【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2022年5月26日~27日
(写真:ブッポウソウ 撮影:坂東俊輝様)
梅雨入り間近の時期ですが5月末のこの時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すとこういった風景が全く変わらない点は驚きで、それだけに現地の環境にも配慮し、小型バスを使ったかなり小さなツアーにしています。タイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するタニウツギやキリの花も見事な時期です。今回は初日の天候に問題はないとの予報でしたが、深夜から翌日の午前中にかけては雨予報が出ている中での出発となりました。
26日、ほぼ快晴の東京駅前を予定通りに出発して、ひとまず関越自動車道を走りました。午前中はほぼ移動のため、車内では今回のツアーで見られる可能性が高い種について解説しながら進み、途中、サービスエリアに立ち寄り、一時的に曇り空になってはいたものの、その後は見事な青空が見えだして、高原の雰囲気になっていました。翌日の天気予報が芳しくなかったことから、その後は一気に現地を目指し、この日のうちにブッポウソウとチゴモズを狙えるようやや行程を変えることにしました。ますは美しいブナ林に向かうと、早速、上空をハチクマが旋回飛翔していました。到着時にはちょうどお昼前だったことから一旦、昼食の時間としましたが、いきなり林の中からはアカショウビンのさえずりが良い感じで聞こえていました。そのため昼食を一時中断して森に入ってみましたが、すでにその声は聞こえなくなっていました。ただ、周辺ではキビタキが朗々とさえずり、どこからともなく飛んできたサンショウクイが針葉樹のてっぺんに止まっていました。昼食後は早速、チゴモズを探すことにしました。まずは昨年、その姿があった場所に行くことにしました。バスを降りると北信越を代表する紫色のキリの花、ピンク色のタニウツギの花が美しく、周囲からはクロツグミ、ノジコのさえずりが聞こえ、子育て中なのか、餌を咥えたアカゲラが飛び回っていて、遠くの針葉樹のてっぺんではツツドリが鳴いていました。ただ、なかなかチゴモズが現れないため周辺を歩いてみましたが、繁殖中と思われるモズのつがい、そして叫ぶように鳴くオオヨシキリ、梢で鳴くオオルリなどが見られただけでした。そのため過去にチゴモズを観察している別の場所にも行ってみましたが、ここでもしばらく待っても気配はなく、そのためさらにもう一か所行ってみることにしました。ただここでも針葉樹でさえずるノジコなどが見られただけで、しかも天気予報に反して小雨が落ちてきたことからこの場を離れて移動することにしました。ここでは夕方の順光に合わせてブッポウソウを狙いましたが残念ながら天気予報が外れてしまい早くも曇り空に。ただ、早速2羽のブッポウソウが独特の羽ばたきで飛び回り楽しませてくれました。また周辺ではヤマガラ、シジュウカラ、アカゲラの姿があり、薄暗い森の中からはキビタキのさえずりがずっと聞こえていました。そして最後は鳴きながら飛んで行くサシバを見てこの日の探鳥を終えました。
27日、この日は深夜からの雨がかなり激しくなってはいましたが、ひとまず早朝に出発しました。ただし歩きながらの探鳥は無理と判断して前日にブッポウソウを見た場所に行って待ちの探鳥をしてみました。雨が降り続く中、霧も立ち込めてきてしまい視界不良でしたが、ブッポウソウは3個体いるようでした。一旦、宿に戻った後は朝食をいただき、その後出発となりましたがまだまだ雨が激しいことから、それ以外のブッポウソウのポイントに行ってみました。ここでも雨が激しく降っていましたが、飛んでいるブッポウソウの姿を見ることができ、その後は雨が上がることを期待して再びチゴモズを探しに行きました。予報では11:00頃には上がるとのことだったので、さらにもう一か所のブッポウソウのポイントに立ち寄ってみましたが、ここでは残念ながらその姿はなく、ただちょうど観察を終えた頃からは青空が見えはじめ蒸し暑くなってきました。そのためその後は再びチゴモズを探すモードに入りました。ひとまず昨日行った場所に再び行ってみました。この日もクロツグミやノジコ、そしてサンコウチョウのさえずりは聞こえ、梢にはオオルリ、コサメビタキの姿がありましたが、やはりチゴモズの姿はなく、やむを得ずその他のポイントにも行ってみましたが同様に姿を見ることはできませんでした。その後は一旦昼食の時間とし、昼食後は予定していなかったポイントにも行ってみました。ここでも過去にチゴモズの姿を何度か見てはいましたが、この日は気配がなく、それでも針葉樹に止まるサシバの姿を見る機会があり、しばらくするとハチクマのオスが飛んできたかと思うと、メスもやってきて、我々の頭上でつがいで旋回飛翔し始めてくれました。またメスはわずかな時間ながら針葉樹のてっぺんに止まったため、珍しく木に止まっている状態で見ることができました。その後はノジコが複数さえずっている場所があったため、低木に止まってさえずっているレモンイエローの姿を見ることができ、最後は木に止まっていたノスリが飛び立って両翼をやや立てた飛翔形で悠々と旋回飛翔を始めました。観察しているとどこからともなくサシバもやってきて2個体が飛翔する姿をしっかりと観察することができました。そして最後にもう一度、過去にチゴモズを見ている場所に立ち寄ってはみましたが、ここでも気配はなく、今回は残念な結果となってしまいました。
毎年のことではありますが、今回はお天気の心配があり、特に2日目の午前中はほぼ探鳥ができない状況になり残念でした。またここまで継続的に観察できていたチゴモズは声を聞く機会もなく、今回は出会うことができませんでした。どこかに渡ってきてくれていればと願うばかりです。一方、ブッポウソウは思いほのか良く姿を見せてくれ、特に山を背景に飛翔する姿はいつもながら美しく感じました。今回はチゴモズを探すためことに時間を大幅にとったことから、広範囲に探鳥をすることができませんでしたが、当地を代表するサシバ、オオルリ、ノジコ、サンショウクイなどを見ることができ、声だけでしたがアカショウビンやクロツグミ、サンコウチョウのさえずりも聞かれ、間近を飛翔してくれたハチクマのつがい、またサシバ、ノスリの飛翔も印象的でした。鳥の個体数が年々減少しているように感じることは残念ではありますが、当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが今後も細々とでも保たれればと思いました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史