【ツアー報告】固有種と渡りの鳥たち 春の奄美大島 2019年4月12日~14日

奄美大島と言えば、アマミノクロウサギやイボイモリなど様々な奄美大島固有の動植物が見られ、他の島には無い大変特殊な自然環境を形作っています。鳥類ではルリカケス、オーストンオオアカゲラ、アマミヤマシギ、オオトラツグミなど世界的に見てもここだけといった貴重な固有種が生息している島として知られています。今回のツアーでは繁殖期に入り始めたルリカケス、オーストンオオアカゲラ、アカヒゲといった奄美を代表する3種の観察に主眼を置き、その他カラスバト、ズアカアオバト、オオトラツグミ、リュウキュウキビタキなどの留鳥を観察します。

1日目、航空便の関係で今回も大阪からのお客様が先に到着、2時間の時間差で後から東京からのお客様が到着する予定。まずは大阪からのお客様と海岸へシギ・チドリ類を観察に向かいます。天候は18℃北風弱風、良好です。一週間前のツアー時とは少し様子が変わっています。アカアシシギが見られなくなり、セイタカシギが増えています。美しい夏羽を纏ったコオバシギ3羽、赤い頭巾を被ったトウネン、他にもツバメチドリや夏羽のカラシラサギも見られました。14時過ぎには東京からのお客様を迎えに再度空港へ。超満員で荷物の引き取りも大変そうでした。到着遅れやその他でかなり時間を要したため、その後の予定を変更して水田地帯に向かいました。渡り鳥は少ないものの奄美では記録の少ないアカエリヒレアシシギ、ノビタキ、ムネアカタヒバリなどを観察できました。

2日目、早朝探鳥はこのツアーメインの探鳥地である森へ向かいます。天候曇り、気温15℃、ほぼ無風、絶好の探鳥日和です。現地へ向かう林道では先週見られたアマミヤマシギは見られず、明るさにデリケートな種類のため日の出が僅かに早くなったのが原因ではないかと感じる。到着後、早速森に入る。今シーズンここを縄張りにしているアカヒゲが盛んに囀っている。狭い範囲を囀りながら反時計回りでぐるぐると移動していく行動パターンは1週前のツアーで確認済み。最終的にはほとんどの方がこの個体を撮影することができた。同所でルリカケスやオーストンオオアカゲラが飛び交っているが、全員でじっくり観察するまでにはなかなか行きつかない。その後、近くでオーストンオオアカゲラが営巣しているのをお客様のお一人が発見。雄が一生懸命巣穴を掘っているところを全員で観察した。静かにしているとコンコンコンコンと木を削る音が連続し、しばらくすると中に貯まった木屑を捨てに穴から顔を出してくれる。下で見ている私たちには全くお構いなしだ。ルリカケスでも感じることだが、固有種に共通する特徴だろうか、どこか鷹揚な大らかさがある。ホテルに戻り朝食後、今日は一日をかけて島の南部を周る計画。海岸沿いの自然公園に向かう。広いグラウンドではアオジ、ムネアカタヒバリ、リュウキュウツバメを観察。横を流れる川沿いでは幸運にもシロハラクイナを観察されたお客様もいた。山肌のルリカケス、サシバ、チラチラとしか現れないカラスバト等。戻ったグラウンドでは最後に2羽のコホオアカを観察できた。昼食後は公園に向かう。最初のスタジアムでは今島で盛んなグラウンドゴルフが開催されており、鳥が居るか心配したが片隅にマミジロタヒバリ、ホオジロハクセキレイ、今回は美しいタイワンハクセキレイも加わっていた。その後、ズアカアオバト、クサシギ、カワセミなどを観察。残念だったのは一週間前までいたムクドリ類の群れが去ってしまっていたこと。渡りの季節はどんどん進んでいくのを実感した。ホテルまでの帰り道は北部海岸沿いに約1時間20分の道程。丁度疲労が蓄積してくるタイミングのため、車中でゆっくりしていただいた。ホテルのある名瀬市内に入る直前、小さな公園に初めて寄ってみたが、運悪く園内工事中、休日で人でも多く、リュウキュウハシブトガラスを観察しただけにとどまった。ここでは海上遠くにトカラ列島最南端にある横当(よこあて)島がお椀を伏せたような姿を見せていた。

3日目、いよいよ最終日。気温19℃。曇り。早朝探鳥は今回のツアー第二目標の探鳥地である林道です。予報通り昼過ぎまで雨は降らないでくれという期待は見事に裏切られ、ホテル出発早々に小雨が降り始め、その後強くなってきた。今回は前週よりもさらに奥までバスを乗り入れる。雨降りの中の探鳥、皆さん傘をさし、カッパを着こみ黙々と歩きます。薄暗い林道、シロハラらしきものは飛び立つものの、本命は現れません。折り返しまでの中間地点でオオトラツグミの囀りが聞こえてきました。かなり近くではっきりと「キョロン、キョロン」特徴ある声が聞こえてきます。皆さん耳をすませます。その後、折り返し地点までは静かな状況、現地ガイドが帰り道も出現の可能性があるので注意してくださいと教えてくれます。少し進んだところ、林道上で何か動いた!オオトラツグミだ!道と脇の雑草との境目を縫うようにゆったりと歩いている。前方列の者は座り込んで対処するも、総勢20名では全員に行き渡らない。一分あったかどうか、その後谷合に姿を消した。どうにか写真に収めた猛者もいらっしゃった。その後、リュウキュウキビタキの囀りを確認し、ホテルに戻った。ツアー最終日朝食後の探鳥地はお客様に相談し、再度、森で探鳥することに。昼までの約2時間をゆっくり過ごしていただき、ルリカケス、アカヒゲ、オーストンオオアカゲラを思い思いに楽しんでいただいた。

最後になりますが、今回のツアーで奄美大島特有の大自然を十分に楽しんでいただけたでしょうか。固有種と春の渡り鳥を含め、最終的に73種類の鳥たちに出会うことができました。今回のツアーでは奄美大島の固有種である、ルリカケス、オーストンオオアカゲラ、アカヒゲを観察。また、運よくオオトラツグミに遭遇できたお客様もいらっしゃいました。一方、数多くのシギ・チドリ類やタイワンハクセキレイ、ムネアカタヒバリ、マミジロタヒバリ等のセキレイ類、他にもカラシラサギやコホオアカ等、春の渡り鳥たちにも遭遇することができました。鳥類だけに限らず、その他アマミノクロウサギに代表される固有の動植物が数多く生息する奄美大島には世界的にも例を見ない特異な大自然が広がっています。この感動をもっとたくさんのバドウォッチャーに味わっていただきたいと感じています。

波多野邦彦

関連記事

ページ上部へ戻る