【ツアー報告】紅葉の戸隠高原でムギマキに会いたい! 2022年10月20日~21日

(写真:ムギマキ 撮影:坂東俊輝様)

一年を通してバードウォッチングに最適な場所といえばこの戸隠高原でしょう。東京から行くとなると遠い印象があり、バスでは45時間がかかりますが新幹線を使えば東京駅から長野駅までは90分ほどとあっという間に到着することができます。歩くことが多いツアーで疲れるため探鳥後はさっと帰れるよう新幹線利用は体力的にも楽です。秋の目玉は当地に一定期間だけ滞在する旅鳥のムギマキとマミチャジナイです。ここ数年は写真を撮影したいといった需要が増大したこと、また歩く距離を大幅に削減するため、今回からは鏡池までの往復ハイキングを取りやめ、ムギマキをじっくりと観察、撮影する時間を増やすといった運行に変更しました。この秋の戸隠高原は19年前に私がまだまだ助手ではありましたがガイドデビューした思い出深い場所であり、個人的にも一番足を運んでいる探鳥地でもあります。もちろん言うまでもなく大好きな探鳥地なのです。そのため多くの方々に来ていただきたいとは思いますが、探鳥のために歩く道のほとんど全てが木道や小径のため、多人数での探鳥は不可能と判断し我々のツアーは少人数化して企画しています。この時期の信州はお天気が安定せずころころと変わる空模様を見ながらの進行となることが多いのですが、今回はたまたま前日から天候が回復し、珍しく両日ともに快晴予報の中での出発となりました。

20日、この週はずっと天気が芳しくなく、どうなることかと心配していましたが、出発前日からは天気予報がよくなり、この時期のツアーとしては珍しく両日ともに快晴予報となりました。当日は早朝から気持ちの良い快晴の中、東京駅を予定通り出発しました。全国旅行支援のせいからか平日だというのに東京駅は大変な混雑で新幹線もかなりの混み具合でした。東京駅から90分ほどであっさり到着した長野駅も澄み切った快晴。その後は長野駅集合のお客様と合流してから専用バスにて今回の宿泊地のホテルに向かいました。途中、飯綱高原からは見事な紅葉を見ながら進み、1時間ほどでホテルに到着した後は一旦お部屋に入っていただき各自昼食をとっていただきました。標高1000mほどにある現地はかなりひんやりとした印象で気温8℃、正面に見える戸隠山は紅葉で真っ赤に染まっていました。この秋は残念ながらムギマキの飛来状況が芳しくないようで、地元の友人からも良い連絡はありませんでしたが、ひとまず探鳥に出発しました。突き抜けるような快晴、そしてそれに映える紅葉を見ながら歩くといきなりツルマサキに動きまわる小鳥の姿があったことから見ていると、2羽のエゾビタキがせわしなく動き回っては木の実をついばんでいました。長らくこのツアーを催行してきましたが、この時期にエゾビタキを見た記憶はほとんどなく、いきなり驚きの出会いがありました。しばらく見ていましたが、うち1羽には雨覆に白斑があったことから幼鳥のようでした。その後、さらに進むとそこにはいくつかのポイントがあるので周囲を見ていると同様に動き回る小鳥の影があったことから行ってみると幸いにもムギマキのメスと思われる個体がツルマサキの実をついばんでいました。本来であればせわしなく動き回っていることが多いのですが、この個体は比較的枝にじっと止まっている時間が長かったことから珍しく望遠鏡で捉えた状態で観察することができました。しばらく見ているとコガラがやってきたり、キビタキのメスがやってきたりとしばらく楽しむことができ、最後にはキビタキのオスもやってきてくれ、エゾビタキ同様にキビタキの多さにも驚かされました。その後はもう一カ所のポイントにも行ってみることにし、ここでもしばらく観察することにしました。ここでも同様に1羽のムギマキ、2羽のエゾビタキ、数羽のキビタキ、さらにはコガラ、コゲラが頻繁にやってきてはツルマサキの実をついばんでいました。長らくこの時期にツアー企画してきましたがキビタキの多さは驚きで、例年見られるムギマキの数とキビタキの数が逆になったような印象でした。また付近ではアトリの姿もありました。2時間ほど経ったことから、その後はトイレ休憩をはさんで移動しました。池をのぞくとキンクロハジロ、ヒドリガモ、カイツブリが見られ、ここでもツルマサキのポイントを見てみました。ただムギマキの姿はなく、にぎやかなエナガの群れ、そしてハンノキには数羽のアトリの姿がありました。湿原のほうに向かいましたがあまり鳥の姿はなく、この日の最後は別のポイントに向かいました。ここは最近、よくムギマキが見られている場所で数日前にはその姿が見られていたようですが、この日は残念ながらその姿はなく、変わってコガラ、コゲラ、ゴジュウカラ、そしてここでもキビタキのメスが頻繁にやってきていました。ただ夕方になると別の木の実にマミチャジナイのオスがやってきて食べ始めたことから思わぬ形で美しいマミチャジナイを望遠鏡を使ってじっくり観察する幸運があり、さらにはアオゲラもやってきて木の実を食べ始めたことから最後の最後でよい出会いがあり、この日の探鳥を終えることができました。

21日、この日は日の出の時間に合わせて06:00から探鳥しました。この日も幸い快晴だったことから戸隠山、高妻山ともに見事な景観で我々を出迎えてくれました。いつもならば上空を飛んでいくアトリやマヒワ、カシラダカ、ツグミといった冬鳥たちの群れが見られるのですが、この日はそういった雰囲気はなく、ホオジロが寒い中でもよくさえずっていました。するとどこからともなく飛んできたアオゲラが枯れ木に止まり、一旦飛び去ってしまったものの、もう1羽が飛んできてくれました。またフワフワと独得の飛翔でカケスも飛んできて枯れ木に止まったため、わずかな時間ながらその姿を見ることができました。ただホテル周辺のポイントでもムギマキの姿はなく道を戻ることにしましたが、またまたアオゲラが登場して道端の杭に止まってくれたため、この日の朝はとにかくよくアオゲラの姿が見られました。その後は一旦、ホテルに戻って朝食をいただき、再び探鳥に向かいました。この日は前日に行くことができなかったポイントまで行ってみることにしました。ここも過去によくムギマキが見られていますが、この日は複数個所を探してみたもののムギマキの姿はなく、木の実にはコガラ、そしてメボソムシクイがやってきているのみでした。ただ、途中ではキハダの実を食べるマミチャジナイのメスをじっくりと見ることができ、草の実をついばむコガラも間近に見ることができました。その後はさらに歩き、戸隠山と紅葉の見事なコラボレーションを見ていると、どこからともなくノスリがやってきて見事な飛翔を見せてくれました。そして最後は前日に行ったポイントに行って1時間ほど観察してみることにしました。この日は人の数は3倍ほどになっていましたが、やってきている鳥は変わりないようで相変わらずキビタキの多さには驚きました。ムギマキは前日に見た個体と同様のメスがいましたが、あまり頻繁にツルマサキの実にはやってきてはいないようでした。また観察中にはアトリの小群、そして川沿いを飛び回るカワガラスが見られました。そしてこのツアー最後は再び森を歩いてみました。ここにも昔から有名なムギマキのポイントがいくつかあり、ひとまずそこをめぐりながら探してみました。ただここでもムギマキの姿はなく、代わって今回あまり見られていなかった冬鳥のカシラダカ、マヒワ、そして戸隠ではおなじみのゴジュウカラを見ることができ、最後は再び別のポイントに行ってみることにしました。餌台にはゴジュウカラ、ヤマガラが頻繁にやってきていましたが、ツルマサキには小鳥類の姿はなく、時々コゲラがやってきているのみでした。ただこの日も別の木の実にはキビタキのオスとメスがやってきていて、この日は新たにアカハラが木の実を食べにやってきていました。ただ今回は残念ながらムギマキのオスに出会うことはできませんでした。

今回は澄み切った秋空に見事な紅葉が映える中で2日間を過ごすことができ久し振りに秋の戸隠高原を満喫できたように感じました。ただ、冬鳥の飛来状況が今一つといった感じで主役のムギマキもおそらくたった1個体だったようでした。マミチャジナイも移動する群れが毎回見られているものの、今回はそういった様子は見られず木の実を食べる2個体を見るに留まりました。一方でこのツアーではおそらく初となるエゾビタキをたっぷりと見ることができ、繁殖期には多いキビタキも想定外の個体数を見ることができました。次回は新緑に映えるミズバショウやリュウキンカ、カタクリの花々を見つつ、キビタキ、コサメビタキ、サンショウクイ、クロツグミ、コルリ、ミソサザイ、ニュウナイスズメなどの小鳥たちが楽しめる初夏に企画いたしますのでぜひまた戸隠高原にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

エゾビタキ 撮影:竹村章様

 

ノスリ 撮影:坂東俊輝様

 

キビタキ 撮影:竹村章様

 

ゴジュウカラ 撮影:坂東俊輝様

 

アトリ 撮影:竹村章様

 

マミチャジナイ 撮影:坂東俊輝様

 

コガラ 撮影:竹村章様

 

カシラダカ 撮影:坂東俊輝様

 

アオゲラ 撮影:竹村章様

 

キビタキ 撮影:坂東俊輝様

 

コゲラ 撮影:竹村章様

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