【ツアー報告】冬の道東巡り 2019年2月22日~25日

(写真:シマフクロウ 撮影:富川誠様)

冬季のツアーは盛りだくさんですが、それらの中でもまず外すことができないのが九州とこの道東でしょう。一般的には流氷船から観察するオオワシとオジロワシ、サンクチュアリーでのタンチョウ観察、そしてシマフウロウの4点セットですが、我々のツアーはこれに留まることなく、幻想的なタンチョウの塒の観察、さらには得意分野である海鳥クルーズも組み込み、ほぼここでしか観察できないウミバトをはじめとしたウミスズメ類や人気のコオリガモを間近に観察することを可能にし、チシマウガラスやエゾフクロウ、そしてシマエナガも見られるようコース設定しています。もうここまで凝縮したツアーは他社には作れないレベルと自負しています。今回は事前の天気予報は概ね良く、比較的暖かく穏やかな4日間になるとのことでした。

22日、快晴の羽田空港を予定通り出発して中標津空港に向かいました。着陸直前には窓から一面の雪景色が見られ、いかにも寒そうな印象でしたが、現地は例年に比べて暖かく感じました。この日はシマフクロウ観察に全力を注ぐため、空港から宿に直行し、少しでも早く現地に到着できるようにしました。途中、知床に近づくにつれて海上には真っ白な大陸のように見える流氷があり、冬の知床の雰囲気は十分でした。到着後は一旦お部屋に入っていただき、防寒装備と観察機材を持って観察地に向かいました。到着後は各自準備に取りかかり、後はシマフクロウの登場を待つばかりとなりました。実は厳冬期はシマフクロウが最も見づらい時期にも関わらず、オオワシやタンチョウを見るためバードウォッチャーが世界中から集結するため、シマフクロウの観察場所は大変な混雑となります。ただこの日は思っていたほどの混雑はなく、意外なほどゆっくりと過ごすことができました。そして18:30頃からは過去に聞いたことがないほどの鳴き交わしが始まり、これはラッキーと思いましたがシマフクロウは現れることなく、鳴き交わしは1時間ほどでピタッと止まってしまいました。その後は静寂が続いてしまう最悪の展開になってしまいましたが20:00になり、期待のシマフクロウが暗闇からふわっと音もなく現れて木に止まりました。その後、魚を一匹咥えるとまた音もなく暗闇に消えていきました。結局、出会いはたった1度でしたが、僅かな可能性に賭けるため早めに準備するという思い切った作戦は大成功に終わりました。

23日、前日、びっしりと流氷はありましたが、流氷は風向きによってはあっという間に陸地から離れてしまうため安心とはいきません。そのため心配しながら05:00出発で羅臼港に向かいましたが、案の定、ぱっと見た感じでは流氷は見えず、前日よりもかなり陸地から離れているようでした。そのため出港後は20分程度航行して、ようやく流氷のある場所までやってきました。出発時、空はどんよりとしていましたが、この頃には一部で雲が切れ、空が明るくなってきていました。まずは大量のオオセグロカモメに取り囲まれ、その後は約2時間ほど、オオワシとオジロワシの雄姿を間近に堪能することができました。最後はやや風が出てきたため、ようやく本来の寒さになった感じでしたが流氷観光船にはキャビンがあるため心配はありませんでした。とにかく海上一面に広がる流氷は神秘的で自然の雄大さを実感させてくれるには十分でした。タイミングを逸すると流氷には出会えないわけですから、今回はラッキーだったと言えるでしょう。一旦朝食のために宿に戻った後は草原性の小鳥類を求めて可能性のある場所を全て巡りましたが残念ながら気配すらなく、ただ漁港ではホオジロガモ、ウミアイサ、スズガモ、そして人気のコオリガモがたまたま羽繕いをしていたため、じっくりと観察することができました。その後は休憩をはさんで公園に立ち寄りました。ただここでも小鳥類の気配は少なく、ヒガラ、ハシブトガラ、ヤマガラに出会ったのみでした。そしてこの日の最後のポイントでは今季、チシマシギが見られているとのことで探してみましたがまたまた出会えず、また期待のチシマウガラスの姿もなくガッカリでしたが、しばらくすると1羽のチシマウガラスが飛んできて岩に止まってくれたため、最後の最後でラッキーな出会いがありました。

24日、この日は落石クルーズに乗船するため、早朝から天候や風が心配でしたが窓から外を見ると快晴無風で安心しました。予定通り06:30から朝食をいただき07:30に出発して落石漁港に向かい到着した後はライフジャケットの装着をしていただき08:30出航で11:00まで落石クルーズを行ないました。まずは漁港内でクロガモ、ウミアイサ、スズガモ、ヨシガモなどを漁船だからこその距離感で観察し、その後はいよいよ外洋に出ました。今期はとにかくウミスズメ類が少ないと聞いていましたが、確かに驚くほど数が少なく、通常よく見られるウミガラス類は見られませんでした。ただユルリ島の沖合まで行くと、ようやくケイマフリを頻繁に見かけるようになり、ようやく期待のウミバトにも出会うことができました。また帰路には大量のクロガモ、シノリガモが見られ、コオリガモ、ビロードキンクロのすがたもありました。ただこの日に一番盛り上げてくれたのは岩礁で休むかなりの数のゴマフアザラシと3頭のラッコでした。特にゴマフアザラシをこれだけ大量に見たことがなかったので驚きました。下船後は各自昼食の時間としましたが、なぜか大量のオジロワシとトビが旋回して飛翔していました。その後は再び草原性の小鳥類を探しましたが、僅かにツグミの姿を見るに留まり、そのため過去に小鳥類が見られたことがある場所にも立ち寄ってみましたが、ここでもハシブトガラの姿があっただけでした。そのためこの日は鶴居村にあるサンクチュアリーに向かいました。到着時はタンチョウたちが塒に向かって飛び立って行く時間のため、タンチョウが次々に飛び立ち、雪原では求愛ダンスも見られました。また周辺の林では人気のシマエナガの姿を見ることもできました。

25日、この日はなんとまだまだ月が輝いている早朝にホテルを出てタンチョウの塒に向かいました。オオワシ、オジロワシ、シマフクロウが見られる羅臼町と並んで、とにかく混雑する場所として有名ですが、到着時には思ったほど車は来ておらず拍子抜けするほどでした。気温が下がれば下がるほど良い条件になるというのが当地の定説なのですが、この日は気温がやや高く-10℃だったことが原因だったのでしょう。ただ、明るくなってくるとかなりの数のタンチョウたちが姿を現し、この日は飛んだり跳ねたりとさまざまな動きを見せてくれました。観察後は一旦朝食の時間とし、その後は移動してエゾフクロウを観察しました。この日も幸い、エゾフクロウは可愛らしい姿を見せてくれましたが、我々のツアーでは短時間観察を徹底していることから10分ほど静かに見た後、現地を離れました。そしてその後は再びタンチョウを観察して、このツアーの最後の探鳥地に向かいました。正直、この時点ではどこに行くかは決めていなかったのですが、鶴居村の各所で地面が見えているのを見て、ふと思い立ってある場所に行くことにしました。この時期、小鳥たちはなかなか餌が採れないため地面が露出している場所で餌を採っていることが多く、過去にここでそんな光景を見たことがあったからです。幸い周辺からはハシブトガラの声が聞こえ、続けてまずヤマゲラ、そしてアカゲラ、コゲラ、シロハラゴジュウカラ、さらには地面に降りているミヤマカケス、アトリ、シメ、ツグミ、そしてようやくシマエナガがやってきてくれ盛り上がりました。さらには間近にキバシリがやってきて、続けてオオアカゲラもやってきたので、現地はお祭り騒ぎとなり、その後はシマエナガが何度もやってきて可愛らしい姿を見せてくれツアーを締めくくってくれました。

さて今年の冬の道東巡りは意外とタイミングが難しい流氷の接岸にピタリと合うことができ、見事な流氷とオオワシ、オジロワシを堪能することができました。また万全を期して臨んだシマフクロウにも出会う幸運があったほか、闇夜から響き渡る激しい鳴き交わしも印象的でした。反面、草原性の小鳥類に関しては全く気配がなく残念でした。ただ最後の最後で人気のシマエナガをはじめ、ヤマゲラ、オオアカゲラ、アカゲラ、キバシリ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラ、ミヤマカケスなどが一気に出揃ってくれました。ほかにも落石クルーズではウミバトやケイマフリ、コオリガモ、クロガモ、納沙布岬ではチシマウガラス、雪原で舞うタンチョウ、そして可愛らしいエゾフクロウなど、鳥たちの個体数が少ないながらも目的の野鳥たちがほぼ出そろってくれました。特に知床は年間を通して見どころが多く、さまざまな生き物が楽しめる場所です。また季節を変えてぜひ北海道にお出かけください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

*エゾフクロウの写真は本個体への影響等を考慮し掲載しておりません。

シマエナガ 撮影:富川誠様

 

オジロワシ 撮影:富川誠様

 

チシマウガラス 撮影:富川誠様

 

オオワシ 撮影:富川誠様

 

ミヤマカケス 撮影:富川誠様

 

タンチョウ 撮影:富川誠様

 

コオリガモ 撮影:富川誠様

 

クロガモ 撮影:富川誠様

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