【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング 2021年5月19日~20日

(写真:ノジコ 撮影:坂東俊輝様)

思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドを名乗って訪れたのが、この戸隠高原でした。当時は秋の企画のみでしたが、春も素晴らしい探鳥地であることから、その後は年に二回企画するようになりました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きで若いころから通い続けそのせいか特に得意な場所になりました。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。毎回、キビタキやコサメビタキ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。ただ、今回は残念ながら天気予報が芳しくない中での出発となってしまいました。

19日、数日前に東海地方が例年になく早い梅雨入りとなり、本来であるならばさわやかな季節のはずでしたが今回は天気に不安がある中での出発となってしまい、早朝の東京駅前はどんよりとした曇り空でいつ雨が落ちてきても不思議ではない状況でした。新幹線は東京駅をやや遅れて出発し、ひとまず長野駅を目指しました。途中、車窓から外を見ていましたが、意外にも雨はなく緑が鮮やかに見えるほどでした。長野駅到着後は現地集合のお客様と合流してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。戸隠は今年は7年に一度の式年大祭だそうですが、中社付近もこれといって人出が多い印象はなく、ホテル到着後はまずお部屋に入っていただいて各自昼食をとっていただきました。外を見ると残念ながらここで小雨が降ったり止んだりといった状況になってしまい、雨具や傘を持っての出発となってしまいました。かなり雨が降るだろうと予想していたことから、この日はまず突然の雨の場合に逃げ込む場所が点在している場所に向かいました。到着後は小雨が降る中でしたが林からはキビタキのさえずりが聞こえ、まずは地上で餌を探すアカゲラを見ることができました。さらに進むといつの間にか雨は上がり、少々蒸し暑くなってきました。林の奥からはアカハラのさえずりが聞こえ、見てみると針葉樹のてっぺんで歌う姿をじっくり観察することができ、地上にも2羽のアカハラの姿がありました。また樹間を飛び回るコサメビタキを楽しんでから移動すると、いよいよここで見事な戸隠山がその姿を現しました。やや鳥の姿は少なめでしたがホオジロがさえずり、帰り間際には鳴きながら飛び回るサンショウクイやイカル、ニュウナイスズメ、さらには交尾するコゲラ、巣に餌を運ぶキセキレイを観察してから移動しました。日中は騒がしい戸隠も夕方からはかなり静かになり、鳥を見るには良い時間に変わります。池では渡り途中に羽を休める数羽のキンクロハジロ、巣作り中のカイツブリの姿があり、まずは美しいキビタキのオスが間近にさえずる姿を見せてくれました。さらに進むとここ数年、あまりしっかり見られていなかったノジコのさえずりが聞こえ、若葉が美しい木に止まってさえずる姿を何度も見せてくれました。見ている間には愛想が良いゴジュウカラが何度もその姿を楽しませてくれました。その後は次第に霧が立ち込めてくる中でクロツグミのさえずりが聞こえたものその姿を見ることができず、最後は枯れ木で延々さえずるミソサザイをじっくり観察したほか、巣に近づいたのか、コゲラを攻撃するコサメビタキのつがいを観察してこの日の探鳥を終えました。

20日、天気が心配でしたが予報は大当たりで早朝から快晴。見事な雲海が見える中、早朝に出発して、昨日見ることができなかったクロツグミを狙いました。まずは愛想が良いゴジュウカラ、シジュウカラ、ヤマガラ、コガラが引っ切り無しに姿を見せてくれたことからしばらく観察していると、いよいよクロツグミがさえずりだしたため声が聞こえるほうに移動しました。移動すると例年に比べてさえずっている個体が少ない印象ではありましたが、なんとか樹上でさえずっているクロツグミを何度か望遠鏡でとらえることができ、さえずっている姿をじっくりと観察することができました。また待っている間にはオオアカゲラも見ることができ、コルリもかなりさえずっていたため観察に向かいました。ただこの個体は高い木の上が好きなようで見ることはできたもののかなり見上げるような角度になってしまいました。一旦、朝食をいただいた後は再度出発し、この時間は戸隠高原では外すことができない鏡池に向かうことにしました。入り口では、トガクシショウマやシラネアオイ、イワカガミの花を見て、その後はここまで歩いていない、ひっそりとした小道を歩いて、そこからは、ノジコやアオジ、クロツグミのさえずりを聞きながら歩き、途中では巣作り中と思われるキビタキのつがいやキバシリ、鏡池の湖面に浮いている美しいオシドリのオスなどを見ながら鏡池に到着しました。この日は無風だったことから戸隠山と周辺の新緑が湖面に映り、文字通り鏡のような鏡池を堪能することができ、鳴きながら悠々と飛翔する、つがいと思われる2羽のノスリの姿も見られました。戻る途中ではさえずっているコルリの姿をようやくしっかり観察することができたほか、アオゲラの姿を見てから予定よりも45分ほど遅れて一旦昼食の時間とし、恒例の戸隠蕎麦をいただきました。遅れたことから残る探鳥時間は1時間ほどになってしまいましたが、再び探鳥に行くことにしました。ただここで天気予報よりも1時間ほど早く雨が落ち始め、最後の1時間は雨の中での探鳥になってしまいました。ただ珍しく見通しの良い横枝でウグイスがさえずり、美しいキビタキが何度も姿を見せてくれてしばらくの間、楽しませてくれたほか、イカル、アオジ、エナガの群れなどが見られ、今回のツアーを締めくくりました。

さて、今回の春の戸隠高原はお天気の不安がある中での出発ではありましたが、結果的には最後の1時間のみ雨に降られたのみで探鳥にはこれといった影響はなく幸いでした。森が明るくなってきたせいか、クロツグミやコルリは個体数が少ないようでやや苦労しましたが、なんとか見ることができ、ノジコ、サンショウクイ、アカハラが特に良く見られ、キビタキ、コサメビタキ、ニュウナイスズメ、オオアカゲラ、アカゲラ、アオゲラ、ミソサザイ、キバシリ、ゴジュウカラといった常連の鳥たちが楽しませてくれました。戸隠高原に関しては秋にも企画しておりますのでまた違った印象の戸隠高原をお楽しみいただけましたら幸いです。現在、コロナウイルス感染に関しては全く気が抜けない状況です。そのため皆様にはさまざまご協力いただきながらのツアー運行となります。この点、ぜひご理解ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

アカハラ 撮影:芝田恵美様

 

ƒオオアカゲラ 撮影:鶴田美津子様

 

鏡池 撮影:武藤政男様

 

コガラ 撮影:寺田祐治様

 

サンショウクイ 撮影:坂東俊輝様

 

カワウ 撮影:芝田恵美様

 

ƒキビタキ 撮影:鶴田美津子様

 

アオゲラ 撮影:武藤政男様

 

クロツグミ 撮影:寺田祐治様

 

ゴジュウカラ 撮影:坂東俊輝様

 

キセキレイ 撮影:芝田恵美様

 

イカル 撮影:鶴田美津子様

 

ミソサザイ 撮影:武藤政男様

 

キビタキ 撮影:寺田祐治様

 

ミソサザイ 撮影:坂東俊輝様

 

鏡池 撮影:芝田恵美様

 

ノジコ 撮影:鶴田美津子様

 

キビタキ 撮影:武藤政男様

 

コルリ 撮影:寺田祐治様

 

アカハラ 撮影:坂東俊輝様

 

ミズバショウ 撮影:芝田恵美様

 

ゴジュウカラ 撮影:鶴田美津子様

 

ニュウナイスズメ 撮影:寺田祐治様

 

キビタキ 撮影:坂東俊輝様

 

北アルプス 撮影:芝田恵美様

 

サンショウクイ 撮影:鶴田美津子様

 

イカル 撮影:寺田祐治様

 

クロツグミ 撮影:坂東俊輝様

 

ニュウナイスズメ 撮影:坂東俊輝様

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