【ツアー報告】深山に棲むクマタカに会いたい! 2017年3月4日

(写真:クマタカ 撮影:小倉彰様)

イヌワシと並んで人気の高い大型猛禽類、クマタカとの出会いに期待する早春恒例の日帰りバスツアーです。クマタカは深い山奥に生息し、主に待ち伏せ型の狩りをすることから観察することが難しく、イヌワシ同様に長時間の定点観察しか観察の方法がありません。今回は日帰りツアーとしては珍しい定点観察という手法でクマタカを狙います。観察には天気が最も重要なのですが、幸いこの日は晴れマークが並び、暖かで穏やかな1日になるとの天気予報だったためまずは一安心して現地に向かいました。

4日、予定よりも10分ほど早く東京駅前を出発することができましたが、この日は土曜日ということもあってか高速道路はどこも事故渋滞が発生していました。そのため比較的流れるコースに変更して大回りで現地に向かうことにしました。結果的にはそもそも走る予定だったコースが昼前まで渋滞していましたから、変更したことは大成功で、30分ほど多く時間がかかってしまいましたが無事現地に到着することができました。現地は見事な青空で気温も上がりつつあることから条件はほぼ完璧でした。観察機材を準備して空を見上げると早速1羽のクマタカが旋回飛翔を見せてくれました。一旦稜線に消えましたがすぐに稜線低く飛び出し、そのまま流れるように大木の横木に止まりました。距離があることから望遠鏡を使ってまずは止まっているクマタカの姿を観察していただきました。その後、この個体は一旦稜線奥に消えてしまいましたが、今度は反対側の稜線上を舞う別個体のクマタカが現れ、しばらくの間飛翔型を見せてくれました。その後は遠くに見える何本かの高圧鉄塔に止まる姿や高圧鉄塔上で交尾する様子が観察できました。昼前後にはクマタカの出現が止まってしまいましたが、午後に入ると再び行動が活発になり、遠くの高圧鉄塔付近でゆらゆらと舞っていた2羽のクマタカのほかにもう1個体の若いクマタカが出現し、3羽が絡み合うように飛翔する様子が観察できました。若い個体は胴体がほぼ純白のためかなり白っぽく見え、見ているとどうやら成鳥個体に追われているようで執拗に攻撃を受けていました。この個体は一旦稜線に消えましたが再び1羽が登場して高圧鉄塔に止まりました。するともう1羽がどこからともなくやってきて再び交尾をしていました。そして最後はそのうちの1羽が旋回飛翔しながらどんどん上昇し、最後は我々の真上で見事な飛翔を見せてくれました。翼開長こそトビとそれほど変わりませんが、大きく膨らんだ次列風切が見事なカーブを描き、風切にある横斑が美しく、尾羽にある帯状の模様も見事でした。クマタカ観察は予定通り15:00に終了し、その後は帰路につきましたが、最後に途中にある公園で探鳥しました。池では北帰行前のコガモがより美しくなり、林ではヤマガラ、シジュウカラの声が聞こえ、地面ではアオジが採食していました。さらに奥まで歩いて行くと十数羽のカシラダカが地上採食し、付近では今年各所で見られたアトリの姿もありました。もうこの時期になるとカシラダカもアトリもオスは頭部の黒みが増して、めりはりの効いた姿になっていて春を思わせるシーンでした。ほかにもそれらを狙うオオタカが間近に止まったり、ルリビタキの姿があったりと僅かな時間ながら公園散策を楽しんでツアーを締めくくりました。

早春恒例のクマタカとの出会いに期待した日帰りツアーでしたが、好天に恵まれたこともあり、クマタカの出現は予想以上の回数でした。雨の場合は予定変更をしなくてはならないという運試しのような企画だったことから、この好天は嬉しいものでした。一年で最も活発に動き回る時期であることを裏付けるように、飛翔、ディスプレイ、争い、交尾などさまざまなシーンが見られ、深い山奥に棲み、なかなか出会うことができないクマタカの生活の一端を見ることができました。この度はお疲れ様でした。

 石田光史

クマタカ

 

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