【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2025年11月21日~22日

(写真:マガンの塒立ち 撮影:向井幸雄様)

今年は四季ならぬ「二季」という単語が知れ渡るほど春と秋が感じられないというおかしな現象が起きていますが、ならばぜひ日本の秋を感じることができる探鳥地の代表、この伊豆沼にお出かけいただきたいものです。伊豆沼はガンたちの姿も見事なのですが、各所で見られる風景にいつも日本の秋を感じています。ご存じの通り、この伊豆沼は日本最大のガン類の越冬地で、その総数は20万羽といわれています。伊豆沼の特長は日本で見られる5種類のガン類を一気に見られる可能性が高いことで、このツアーでもマガン、ヒシクイ、シジュウカラガン、カリガネ、ハクガンの5種を探すことを主な目的にしています。また、早朝に塒から飛び立って行く塒立ち風景、そして夕景の中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する塒入り観察の大イベントも楽しみです。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道のため、我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定のこじんまりした形態にしています。これにより警戒心の強いガンに近づけるようになるだけでなく、広大な畑地の隅々まで探鳥可能になりました。早朝、夕方の探鳥では特に天候が重要なのですが、今回は初日が曇り予報ですが、翌日は終日快晴の予報が出ていました。

21日、この日の東京都内は早朝からほぼ快晴でそれほど冷え込んでいる印象はありませんでした。ひとまず新幹線に乗って現地に向かいましたが、福島あたりからは雲が多くなってきて心配になりました。現地に到着する頃には再び青空が増えてきていて期待が持てる状況でした。改札前でご参加のお客様と合流後は一旦、徒歩にてホテルに向かい、まずはロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。伊豆沼、蕪栗沼の探鳥ポイントはどこも道が狭く、また駐車スペースも確保されていないことからこのツアーではマイクロバスを使い、かなり隅々まで探鳥ができるようにしていますし、こういった方法でないと、それぞれのガンたちを探し出すには時間がかかり効率が悪いのです。この日はまず伊豆沼に行ってみることにしました。ここはだいたいマガンのかなり大きな群れが地上に群れていて、この日も続々と集まってきているマガンの群れが見えたことからバスを降りて観察しました。ここではマガンの群れ、ヒシクイ、オオハクチョウの姿はあったものの、期待していたハクガンの姿はありませんでした。ただガンの群れがかなり動いていることからしばらく待っていると、どこからともなく飛んできたハクガンの群れが畑地に降りたのが見えました。そのため探しに行ってみると、幸いにも地上採食している40羽ほどのハクガンを見ることができました。その後は一気に移動し、休憩を挟んでカリガネを探してみました。毎回、なかなか見つからず苦労するのですが、この日はそもそも地上に降りているガン類の数が少なく、また飛び回っている個体も少なかったことからなかなかカリガネに出会うことができず、1時間ほどして結局は全く別の畑地を探してみることにしました。するとここではようやくカリガネに出会うことができ、よく見てみると50羽ほどのかなり大きな群れで採食していました。はじめはや距離があったことからバスを降りて望遠鏡で観察し、その後はバスに乗って少々接近して車内から観察、撮影しました。ただしばらく観察していると次第に警戒心が薄くなってきたことから再びバスを降りて観察、撮影することができました。ただ気が付くとかなり時間が押してしまっていたことから休憩を挟んでガンたちの塒入りを観察しました。そもそもの天気予報は終日曇りとのことで期待していませんでしたが、この時間はそこまで天候は悪くはなく、夕陽を見ることもできていました。16:15頃からは続々とマガンたちが飛んできては湖面に着水し、独特の落雁を見せてくれました。そしてハクガンの群れも一斉に飛び立って美しい群翔を見せてくれ、こちらに向かってきたかと思いましたが、急にコースを変えて再び畑地に降りました。この日はかなり薄暗くなった16:45まで観察を続け、山々を背景に続々と帰ってくるマガンの大群を堪能することができました。

22日、この日は早朝の塒立ちを観察するためホテルを出発して現地に向かいました。幸い天気予報では終日快晴とのことで空を見上げると星が輝いていて良い日の出が望めそうな感じでした。現地に到着すると、天気が良いからか、連休だからなのか、この日はいつもに比べて人出が多く、その車列に少々驚きました。堤防を歩いていくとこの日はマガンの群れが比較的近いようで声がかなり大きく聞こえていてより期待感が高まりました。この時点でも東の空にはほとんど雲はなく真っ赤に染まっていて、奥川に浮いていたマガンが次第に飛び立ってやや近い位置に着水して群れがどんどん大きくなってきました。そして日の出時間よりもやや早い時間にかなり大きな群れが飛び立ち、その後は日の出後の06:30頃からガンたちが次々に飛び立っていく見事な光景と轟音のような羽音、そして鳴き声を楽しむことができました。観察後は一旦ホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発しました。バスを降りると周辺からはカケスの声が聞こえ、木の実をついばんでいるツグミの姿が見られました。ただなぜかカモ類の姿が少なく、湖面にはマガモ、カルガモ、ハシビロガモ、カワアイサが見られたのみでした。林ではアトリの姿が見られ、枯れ木にはカシラダカが止まっていました。また戻る途中ではハイタカの飛翔が見られました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。ガンたちは基本的には日中は地上で採食行動をしていますが、種類によって群れている場所がやや異なるようで、シジュウカラガンに関しては伊豆沼周辺で日中に大きな群れを見ることはできないようです。現地では広大な畑地をめぐりながらシジュウカラガンを探してみましたが、この日はシジュウカラガンのみの大きな群れはなかなか見つからず、各所で見られたマガンの群れに数十羽単位で混じっている個体を観察、撮影しました。数こそ多くはなかったですが、距離感や光線状態はかなり良い条件でした。その後はトイレに寄ると、上空を飛んでいくハイイロチュウヒのオスが見られ、畑地に点々と群れているマガンの群れを見てから一旦、昼食の時間にしました。昼食後はやや風が強く吹く中、ヒシクイのポイントに向かって歩くことにしました。途中、オオハクチョウやマガンが風に乗るように飛び交い、到着するとかなりの数のヒシクイ、オオハクチョウが群れ、そこに混じるマガン、そしてよく見ると9羽のハマシギがせっせと採食していました。反対側の湖面を見るとここでもカモ類の数が極端に少ない印象でしたが、ハシビロガモが群れ、少数ながらホシハジロ、ミコアイサ、オナガガモが見られました。またこの日はマガンの群れが着水と飛翔を繰り返すような行動をしていたことから見ていると、チュウヒが飛び、ハヤブサも現れました。そして付近からベニマシコの声が聞こえたことからしばらく見ていると、間近にあるノイバラに止まってしばらく姿を見せてくれました。探鳥後は少々時間があったことから休憩を挟んで再びカリガネを探してみました。この日はまず前日にカリガネの群れがいた場所に行ってみると、前日よりもかなり近い位置にかなりの数のカリガネが群れて地上採食していました。そのためバス車内から間近にたっぷりと観察、撮影することができました。そしてこの日は天気が良かったことからいつもよりも少々早い15:30に塒入り観察に向うと、この日はいつもよりも早い段階でマガンの群れがやってきていました。そして16:10を過ぎた頃からは各所から続々と塒に帰ってくるガンたちが見られましたが、シジュウカラガンに関しては例年とは異なり、塒に戻ってくるのが遅く、また飛んでくる方向も異なっていました。そしてこの日は周囲がかなり薄暗くなってきた16:45に探鳥を終えました。

今回は初日の天気予報が曇りとのことでしたが、意外にも青空が多く、翌日は終日快晴だったことから結果的には2日間を通して良い条件で探鳥することができました。過去、わずかな数しか渡来していなかったハクガンが、昨年から一気に数を増して見どころが増えましたが、今年はさらに数を増やしていて群翔する様子は見ごたえがありました。またカリガネも間近に群れで見ることができ、マガン、シジュウカラガン、ヒシクイは安定的に見られることから目的を達成することができました。また早朝、夕方の塒入りともに良い条件で堪能できたことも幸いでした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

 

ベニマシコ 撮影:向井幸雄様

 

カリガネ 撮影:向井幸雄様

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