【ツアー報告】東シナ海の秘島・秋の平島 2016年9月23日~30日

(写真:アカハラダカ 撮影:高木信様)

923日 20:15 鹿児島港にお客様が全員集まり、21:10に十島村村営の「フェリーとしま」に乗る。23:00 出港。真っ暗な錦江湾へとフェリーは静かに進むのである。

924日 朝06:00にトカラ列島最北端の口之島に着く。口之島は面積13.33k㎡、周囲20.38km。外はまだ真っ暗である。06:15 まだ薄暗い甲板に出ると、もう、観察されているお客様がいる。中之島が近づくと、数百羽のオオミズナギドリがべた凪の中で必死に羽ばたき、カツオドリ数羽が船に寄ってくる。07:15に中之島に着岸。面積34.47k㎡、周囲31.80km。港の横の海岸にアオアシシギ、イソシギ、クロサギ、アオサギ等がいる。再びフェリーが沖に出ると1,000羽を越えるオオミズナギドリが切れ目なく流れていき、カツオドリが数羽フェリーの周りを飛び回る。08:15に諏訪之瀬島に着岸。面積27.66k㎡、周囲27.15km。島の最高標高の御岳(799m)が噴煙を上げている。カツオドリ数羽を伴って平島に向かう。09:10 平島に上陸。面積2.03k㎡、周囲7.23km、最高標高は御岳(243m)、人口66人(2015年)。平家の落人が最初に降り立った島だから平島という。民宿に荷物を置き、直ぐに鳥見を開始する。ところが、鳥がまったく見られず、渡り途中のツバメ数羽、エゾビタキ数羽、キマユムシクイやムジセッカの声がする程度なのだ。とまっているモズ類を発見。アカモズの亜種シマアカモズかと思ったが全体に赤味が濃い亜種カラアカモズである。14:15にいきなり樹林からアカハラダカが次々と飛び立ち、鷹柱が島のあちこちに出来る。すると、他から平島へかなりの数のアカハラダカが飛来し、島から飛び立った個体と合流してぐちゃぐちゃになり、やがて川のように流れ出し、少なくとも300羽程のアカハラダカが渡って行ったのである。さらに渡らずに島に残ったアカハラダカがあちこちにとまっていてみなさんでじっくりと観察、撮影する。その後も耕作地に亜種サンコウチョウが2羽いてこちらもみなさんで観察、撮影する。その後もあちこちでサンコウチョウの声がするので、遅い午後にたくさん入ってきたようだ。グランドでツメナガセキレイ3羽、キセキレイ1羽を見て、本日は終了。週に3日だけオープンする「あかひげ温泉」を楽しみにしていたのだが、ボイラーの故障で休業していたのである。

925日 朝、06:15 民宿近くの樹林から亜種リュウキュウアカショウビンの声がする。06:30頃にアカハラダカが樹林から次々と飛び立ち、島内に鷹柱がいくつも出来る。鷹柱を双眼鏡で見ると、さらにそれらの高空をアカハラダカが山ほど流れていく。真上をざっと数えただけでも500羽以上はいる。その流れがあちこちに出来ているので数千羽のアカハラダカが渡って行くという感動のシーンが眼の前で繰り広げられたのである。その後、見晴らしのいい運動広場へ行くと、アカハラダカの成鳥雌雄や幼鳥があちこちにとまっている。なかなかとまっているアカハラダカを見る機会は少ないのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。アカヒゲの地鳴きがあちこちでするが、明らかに例年より個体数が多い。奄美諸島より以北のアカヒゲは夏鳥として渡来し、繁殖が終わると南方へ渡るので、この時期に増えるのは、平島よりも北で繁殖を終えた個体が入って来ているのだろう。小さな水芋畑でアメリカウズラシギを発見。どうしてこんな孤島に1羽だけぽつんといるのかが不思議だがみなさんでじっくりと観察、撮影する。その後も島中を歩くが鳥影は薄い。離島は晴れが続くと渡り鳥たちが立ち寄らないので、鳥がまったくいなくなってしまうのだ。遅い午後からエゾビタキが増えてきた。この夜も満天の星空なのである。

926日 朝、06:15 昨日、入ってきたエゾビタキがあちこちにいる。亜種サンショウクイの10羽前後の小群がいくつも入ってきたようで「ヒリヒリ、ヒリヒリ」と賑やかだ。平島は、亜種サンショウクイと亜種リュウキュウサンショウクイの両方が同じ木にとまったりするから面白い。今日もアカハラダカがとまっているのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。ハヤブサ2羽やミサゴも舞っている。平島での探鳥は、一度、全員で島内を廻ってポイントの名称を確認し合い、後は自由行動として、ひたすら歩きまわる私と一緒に歩く人、じっくりと写真撮影の人、のんびり見たい人などに別れ、何か出たら携帯電話で連絡をするというスタイルである。餌をついばむコイカル3羽(雄若2、雌1)を見つけてみなさんで観察、撮影する。すると、島内放送が流れ、悪天候のため今夜出港予定のフェリーとしまは明日に延期と言う。渡りの時期の離島ではよくあることとはいえ、悪天候による延長の宿泊代はお客様負担となるので、皆様に申し訳ない気持ちで伝える。せめて、1日遅れでの出港を祈るのである。午後から南之浜に行くと、フェリーが着岸する港の堤防を波がいとも簡単に越えていた。遥か台湾の南東にある台風17号のうねりがここまで届いていることに改めて自然の脅威に驚くのだ。海岸の牧場でヒバリシギ、セッカ、イソヒヨドリなどを見る。数頭のトカラ山羊の群れが斜面を走っていく。その後、東之浜へ行くが怒涛の波が打ちつけていて海には近づけない。再び、千年ガジュマルへ行く。アカヒゲの地鳴きがあちこちでするが、なかなか姿をみせない。夕方、曇ってきたので期待したが、この夜も満天の星空なのである。

927日 朝から晴天。鳥たちはほとんど抜けたようで鳥影はますます薄くなる。新たにアマサギ、アオサギ、クサシギが入ったくらいである。昨日、入ったコイカル3羽は今日もいてみなさんでじっくりと観察、撮影する。さらに午後は、カラムクドリ雌を発見して観察、撮影する。千年ガジュマルでツツドリがいて盛り上がる。丁度「昨年、ここにオオジュウイチがいたんですよ」と話していたとこだったので焦ってしまった。午後、メジロの小群がいくつも入って来てあちこちで見られる。脇の茶色のメジロがいるので、チョウセンメジロがいないかとドキドキしながら11羽を全てチェックしたが亜種メジロであった。さらに遅い午後、ツバメが飛来し、島のあちこちを飛び回り、そのままどんどん島から出ていく。これも150羽以上いたが全てツバメであった。でも、ほとんど鳥がいなかったので、ツバメでも何でも鳥がいると嬉しいのである。島内放送が流れ、フェリーとしまは今夜23時に出港するという。1日遅れで帰れそうなのでいろいろな変更をする。この夜は曇天。鳥たちには申し訳ないが雨を期待する。

928日 まだ暗い早朝、土砂降りで目が覚める。06:10 期待に溢れんばかりに外に出たが鳥たちがまったくいなくなり島が静かになった。こんな小さな島でいないのだからどうすることもできないのである。しかし、エゾビタキがちょっとだけ増えている。タシギとチュウサギが新たに増えた。こんな時は、留鳥として生息している、体色の濃い亜種アマミヒヨドリや胸から腹が灰色で脇の褐色がない亜種リュウキュウメジロなどを見て楽しむ。とまっているアカハラダカの幼鳥を発見してみなさんでじっくりと観察、撮影する。すると、成鳥の雌が我々の頭上を飛び向かいの枯木にとまる。やがて、2羽で旋回上昇した後、南方向へと流れていく。誰かが「群れから遅れた子供を連れて来たお母さんかな?」と言うので、ついつい私もそうかもしれないなぁと思ってしまう。遅い午後、メジロがたくさん入ってきた。再び、チョウセンメジロがいないかとドキドキしながら11羽を全てチェックしたが夢に終わった。この夜も満天の星空なのである。

929日、朝、06:10 やはり鳥は少ないが、上空をツバメが次々に流れていき、サンショウクイ、メジロ、ウグイスなどの数が増えている。ぎりぎりまで民宿の周囲で鳥を見てから、急いで準備をする。9:40 「フェリーとしま」は東之浜港を出港。平島を出ると直ぐにカツオドリがフェリーに付いてくる。諏訪之瀬島から中之島へ向かう途中では、カツオドリが14羽も付いてきて次々にダイビングをするシーンは圧巻であった。その後もオオミズナギドリ、カツオドリやゴンドウクジラ類の群れなどを楽しみながら19:40に鹿児島港南埠頭に着岸したのである。とにかく、よく歩いた5日間でした。皆様お疲れ様でした。            

宮島仁

アメリカウズラシギ 撮影:高木信様

アメリカウズラシギ 撮影:高木信様

 

アカハラダカ 撮影:高木信様

アカハラダカ 撮影:高木信様

 

カラムクドリ 撮影:高木信様

カラムクドリ 撮影:高木信様

 

アカハラダカ 撮影:高木信様

アカハラダカ 撮影:高木信様

 

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