【ツアー報告】東シナ海の秘島 秋の平島 2017年9月22日~28日

(写真:アカハラダカ 撮影:中居稔様)

9月22日 20:15 鹿児島港「フェリーとしまターミナル」にお客様が全員集まる。21:00に十島村村営の「フェリーとしま」に乗り、23:00 出港。全員、二等寝台でゆっくりと休んで頂く。

9月23日 朝05:25にトカラ列島最北端の口之島に着くが外はまだ真っ暗である。06:15 まだ薄暗い甲板に出る。中之島が近づくと、数千羽のオオミズナギドリがべた凪の中を流れて行き、カツオドリも数羽混じって飛ぶ。06:40に中之島着岸。港の横の海岸にササゴイ、コサギ、ダイサギ、アオサギ等、港内をクロハラアジサシがふわふわ飛び回る。再びフェリーが沖に出ると数千羽を越えるオオミズナギドリが切れ目なく流れていき、カツオドリが数羽フェリーの周りを飛び回る。07:55に諏訪之瀬島着岸。島の最高標高の御岳(799m)が噴煙を上げているのだが雲に覆われていて見えない。亜種サンショウクイの50~60羽の群れが鳴きながら飛ぶ。09:05 平島に上陸。面積2.03k㎡、周囲7.23km、最高標高は御岳(243m)、人口66人(2015年)。平家の落人が最初に降り立った島だから平島というが、他の島に比べて明らかに平らな島である。大峰荘に荷物を置き、直ぐに鳥見を開始する。鳥は少ないがエゾビタキ、コサメビタキ、サメビタキ、ヤブサメなどがいる。メボソムシクイ系のムシクイがたくさん入ってて、メボソムシクイはコムシクイ、オオムシクイ、メボソムシクイの3種に別れ、外見での識別は野外では困難とされているが声による識別は有効であり、強く大きな声で「ジッ、ジッ」と鳴くのでオオムシクイと判断する。13:00 空を見上げるとアカハラダカの300羽位の鷹柱が島のあちこちに次々に出来て、島から飛び立った個体と合流してさらに数が増し、やがて川のように流れ出し、少なくとも2,000羽程のアカハラダカが渡って行く壮大なシーンをみなさんでじっくりと観察、撮影する。水芋畑に行くとモズ類を発見。全体に赤味が濃い亜種カラアカモズの第一回冬羽である。さらに、ジシギ類が一羽じっとしている。ぱっと見はタシギのようでもありハリオシギのようでもみなさんで悩んだが、飛び立った時に翼後縁の白帯が明瞭なことや短い「ジェッ」という声からタシギであった。サメビタキの幼鳥がいて、一見するとエゾビタキと間違えるので識別ポイントの勉強をする。なかなか下尾筒が見えなくて苦労する。その後、亜種サンショウクイ、シロハラクイナ、チゴハヤブサなどを見て本日は終了。週に3日だけオープンする「あかひげ温泉」で疲れを癒すのである。

9月24日 朝、06:00 まだ薄暗いがアカハラダカは暗いうちから飛び立つので待っていると、06:10頃にアカハラダカが他の島から渡って来た。すると、平島の樹林からも次々と飛び立ち、島内に鷹柱がいくつも出来る。鷹柱を双眼鏡で見ると、それらの高空をアカハラダカが山ほど流れ、さらにそれらの高空もアカハラダカが山ほど流れていく。そして、その流れが09:00頃までずっと切れ目なく続いていたのでいったいどのくらいの数のアカハラダカが渡ったのだろうか。少なくとも1万羽以上のアカハラダカが渡って行くという感動のシーンが眼の前で繰り広げられたのである。島内ではアカヒゲの「チー」という金属的な地鳴きがあちこちでするが、この時期はなかなか姿が見られない。奄美諸島より以北のアカヒゲは夏鳥として渡来し、繁殖が終わると南方へ渡るので、この時期に渡来するのは、平島よりも北で繁殖を終えた個体が入って来ているのだろう。遅い午後からエゾビタキが増えてきて、ツツドリもあちこちで見られるから入って来たようだ。16:45 雨が激しくなってきたので宿に戻ることとする。秋の渡りは春と違って急いで渡らなくてもいいので、雨が続くと鳥が入ってこないのである。

9月25日 朝、06:10 昨夜、キセキレイがたくさん入ってきて島はキセキレイだらけとなる。亜種サンショウクイの約30~50羽の群れが複数飛び回り「ヒリヒリ、ヒリヒリ」と賑やかだ。平島では亜種サンショウクイと亜種リュウキュウサンショウクイの両方が同じ木にとまったりするから面白い。ちなみにトカラ列島では、コノハズクとリュウキュウコノハズクやアオバトとズアカアオバトが同時に見られることもある不思議な島なのだ。アカハラダカの幼鳥がとまっているのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。しかし、あれだけ渡っていたアカハラダカが今日はまったく渡らないので在庫切れのようだ。ずっといるハヤブサのペアが健在でいつもの鉄塔を見張り場としている。コムクドリ、カラムクドリ、ムクドリの混群が飛び回っている。

午後から東之浜に行くと、港の堤防にエリグロアジサシを発見してみなさんでじっくりと観察、撮影。キアシシギ、イソシギ、ササゴイ、クロサギなどを見る。海上をダイサギ約50羽の群れがいくつも渡って行く。南之浜の海岸の牧場でセッカ、イソヒヨドリ、ミサゴなどを見る。ここでは珍鳥のトビが2羽も上空を舞う。夕方、さらにキセキレイが増えて島のあちこちがキセキレイだらけとなる。サメビタキ属3種もツツドリも残っているので夕方まで楽しませてもらう。

9月26日 キセキレイは山ほどいるが、鳥影はますます薄くなる。コムクドリ13羽が新たに入って飛び回り、アマサギも数が増えている。アカハラダカの成鳥雄がとまっているのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。メジロの小群がいくつも入って来てあちこちで見られ、脇の茶色のメジロがいるので、チョウセンメジロがいないかとドキドキしながら1羽1羽を全てチェックしたが亜種メジロであった。

午後、雨の中を出発して、カラムクドリ、コムクドリ、シロハラクイナ、リュウキュウヒクイナなどを見るが、雨脚が強くなり15:20に観察終了。民宿で鳥談義(鳥自慢・撮り自慢)で盛り上がる。

9月27日 朝、暗いうちから頑張ったお客様がアカショウビンと出会った。06:30朝食。民宿の周りでオオルリが囀っている。07:30民宿を出発。08:50「フェリーとしま」は南之浜港を出港。平島を出ると直ぐに別れを告げるかのようにミナミハンドウイルカ15頭がフェリーの横でジャンプをする。諏訪之瀬島から中之島へ向かう途中、カツオドリ12羽がフェリーに付いてきて次々にダイビングをするシーンは圧巻であった。その後もオオミズナギドリ、カツオドリやクロトウゾクカモメなどを楽しみながら18:45に鹿児島港南埠頭に着岸したのである。鳥が少なく、とにかくよく歩いた4日間でした。皆様お疲れ様でした。

宮島 仁

エリグロアジサシ 撮影:中居稔様

 

サメビタキ 撮影:中居稔様

 

アカハラダカ 撮影:中居稔様

 

ツツドリ 撮影:中居稔様

 

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