【ツアー報告】津軽半島最北端の渡り 春の竜飛岬 2019年4月29日~5月2日

(写真:ウタツグミ 撮影:山岸俊文様)

本州も春の渡りの最盛期を迎えるこの時期、バードウォッチャーの多くは離島に向いますが、船に乗って離島に行かなくても小鳥たちの渡りを実感できる場所があります。今回訪れる青森県、津軽半島最北端に位置する竜飛岬、そして周辺の探鳥地は夏鳥、冬鳥、そして小鳥類を狙う猛禽類や水鳥、海鳥、そして迷鳥とさまざまな野鳥が見られるだけでなく、実際に岬から飛び立って行く小鳥たちの姿が見られる貴重な探鳥地です。ただ、なかなかお天気が安定せず、風の岬と呼ばれるように風が強い場所です。今回も天気予報が芳しくない中での出発となりました。

29日、小雨が降りしきる中、東京駅に到着してホームに向いましたが、やはり大型連休中ということもあり新幹線ホームは大混雑でした。ただ、大きなトラブルはなく順調に進み、予定通り新青森駅に到着した後は、現地集合のお客様と合流してから出発しました。残念ながら小雨模様ではありましたがまずは港でテトラポットに並んだウミネコ、オオセグロカモメ、そしてさえずるイソヒヨドリや珍しく高い場所に止まっているキアシシギが見られました。その後は公園、港と巡りながら進めましたが、これといった渡り鳥に出会うことはできず、一旦、トイレ休憩をとり、竜飛岬方向に進めました。ただ、やや時間があったことから寄り道しながら岩礁海岸を走ってみました。できればコクガンが見たかったのですが残念ながらこの日は出会うことができず、その後は竜飛岬に向けて走りました。到着した竜飛岬は幸い強風が吹いてはいなかったため岬の先端まで行ってみることにしました。小鳥類の渡りは主に早朝のため渡りは見られませんでしたが、眼下の海面を見るとウミネコなどのカモメ類が群れながら餌を採る様子が見られ、周囲にはかなりの数のウトウの姿がありました。そして最後はホテル前の草原でさえずるウグイスを観察してこの日の探鳥を終えました。

1日、早朝探鳥を行う予定でしたが、過去に経験したことがない深い濃霧のため探鳥は中止しました。朝食後も濃霧は深く、岬も全く見えないため残念ながら岬での探鳥は諦めました。途中、山道を走り展望台にも立ち寄りましたが全く濃霧が切れる気配はありませんでした。結局、海岸まで行ってようやく視界があり、小雨の中ではありましたが探鳥を行いました。ここでは周囲からクロツグミのさえずりが聞え、枯れ木に止まって歌う姿をじっくりと見ることができました。またヒガラもさえずり、モズやホオジロ、そしてアオジの姿も見られました。その後はキャンプ場方面を歩いてみましたが、ここでは森の中からキビタキ、センダイムシクイ、ヤブサメのさえずりが聞え、浜まで行って見るとイソヒヨドリのペアが求愛行動をしていて、さらにコチドリも早歩きしながら求愛行動をするなど、可愛らしい姿を楽しませてくれました。また海上にはシロエリオオハムの姿があり、どこかで繁殖しているらしいミサゴが大きな枯れ枝を持って飛翔するなど巣作りと思われる行動を見せてくれました。観察していると次第に霧が晴れ、視界が出てきたことから一安心したのですがこの後、再び小雨模様になってしまいました。まず周囲にある沼に向い、ここではキンクロハジロやマガモ、そして群れているヨシガモ、さらには浮き巣で繁殖中のカンムリカイツブリの夏羽を観察することができました。その後は一旦昼食としました。この時間は幸いにも雨が止んでいたことから屋外で昼食を食べることができました。その後、ヨシ原ではさえずっているコジュリン、繁殖行動中のホオアカ、そしてオオジュリンが見られ、対岸の公園では遠くの湿地帯で餌を探すツルシギの夏羽の姿がありました。そして最後は草原に向いました。ここでは枯れ木に止まるアカゲラやモズ、そしてキジの声が響いていましたが、鳥の姿は少ない印象でした。この周辺は松林のため、昨年はかなりの数のイスカが見られたため期待しましたが今回は声を聞くこともできませんでした。この日は一度も竜飛岬に行けていなかったため、この後は岬に行きたかったのですが、なんとこの時間になっても濃霧が出ているとのことでどうするか悩みましたが、標高を下げれば霧はないだろうということで麓に行ってみることにしました。どんどん進んでいくと予想通り霧はなく、海が見える場所では夏羽のシロエリオオハムやウトウが見られました。そして最後に立ち寄った場所ではいきなり桜の木でクロツグミが朗々と歌い、よく聞いてみるとウグイスの谷渡りを混ぜてさえずっていました。そして芝生にツグミが群れていて良い雰囲気だったためさらに探すとツグミのほかにアカハラ、マミチャジナイと狙っていたメンバーが揃い、その中にツグミよりもやや小さなツグミ類が混じっていました。このツアーでは過去、マダラチュウヒやケアシノスリ、シロハラホオジロなど様々な珍鳥に出会ってきましたが、この日に出会った小型のツグミ類はなんとウタツグミでした。国内では数例しかない野鳥が雨と霧の中、最後に我々を待っていてくれていたのでした。

2日、深夜からの強風と明け方の激しい雨が心配でしたが待ちに待った青空の下、早朝に外に出ました。竜飛岬特有の強風はありましたがひとまずウグイスのさえずりを聞きながら探鳥を行いました。風が強いことから森の中の道を歩きましたが小鳥の気配は少なく、そのため岬を見渡せる場所までくると強風の中、岬に向かっていくマヒワやメジロの群れが飛び、ほかにもニュウナイスズメやシジュウカラの群れが見られました。またそれらを狙うハイタカやツミ、ハヤブサが飛び交い、特にハヤブサの急降下は見事でした。一旦朝食のため戻った後はいよいよ竜飛岬からの探鳥に向いました。風があるのはいつものことなのでそれほど気にしていませんでしたが、現地につくと意外にも小鳥類の動きが悪く、1時間ほど滞在しましたが残念ながら小鳥類の大きな渡り風景を観察することはできませんでした。しかもなぜかまた雨が降り出してしまい、やむを得ずまたまた林道に向かうことにしました。川沿いではヤブサメがさえずり、昨日、ウタツグミが見られた場所は残念ながら鳥影は少なく、アオジやホオジロがいたのみでした。そして最後は公園まで行き、ここでは雨を避けて屋根がある場所から観察し、岩礁で繁殖しているウミネコやオオセグロカモメ、そして海上を泳ぎ回る夏羽のシロエリオオハムの姿を観察して終了しました。結局この日もほぼ雨が降り続く不運があり、さらに青森市内に近づくと天候は回復したものの、再び強風が吹き荒れ、帰りの新幹線が一時不通になるアクシデントまでありました。

さて、今回は霧、雨、風の3日間となってしまい、メイン探鳥地の竜飛岬での探鳥がほとんどできない状況になってしまい残念でした。ただ、少なからず小鳥類が岬を飛び回る様子を見ることができたほか、それらを狙って岬に集まってくるオオタカ、ハイタカ、ツミ、ハヤブサが見られました。そしてこのツアーでは毎回のように渡り途中の珍鳥に出会っているのですが、今回は国内での記録が極めて少ないウタツグミに出会う幸運がありました。ツアー全体としてはほぼ目的が達成できず残念な点ばかりでしたが、たった一度の幸運に救われた感じがしました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

マミチャジナイ 撮影:山岸俊文様

 

ハイタカ 撮影:山岸俊文様

 

キビタキ 撮影:山岸俊文様

 

ニュウナイスズメ 撮影:山岸俊文様

 

ウタツグミ 撮影:山岸俊文様

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