【ツアー報告】初夏の富士山 北富士演習場と富士山五合目 2025年6月1日~2日

(写真:キクイタダキ 撮影:石田光史)

2013年6月にユネスコ世界文化遺産に登録された日本の象徴、富士山は野鳥の宝庫としてもよく知られています。亜高山帯の野鳥たちが間近に見られる富士山五合目は特に有名ですが、麓の森林帯はコルリの生息密度が日本一と言ってよい高さで、ほかにもキビタキ、センダイムシクイ、クロツグミ、ヒガラなどさまざまな小鳥たちが生息しています。今回はこれら亜高山帯の野鳥、麓の森林帯の野鳥たちを観察することに加え、決められた日にしか入ることができない北富士演習場内で、オオジシギやノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、カッコウ、コムクドリといった草原性の野鳥たちも探す行程を加えた富士山探鳥に特化したコースを作ってみました。ちょうど梅雨入り前で天候が安定しない時期のため、事前に天気予報をチェックし続けていましたが、前日の雨も上がり、この2日間はすっきりした晴天にはならないものの、概ね天候は良いとの予報が出ていました。

1日、そもそもこのツアーは東京駅前集合を通常のツアーよりも遅い09:00にして、遠方からのお客様にもご参加いただきやすくしています。余裕を持った集合時間にしていることもあってか特に問題なく順調にご集合が完了したことから、予定よりも少々早めに出発して富士山麓を目指しました。バスは中央自動車道を走り、車内ではこのツアーで見られる可能性が高い種の解説をしながら進みました。途中、わずかに渋滞があったもののほぼ予定通りにサービスエリアに到着して、まずは休憩をとりました。空模様は刻々と変わり、曇り空ながらも一時的に日差しがある時間もありました。休憩後は富士山に向かってさらに進み、途中からは山頂は見えなかったものの富士山の姿を車窓から見ることができ、例年に比べて残雪が多いように感じました。到着した現地では薄曇りの空模様の下、少々早めの昼食をとっていただき、同時に観察機材の準備もしていただきました。そしていよいよ北富士演習場に入りました。北富士演習場は基本的には特定の日しか立ち入ることができないため、通常であればここぞとばかりに走り回るオフロードバイクが目立つのですが、この日はどちらかというと普通乗用車が多く、ほとんどが山菜を採っている地元の方のようでした。最初の場所では遠くからホトトギスの声が響き、いきなり飛んできたコムクドリのオスが電線に止まりました。少々歩くと元気のよいノビタキのオスが電線でさえずってくれ、時折、さえずり飛翔も見せてくれました。また周辺では複数のホオアカも見られ、さえずりも頻繁に披露してくれたほか、水たまりで水浴びをする姿も見せてくれました。場所を変えると、ここではノビタキが繁殖中のようでオスとメスが入れ替わり立ち替わりで餌を咥えては飛んできて、草地の中にあると思われる巣に餌を運んでいました。その後は一旦、休憩をとり、その後は再度、北富士演習場に南側から入りました。ここでは電柱にノスリが止まっていて、飛び立った後はいつしか2羽になり飛んでいました。そしてここではようやくコヨシキリのさえずりが聞こえ、探してみるとソングポストで盛んにさえずっている姿をたっぷり見ることができました。その後はそろそろオオジシギのディスプレイフライトが始まるだろうと予想して移動してみました。まずはオオヨシキリがさえずっている姿が見られたものの、なかなかオオジシギの声を聞くことができませんでした。ただ16:00近くになってようやく急上昇、急降下を繰り返しでは羽音を立てているオオジシギが見られ、時には2羽、または3羽で飛び回る姿をしばらく堪能することができました。この日は終日、不安定な空模様ではありましたが雨が落ちてくることはなく、一時的に富士山頂を見ることもでき、結果的には明るめの曇りだったことから草原の鳥を見るには良い条件でした。

2日、この日は早朝に外に出てみると空には一部に青空が見えていて、天気に心配はないように感じられましたが、富士山には雲がかかり山頂の一部が見えている程度でした。予定通り早朝探鳥のためホテルを出発し、まずは富士山麓にある森で探鳥をしました。早朝にもかかわらず鳥のさえずりは少なかったですが、ヒガラが地面におりて採食していました。小道を歩くとカラマツに止まってさえずっているビンズイの姿があり、周辺ではアオゲラも見られましたがコルリのさえずりはかなり遠かったことから場所を変えてみました。ここでも残念ながらコルリのさえずりはなく、代わってキビタキの姿が見られ、鳴きながら林内を行ったり来たりしているアカゲラのつがいが見られました。ただよく見ると餌を咥えていたことから、近くに巣がある可能性があると判断して早々に場所を変えることにしました。時間が過ぎたことからトイレに立ち寄り、その後は各自朝食を購入していただき、その後は富士山五合目に向かう予定でしたが、再び森にいってみました。ここではカラマツに止まってさえずっているノジコ、さらにはホオジロの姿があり、キビタキやコサメビタキも見られましたが、コルリの声は相変わらず遠かったことから諦めて、富士山五合目に向かうことにしました。幸いにもスバルラインに入ると美しい富士山を見ることができ、その後は標高を上げるごとに空模様は刻々と変わってはいましたが、到着した駐車場からは青空が見え、周辺からは早くもメボソムシクイ、ルリビタキ、そしてキクイタダキのさえずりが聞こえてきていました。ひとまず坂道を下ると、周辺からはキクイタダキの声が多く聞かれ、メボソムシクイ、ルリビタキ、ヒガラのさえずりもかなり聞こえてきていました。小さな水場には早くもウソのつがいがやってきていて、鳥の出は良いように感じました。その後もルリビタキのメス、メボソムシクイがやってきて楽しませてくれ、昼前になってようやくキクイタダキのメスがやってきました。普段、下から観察することが多いキクイタダキですが、ここでは上から観察することができるため雌雄の区別がつくことはうれしいものです。そしてこの日は珍しくキクイタダキが多くやってきてくれ、オス、メスが入れ替わり立ち替わりやってきてくれ、たっぷりと観察することができました。さらには地上で餌を探しているホシガラスを間近に見ることができ、ウソのつがいも頻繁にやってきてくれました。そして午後からはヒガラも頻繁に見られ、たった1回だけでしたが青いルリビタキもちらっと姿を見せてくれました。その後も五合目では珍しくカヤクグリの声が聞こえたかと思うと、ハイマツに止まっている姿が見られ、水浴びはしなかったもののホシガラスもやってきてくれ、その姿を間近に見ることもできました。時折、霧が流れてきて肌寒く感じることもありましたが、この日は幸いにも天気が崩れることなく過ごすことができました。

なにかと天候が不安定な時期ですが、今回の富士山ツアーは青空が見える時間も多い2日間で、美しい富士山も堪能でき幸いでした。初日はノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、オオヨシキリ、コムクドリ、ヒバリ、キジ、ノスリなどを楽しむことができ、夕方にたっぷり見ることができたオオジシギのディスプレイフライトは見事でした。翌日はコルリは見られなかったものの、キビタキ、コサメビタキ、アカゲラ、アオゲラ、ビンズイ、ヒガラ、富士山五合目ではキクイタダキとホシガラスをたっぷり見られたほか、ルリビタキ、メボソムシクイ、ウソ、カヤクグリを見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ホシガラス 撮影:石田光史

 

ウソ 撮影:石田光史

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