【ツアー報告】ベストシーズンに巡る夏の北海道 2022年6月26日~29日

(写真:ツメナガセキレイ 撮影:竹村章様)

本州が梅雨時期のため雨を避けて北海道に向かうというのが通例ですが、今年はなぜか本州はすでに梅雨があけて連日の猛暑。一方で北海道には梅雨前線がかかり天候が今一つという逆転現象の中でのツアーとなってしまいました。北海道というとまず梅雨がないというのが一般的な知識としてありますが、実は実際に何年も何年もこの時期の北海道に来た印象としては確かに梅雨のような長雨はないものの、意外と天気がよくない印象があります。このツアーでは移動距離が長いというデメリットはあるものの、夏の北海道での探鳥では絶対に外せない、シマアオジやギンザンマシコ、そして、総数100万羽ともいわれる海鳥が生息する天売島を訪れるなど夏の北海道のこれぞという探鳥地を網羅しているほか、森林の野鳥を観察する行程が全く含まれていないことから、初日には白金温泉付近で森林帯の野鳥も観察できるようにしています。またギンザンマシコ観察に関しては気温上昇と共に起こる陽炎を避けるため、また観光客が増える前に現地を訪れるため早朝便のロープウェイに乗車できるよう日程を調整して企画しています。

26日、前日には群馬県の伊勢崎市で40.2℃を記録するなど6月とは思えない真夏のような陽気が続く中、この日も東京は早朝から真夏のような暑さ。ひとまず羽田空港を予定通りに出発して千歳空港に向かいました。到着後は意外にも曇り空の千歳空港を出発して、この日はまず宿泊地に向かい、途中で立ち寄った道の駅ではやや青空が見える中、巣に餌を運び込むコムクドリや電線に止まっているモズなどを見てからさらに走りホテルに向かうことにしました。ホテルが近づくと十勝岳がきれいに見え、北海道らしい風景が広がります。ホテル到着後は一旦お部屋に入っていただき、その後は再度ご集合いただいてからホテル周辺の森で探鳥をすることにしました。ご集合いただいた後に歩き出そうとすると、いきなり林の中からクマゲラの声が聞えたため、その方向に行ってはみましたが姿はなく、そのため通常の探鳥コーズに戻ることにしました。歩き出すと早速ニュウナイスズメの声が聞こえ、なぜかメス個体ばかりながら複数のニュウナイスズメを見ることができました。滝では一気に涼しい風が吹く中で主役のアオバトが見られ、カワガラスの姿を見た方もいらっしゃいました。さらに歩くと針葉樹の梢で朗々とさえずるオオルリ、さらには森の中からはキビタキのさえずりが聞えていました。するとここで林の中からクマゲラの声が聞えたかと思うと、いきなりクマゲラが飛んできて林に入りました。しばらく見ていると再び飛び立って対岸の林に消えていきました。一旦、その場を離れてさらに進むと林の中から賑やかなシマエナガの声がしたことから見てみると、巣立ったヒナたちを連れた親子のシマエナガに出会うことができました。針葉樹の林から時々出てきては良い場所に止まってくれたことから親鳥だけでなく、珍しく巣立ったヒナの姿も見ることができました。道を戻ると再び川沿いでさえずるオオルリに出会うことができ、今度は良い距離感で美しいブルーを堪能することができ、最後には滝まで行き、夕方に塒に向かって飛んで行くアオバトに期待しましたが、この日は大きな群れが飛翔する様子は観察できず、木々に止まっているアオバトを見て18:30頃に探鳥を終了しました。

27日、この日はギンザンマシコを探しに行く日で、探鳥地に向かうために乗車しなくてはならない旭岳ロープウェイの始発に乗るため早朝にホテルを出発しました。このロープウェイはシーズン前は始発が08:30なのですが、シーズンに入ると早朝便が06:30になります。過去、何度も行っていますが時間が経ち、気温が上がるにつれて陽炎が立ってしまうこと、また観光客が増える前に現地に行きたいことから始発が06:30になるタイミングに合わせてツアー企画しています。深夜に雨が降ったようで雨上がりといった雰囲気の中をひとまず出発しました。途中、残念ながら小雨が降り出してしまい、到着した旭岳ロープウェイ山麓駅は雨模様。それでも予定通り始発に乗って姿見駅に向かいました。到着した姿見駅周辺は雨、風、霧の最悪のコンディションでしたが、準備を進めて第三展望台に向かいました。途中、まだまだ雪が残る道を歩いていくと、周辺にはキバナシャクナゲやエゾノツガザクラといった可憐な花々が見られました。そして第一展望台を過ぎたあたりでいきなり複数のギンザンマシコの姿があり、そのうちの真っ赤なオス個体がわずか数メートルのハイマツに止まってさえずり出してくれました。霧がかかった状況ではありましたが間近にギンザンマシコを見ることができ、その後は第三展望台で観察を開始しました。ただこの日は霧に加えて雨が風に流されるように吹きつけてくることから傘を差しながらの探鳥になってしまいました。ただギンザンマシコは雨の中でもそれなりに動いてくれ、霧の中ではありましたが真っ赤なオス個体が何回か展望台周辺に現れてくれたため午前中で下山することにしました。そしてここからはこのツアーで最も長い移動となりました。まずは途中にあるPAで昼食の時間とし、その後はやや空が青くなってくる中で北上し、その後は一気に雨模様になる中で道の駅で休憩。そしていよいよ原生花園が近づいてくると雨は上がって空が明るくなってきました。まずは付近にある池に立ち寄ると夏羽のアカエリカイツブリと巣立ったヒナの姿があり、親鳥が餌を与えるシーンが見られ、周囲を飛翔するチュウヒ、キタキツネ、エゾシカも見ることができました。そしてこの日最後の探鳥地ではコヨシキリの賑やかなさえずりが聞える中、木道を歩いてみました。ノビタキは巣立ったヒナたちに餌を運ぶために忙しくしていて、付近では当地では珍しいシマセンニュウがさえずり出したため望遠鏡を使って観察することができました。さらに進むとたった1羽ながら黄色が鮮やかなツメナガセキレイにも出会うことができ、最後は道路沿いの電線でさえずっているカッコウを間近に観察してこの日の探鳥を終えました。

28日、この日の早朝はようやく青空が見える原生花園に向かって早朝に出発しました。今年は木道エリアでのシマアオジの観察例がないとのことから、まずは木道エリアを外して道路脇から探鳥スタートすることにしました。まずは当地では数が少ないオオジュリンがコバイケイソウに止まって単調なさえずりを繰り返し、ノビタキはどこを見てもその姿があるといった感じでした。さらに歩くと複数のホオアカの姿も見られ、オオジシギがディスプレイフライトを繰り返し、次第に黄色が鮮やかなツメナガセキレイの姿が目立ってきました。中にはエゾカンゾウの花に止まってくれる個体もいるなど、原野を黄色に染めた見事な咲きっぷりのエゾカンゾウの花と共にその姿を堪能してから一旦、朝食のためホテルに戻りました。朝食後は一気に気温が上がって蒸し暑くなってくる中、今度はサロベツ原生花園の木道エリアを歩きました。バスを降りるとオジロワシが我々の上空を通過し、木道沿いではノビタキ、ホオアカ、数は少ないながらもツメナガセキレイも見ることができ、いよいよ出発しようかと思った時、飛翔する猛禽類が見られました。オジロワシだろうとは思いましたが良く見ると白、黒、黄色が鮮やかなオオワシの成鳥個体で驚きました。センターの方にうかがったところ、越夏する個体がいるとのことで再度驚きました。その後は天売島に向かうため羽幌町にあるフェリーターミナルに向けて出発しました。途中、ずっと曇り空でしたが到着後は空はやや明るく、ひとまずターミナル内で地元の魚介類をふんだんに使った昼食をいただきフェリーおろろん2で天売島を目指しました。この航路でも海鳥たちが見られることから探鳥しながら移動しましたが、この日は予想外にウトウの個体数は少なく、ただ焼尻島を過ぎたあたりからはケイマフリも見られ、ウミガラスをご覧になった方もいらっしゃいました。いよいよフェリーが天売島に到着すると、なんと同時に雨が落ちてきてしまいました。ただ夕食までは少々時間があることから、まずはウミネコのコロニーがある黒崎海岸で2000羽ほどにも膨れ上がったウミネコとそのヒナたちを観察し、その後は夜にも訪れる赤岩展望台に向かいました。展望台まで行くと断崖にハヤブサが止まり、海上に大量に浮いているウトウの群れを見てみると普通ならばなかなか見つけることができないウミガラスがあっという間に、しかも複数で着水している姿を見つけることができ、今年の飛来数が100羽を超えているとの話を裏付けてくれていました。その後はここまでじっくり見ることができていなかったノゴマを探すために移動して、ここからは徒歩探鳥をすることにしました。早速、複数のノゴマがさえずっていたことから探してみると、とにかくあっさりとその姿を見ることができ、わずかな距離にも関わらず複数のノゴマがさえずっている姿を見ることができました。また天売島では初めて見るノスリが電柱に止まっていて、周囲を飛び交うコムクドリ、電線でさえずっているアオジなどを見てから少々早めながら慌ただしく豪華な夕食をいただき19:00からは雨が降る中ではありましたが赤岩展望台にウトウの帰巣風景を観察しに向かいました。この日は雨ながらも蒸し暑さを感じるほどで過去には経験したことがないような気温でした。どうなることかと思いましたが雨でもウトウたちは巣の中にいるヒナたちのために餌となる魚を咥えて次々に帰巣してきていつもと変わらない風景を堪能することができました。

29日、この日は漁船を使ったクルーズのため予定よりもかなり早めに起きて海況をチェックしました。小雨は降っていたものの波は穏やかで風もなかったことから出航の連絡を待っていましたが濃い霧のため出できないとの連絡があり、残念ながら欠航になってしまいました。そのためご集合時に欠航の連絡を済ませ、朝食の時間まで徒歩にて探鳥することにしました。雨の中で外を歩くとオオセグロカモメが芝生に降りて餌を探していて、カワラヒワの親鳥がヒナに餌を与えるシーンなども見られました。また神社までくるとコムクドリのけたたましい鳴き声が聞こえ、見てみると樹洞を使って子育て中のようでした。またアカゲラの姿があったほか、コムクドリを見ている最中にはクロツグミが地上に降りて餌を探すなどノゴマ以外の鳥たちも楽しむことができ、一旦戻って朝食をいただいた後は隣接する海の宇宙館まで歩き、展示されている写真や資料を見たり、お土産を買ったりして時間を過ごし、予定よりも10分ほど遅れて到着したフェリーで海鳥を観察しながら羽幌港を目指し、到着後は千歳空港に向けて出発し帰路につきました。

梅雨を避けてのツアーだったにも関わらず、今回はお天気に泣かされる結果となってしまい残念でした。目玉であったシマアオジは観察可能エリアでは見ることができず、ギンザンマシコは間近に見ることはできたものの霧に遮られる形での観察になってしまいました。また天売島もほぼ終日雨模様で霧のためクルーズもできませんでした。ただ、サロベツではツメナガセキレイやシマセンニュウ、オオジシギ、オオジュリン、ホオアカ、ノビタキといった草原の小鳥たちが楽しめ、天売島では雨模様の中ではありましたがウトウの帰巣風景、またノゴマの姿も堪能することができ、森ではクマゲラ、シマエナガも見ることができました。北海道はバードウォッチャーにとって魅力的な場所です。季節が変われば目的となる鳥も変わり何度訪れても新たな出会いや感動があり飽きることがありません。またの機会にぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ウトウ 撮影:竹村章様

 

ノゴマ 撮影:竹村章様

 

ウミネコ 撮影:竹村章様

 

ホオアカ 撮影:竹村章様

 

コムクドリ 撮影:竹村章様

 

オオジュリン 撮影:竹村章様

 

ノビタキのヒナ 撮影:竹村章様

 

ケイマフリ 撮影:竹村章様

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