【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2025年11月23日~24日

(写真:ハクガン 撮影:徳山宏丈様)
今年は四季ならぬ「二季」という単語が知れ渡るほど春と秋が感じられないというおかしな現象が起きていますが、ならばぜひ日本の秋を感じることができる探鳥地の代表、この伊豆沼にお出かけいただきたいものです。伊豆沼はガンたちの姿も見事なのですが、各所で見られる風景にいつも日本の秋を感じています。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は20万羽といわれています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただ探鳥地のほとんどが狭い道のため、我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これにより警戒心の強いガンに近づけるようになるだけでなく、広大な畑地の隅々まで探鳥可能になりました。早朝、夕方の探鳥では天候が重要なのですが、今回は初日は晴れマークが出ていましたが、翌日は終日ほぼ曇りとの予報が出ていました。
23日、この日は前日から現地に留まっていましたが、早朝は雲が多く、意外に天候は良くありませんでした。ただその後は見る見る天候が良くなってきて気温もぐんぐん上がってきていて、この時期としては珍しいほどの陽気になっていました。くりこま高原駅の改札前でご参加のお客様と合流後は一旦、徒歩にてホテルに向かい、まずはロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていますし、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日はまず伊豆沼に行ってみることにしました。ここはだいたい日中にマガンのかなり大きな群れが地上に降りているのですが、この日は想定外に大きな群れが見られ、伊豆沼の湖面にもかなりの数のマガンが着水していて、これらが飛び立っては地上の群れに合流するという行動をしていました。すると道路わきのマガンの群れの中に15羽ほどのハクガンの姿があったことから観察していると、どこからともなく10羽ほどのハクガンが飛んできて群れに加わりました。その後は接近する車両の影響でマガンの群れが右往左往する様子も見られましたが、ハクガンの群れが落ち着いたことからバスに乗ったままで接近して車内から観察、撮影することができました。その後は一気に移動し、休憩を挟んでカリガネを探してみました。毎回、なかなか見つからず苦労するうえ、今年は過去に見たことがない場所にいたのですが、前回の実績があったことから、この日はあっさりとその姿を見ることができ、やや距離があったことからバスを降りて観察しました。ただよく見ると比較的近い畔付近にも数羽のカリガネがいたことから、これらも併せて観察、撮影しました。光線状態が良かったこと、また付近にマガンが多数いたことから、頭のシルエットの違いやくちばしの色の違い、また額の白い部分の形の違いがよくわかり、金色のアイリングも見ることができました。そして時間が迫ってきたことから休憩を挟んで塒入り観察に向かいました。この時間はすでに西の空には薄雲がかかっていて、日没後はどこまで観察が続けられるかといった不安もありましたが、この日はなぜか日没後に西の空がどんどん赤くなってきて独特のグラデーションを描いていきました。そして気が付くと各所からかなり大きなマガン、シジュウカラガンの群れが蕪栗沼めがけて飛んできては着水し、一時的ながら湖上を旋回飛翔したことから、視覚的にも聴覚的にも圧倒されるような時間が続き、毎年毎年見ている光景ながら、毎回毎回異なった感動があり、特にこの日に見た光景は強く印象に残りました。
24日、この日はそもそもの天気予報が終日曇りとのことで、早朝の日の出に関してもほぼ期待していませんでした。ただまだまだ暗いうちに外に出ると意外にも東の空は明るく、一部に星も見えていたことから少々の期待をもってホテルを出発しました。現地に到着すると天気予報はいま一つながらも、それなりの人出があり賑やかだったものの、この日は着水しているガンの群れが遠いのか、ガンたちの声はそれほど多く聞こえていませんでした。日の出時間が近づいても幸い、東の空の雲はそれほど厚くはなく、なんとか日の出を見ることはできましたが、この日は大きな群れは堤防に接近することなく、遠くの水面からそのまま飛び立ってしまったため、間近に迫力あるシーンを見ることはできませんでした。ただそれでも比較的近い距離に着水していた群れがいて、これらが次々に飛び立ったことから、見事な塒立ちシーンをやや長い時間、観察することができました。観察後は一旦ホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発してこの日はまずは化女沼に立ち寄りました。バスを降りると木の実をついばんでいるジョウビタキのオスが見られ、周辺の林からはカケスの声が聞こえたことから待っていると、飛んできたカケスが枯れ木に止まってしばらく姿を見せてくれました。湖面にいるカモ類はこの日も少なく、マガモ、コガモ、カルガモ、ハシビロガモ、カワアイサ、カンムリカイツブリが見られたのみで、戻る途中ではカワラヒワ、シジュウカラ、そして芝生に降りて採食しているカケスの小群も見ることができました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりながらシジュウカラガンを探してみましたが、この日はシジュウカラガンのみの大きな群れはなかなか見つからず、結果的にはマガンの群れに混じっている個体の中でも光線や距離感の良い個体を車内から観察、撮影しました。ここではちょうど畔に乗っている個体、さらには羽繕いをする個体がいたこと、たっぷりと楽しむことができました。その後も周辺をめぐり、途中、コハクチョウの群れに出会い、結果的には最後にもうひと群れに出会うことができ、ここでもマガンの大きな群れに混じっているシジュウカラガンをたっぷりと観察、撮影することができました。その後はトイレに寄ってから昼食を買いに向かいましたが、その途中でも畔上で休んでいるシジュウカラガンに出会うことができました。昼食の時間をとった後はヒシクイのポイントに向かって歩くことにしました。途中、枯れ木に止まっているアカゲラ、けたたましく鳴いているモズが見られ、現地ではかなりの数のヒシクイ、オオハクチョウが群れ、ほかにもチュウヒが飛び、コガモ、ハシビロガモ、カルガモなどのカモ類も見ることができました。そして戻る途中ではちらっとベニマシコが見られたほか、アカゲラ、ホオジロ、オオジュリン、そしてじっと止まっているホオアカに出会うこともできました。その後はわずかに時間があったことから、休憩を挟んで再びカリガネを探してみました。ただこの日は前日に群れていた場所には姿がなく、そのため周辺を探してみましたがなかなか見つからずといった状況ながら、最後の最後でマガンの群れに混じっている5~6羽のカリガネを見ることができ、やや時間が押してしまいましたが、この日の最後は伊豆沼にて塒入りを観察しました。途中、畑地のマガンの群れに混じっている数羽のハクガンは見られましたが、この日は天候が今一つで薄暗くなるのが早く、マガンの圧倒されるような塒入り風景を堪能することはできたものの、ハクガンが塒に戻ってくる様子を見ることはできませんでした。
今回は初日の天気予報はまずまずでしたが翌日は終日曇りとのことで2日目の早朝が心配でしたが、幸いにも日の出も見ることができ、初日の夕景の美しさが特に印象に残った2日間でした。今回も早々にハクガンの群れに出会うことができ、見事な群翔も見ることができました。またカリガネも間近に群れで見ることができ、マガン、シジュウカラガン、ヒシクイは安定的に見られたことから目的を達成することができました。また強風が収まったことから小鳥類の動きが良く、ホオジロ、モズ、オオジュリン、ジョウビタキ、ホオアカ、ツグミ、アカゲラ、カケスなども見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史














