゲラ、カケス、ヤマシギといった鳥たちが岬を含めた周辺で見られ、繁殖羽のカンムリカイツブリも見られました。とにかく最高の条件の中で岬から飛び立っていく小鳥たちの姿を見られたことは幸いで印象的でした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ミサゴ 撮影:石田光史

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