【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2017年11月10日~12日

(写真:カリガネ 撮影:秦順一様)

晩秋の頃にどうしても外せないのがガン類の越冬地を訪れるこのツアーでしょう。伊豆沼と蕪栗沼周辺は日本最大のガンの越冬地として知られ、その数は驚異の10万羽超え。昨年は13万羽を数えました。そのガン類の群れの迫力は言うまでもありませんが、ここ数年はカリガネ、ハクガン、シジュウカラガンを含むさまざまなガン類が安定的に観察できており、各所で見るどこか懐かしさを感じさせる風景も一見の価値がある探鳥地です。まずはよりじっくりと観察や撮影ができるよう3日間コースでの出発となりました。出発前の天気予報では中日の午前中にやや天候が崩れるということでした。

10日、朝から晴天の東京駅を新幹線で出発してほぼ予定通りに到着しました。到着後は現地集合のお客様と合流して一旦ホテルに向かいました。ホテルでは観察機材等の準備をして早速探鳥に出かけました。我々のツアーは探鳥地の状況を考慮して7名様限定の少人数ツアーとしていることから、かなり細い道にも入って徹底的に鳥を探すことが可能です。また探鳥地のほとんどが畑地であるため道が細く、大型の車両では駐車場所に困ってしまうのですが、こういった問題も合わせて解消しています。まず訪れた伊豆沼ではいきなりオオタカが飛び、数百羽のマガンが群れていました。周辺にはオオハクチョウの群れも見られ、観察していると沼の方から次々にマガンが飛んできてはこの群れに合流するかのような行動をとっていました。そのため青空を背景に飛翔するマガンの姿をじっくりと観察することができました。この日はまず最も手強いカリガネを探しに向かいました。ここでは電柱に止まっているノスリの姿が目立ち、かなり大きなマガンの群が畑地に降りていました。その群れの一つ一つを丁寧に見て行くと複数のカリガネの姿がありました。その中から良い条件で観察できそうな群れを探して最後はゆっくりと接近しながら撮影、観察することができました。この場所はどこも道が狭いことからいきなり少人数ツアーの利点を活かす形となりました。そしてこの日は天気が良かったことからガン類の塒入りを観察しに向かいました。ここでも最も良い場所に行くためには長い距離を歩かなくてはならないのですが、小型車であるためポイントのすぐ下まで行くことができます。この日は雲がなかったことから過去に経験したことがないほど良い条件に恵まれ、見る見るうちに真っ赤に染まって行く夕景をバックに塒に帰ってくるガンたちの声と落雁を楽しむことができ、気がつくと辺りは真っ暗になっていました。

11日、天気予報が当たったようで深夜に降りだした雨が早朝も残っていました。ただ降り方は大したことはなかったので予定通り05:30に出発して伊豆沼に向かいました。この日は残念ながら小雨模様だったことから日の出を見ることはできませんでしたが、沼の奥から大きな群れが飛び立ってやや近い位置に着水した後、餌場となる畑地に向かって飛んで行くダイナミックな光景を見ることができました。朝食後は雨も止んでいたことから再び伊豆沼の畑地に向かいました。この日はマガンの大きな群れは見られませんでしたが、代わってオオヒシクイの姿が目立ちました。その後はようやく見えはじめた青空の下、オオヒシクイのポイントまで歩きました。この頃から強風が吹き始めて大変でしたが泥地で餌を探すオオヒシクイの姿を間近に観察することができ、強風の中で飛ぶオナガガモの群れやチュウヒの姿も堪能することができました。その後はカリガネをもう一度見たいというリクエストがあったことから、昨日に引き続いてカリガネを探しました。この日も各所にマガンの群れが降りていたため、またまたその群れを丁寧に見て行きました。この日はカリガネの姿は見られましたが距離が遠く、いくつかの群れを見ましたが結局良い距離感で観察することはできませんでした。時間もきたことから一旦昼食として午後からはハクガンを探しに向かいました。今年、ハクガンはどうやら2羽が渡来しているとのことで、それを探すにはかなりの困難が予想されました。ただ時間もあることからひとまず過去に観察したポイントを中心に探すことにしました。途中、マガンの群れがいたことから見てみると、その中にシジュウカラガンが混じっていたことから車で近づいて車内から撮影しました。群れの規模が大きかったことから慎重さが求められましたが車内からの観察だったことから良い距離感で観察、撮影することができました。その後は一箇所一箇所丹念に探しましたがなかなかハクガンの姿はなく、時間も過ぎてきたことから今度は戻りながら探してみることにしました。するとある場所に群れているマガンの群れの中に2羽のハクガンの姿がありました。今年は1羽は美しい成鳥でもう1羽はやや灰色がかった幼鳥でした。観察していると群れが飛び立ってしまったため目で追うとやや離れた畑地に折りたため、ゆっくりと近づいて車内から、また車に隠れるようにして観察することができました。ただ時間がすでに夕方に差し掛かっていたことから良い光の中で観察することはできませんでした。

12日、この日は天気予報が良かったことから日の出の光景に期待して05:30に出発して伊豆沼に向かいました。残念ながら日の出が見える方向には雲がかかってしまっていましたが、06:20に大きな群れが一斉に餌場に向かって飛んで行く光景を見ることができました。ただやはりこの時間になっても厚い雲のせいで日の出を見ることはできませんでした。ただその後、雲の切れ間から射す朝日を背景に飛翔するマガンやオオハクチョウの姿を見ることができました。一旦朝食に戻った後は別のポイントに向かいました。ここでは公園の中を歩いて小鳥類を探す予定でしたが、この日は小鳥類の気配がなかったことから時間を早めて移動しました。ここは最近、シジュカラガンの群れが見られるようになったことから毎回訪れていますが、この日も到着後早々にマガンの大きな群れが畑地に降りていたため見てみると、驚いたことにその半数近くがシジュウカラガンでした。おそらく数百羽がいたようで幸い飛翔する姿なども観察することができました。その後は再びハクガンの姿を探して昨日とほぼ同じコースを巡りましたがこの日は残念ながらその姿を見ることができませんでした。一旦昼食としてその後も一箇所だけ見てみましたがやはりハクガンの姿を見ることはできませんでした。そのため一旦戻ることにしましたが、塒入りには時間があったため再度カリガネを見に行きました。この日も同様にマガンの大きな群れがいくつも見られ、中には雑種と思われる見慣れないガン類の姿がありました。ただこの日は幸い道に近い場所に降りているカリガネの姿があったため、時間をかけながらじわじわと近づいて観察、撮影することができました。そして16:00に合わせるように塒入りポイントに向かいました。この日はやや雲があり早々と太陽が隠れてしまいましたが、最後の最後にこのツアー最大の衝撃の場面が待っていました。付近の畑地に降りていた数千羽のマガンの群れが轟音のような羽音と共に一斉に飛び立ち、その群れがそのまま我々のいる土手に向かってきたのです。空いっぱいに広がった群れからはマガン特有の甲高い鳴き声が輪唱のように広がり、視覚的な感動に花を添えてくれているようで、これぞ伊豆沼の底力といった光景を眺めながらツアーを終了することができました。

晩秋の頃には絶対に外せない伊豆沼、蕪栗沼を巡るツアー。今回は3日間だったことから比較的ゆっくりじっくり巡ることができ、撮影のお客様にもお楽しみいただけたのではないでしょうか。おかげさまでマガン、ヒシクイ、ハクガン、カリガネ、シジュウカラガンの5種を見ることができ、合わせて早朝の飛び立ち、そして夕方には美しい夕焼空を背景に落雁を楽しみ、最終日には圧倒されるような群れの飛翔を体感する幸運がありました。今後も晩秋の定番ツアーとして継続して参ります。今後も安定的にこの光景が見られることを祈りたいものです。この度はお疲れ様でした。

石田光史

ハクガン 撮影:宅間保隆様

 

シジュウカラガン 撮影:高木信様

 

カリガネ 撮影:秦順一様

 

カリガネ 撮影:宅間保隆様

 

マガンの塒入り 撮影:高木信様

 

マガン白化個体 撮影:宅間保隆様

 

マガンの塒入り 撮影:高木信様

 

マガンの塒入り 撮影:宅間保隆様

 

ヒシクイ 撮影:高木信様

 

雑種と思われる個体 撮影:宅間保隆様

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