【ツアー報告】アホウドリに会いたい!東京~八丈島航路 2017年3月22日~23日
(写真:アホウドリ 撮影:中山司様)
地球上に4000羽ほどしか生息していない国の特別天然記念物アホウドリ。繁殖期後期にあたるこの時期は成鳥個体は餌を求めて行動範囲を広げるようで、伊豆諸島近海の海上で頻繁に見かけるようになります。冬季ももちろん見られるのですが、海況が悪いことが多いため比較的海況が安定するこの時期にツアーを企画しています。とはいっても必ずしも海況の良い状況が続くわけではなく、実際にこの時期の欠航は珍しくありません。今回も低気圧の接近による海況悪化で前日は欠航でした。そのため出発当日も早朝は波が高く出発できるのか心配でしたが、海況は次第に良くなる方向だったため条件付きながら出発できることになりました。
22日、集合場所の竹芝桟橋は平日にもかかわらず大島に向かう学生たちでごった返していました。ただ大島に向かう船が出た後はすっかり静かになり21:30の集合時はいつもの風景になっていました。ご集合時は資料の配布、トラベルイヤホンの説明、アホウドリ観察に関しての重要な海域の解説などを行い22:10に乗船しました。
23日、深夜に船が揺れたことから何度か目が覚め、結局目覚ましが鳴る前の04:30頃にはすっかり目が覚めていました。ただ海が荒れていたにもかかわらず予定よりもやや早い04:45に橘丸は三宅島伊ヶ谷港に着岸しました。これに合わせるように起床しデッキにて準備にとりかかりましたが、早くも数人のお客様がすでに準備を始めていました。まだまだ外は暗かったですが次第に明るくなり05:30には海上を飛ぶオオミズナギドリの姿が見え始めました。ただ天候は天気予報ほどは良くなく、薄曇りといった感じでした。御蔵島に近づいた頃にはカツオドリが飛びまわり、ウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウの姿もありました。御蔵島出港後は距離はあったものの4羽のカツオドリが飛びました。ただ06:40頃からは急に風が冷たくなり、一気に真冬のような寒さになりました。07:05にはオオミズナギドリの群れが乱舞し、07:30にはようやくクロアシアホウドリが見られました。そして八丈島着岸直前の08:25にはどこに向かうのか、ダイサギが飛んでいました。八丈島着岸後は一旦下船してターミナルに向かい20分後には再び乗船して御蔵島に向かいました。八丈島内ではキジバト、アオサギ、ノスリなどの姿がありました。出港後は一気に雰囲気が変わり10:00、10:05、10:10、10:15と立て続けにアホウドリが出現し、10:17、10:30にはクロアシアホウドリも出現してデッキ上は一気に忙しくなってきました。そして10:40には成鳥に近い美しい姿のアホウドリが船体をかすめるように飛翔したことで大歓声に包まれ、観察後には拍手が沸き起こりました。その後も距離はあるもののアホウドリの出現は続き、御蔵島が近づいてきた11:30過ぎにはオオミズナギドリの姿が増えてきました。12:00ころからは海況は一時荒れ模様となり海水が霧雨のように降り注ぐ場面がありました。御蔵島着岸直前には再びカツオドリが現れ、停泊中には突然ミツユビカモメが現れて驚かされました。御蔵島出港後もクロアシアホウドリが2度左舷を飛び、そのうちの1羽がしばらく船を追うようについてきました。三宅島に近づいた頃にはアホウドリの成鳥に近い個体が2度船体脇を飛翔しました。三宅島着岸中はウミウの中に混じるヒメウの姿が見られ出港後は一気に3羽のアホウドリが現れて大忙しになりました。そしてそのうちの1羽が一旦船から離れたものの左舷で付かず離れずといった感じで飛翔し、その後、一気に船体に近づいてきたため左舷に移動してしばらく観察することができました。その後もアホウドリは連続して出現し、15:00に成鳥に近い2個体、15:15には全身褐色の若い個体、さらには15:25には美しい成鳥個体と全身黒褐色で嘴がピンク色のかなり若い個体の2羽が並んで着水している姿が見られました。15:30にはマッコウクジラ2頭の噴気が上がり、その後は16:45までにクロアシアホウドリが5個体見られ、カンムリウミスズメの姿も複数見られました。
今回は頭部に黄色みがあり翼に白色部の多い、比較的成鳥に近いアホウドリとの出会いを主な目的としてツアーを企画しましたが、観察した個体は25個体ほどとなり過去最多でした。長らく航路探鳥をしてきましたが、おおよその時期さえ間違いがなければ、最終的には海況や風の状況が観察結果に大きく影響を与えるような気がしました。海鳥観察は過去のデータが非常に重要です。今後も蓄積したデータを元にさまざまな海域でツアー企画して参りますのでご期待ください。この度は大変お疲れ様でした。
石田光史