【ツアー報告】初夏の上高地と乗鞍畳平ハイキング 2019年5月26日~28日

(写真:ライチョウ 撮影:鈴木利幸様)

5月26日:快晴で真夏を思わせる暑さの中、新宿駅から特急列車に乗車し予定通り12時前松本駅に到着、同駅でチャーターしたバスで乗鞍高原に向かいました。松本駅からの途中車内ではこれから期待される鳥達について簡単な解説を行い予習していただきました。1時間半程で乗鞍高原の宿に到着、早々機材を準備していただき付近のポイントに移動して観察を開始しました。天気は良好ですが気温がやや高い中、針葉樹の林をゆっくり歩いてゆくと亜高山帯の代表といえるヒガラやコガラが現れ、エゾムシクイの金属的な囀りも聞こえてきます。カラマツの梢で囀るヒガラをじっくり観察し、ゴジュウカラが木の幹を素早く動き回る姿を見せてくれました。その後登り道を折り返すと、針葉樹の中にルリビタキのオスが美しい姿を見せてくれ、暫くするとメスも現れました。その後舗装道路を離れスキー場ゲレンデ内にある歩道を歩くと、付近の森から「ホーイチエチエ」と特徴のあるクロジの囀りが聞こえましたが、姿は確認できませんでした。その後バスで別なポイントに移動し、アカゲラやカケスなどを確認し宿に戻りました。宿の周辺ではイカルの囀りが、またカッコウやホトトギスの声も遠くから聞こえてきました。今回宿泊した宿は家族的な雰囲気があり、お風呂はやや白濁した源泉かけ流しの温泉で体の芯から温まり、夕食も地場の新鮮な山菜や素材を存分に使ったもので、皆様ご満足頂けたと思います。

5月27日:本日も快晴で5時に宿を出て早朝の観察を行いました。近くの人家周辺では鮮やかな黄色をしたキセキレイペアーが巣材を咥え鳴き交わしていました。小さな沢に沿った道を進んでゆくと、木の梢で囀るカッコウやオオルリを発見し望遠鏡を通して楽しみました。さらに進むと下笹が茂った林からコルリの囀りが響き、近づいてゆくと「チッチッチッ・・」という独特な前奏もはっきり聞こえました。距離が比較的近かったため、暫らく全員でその姿を探しましたが、残念ながら確認することができませんでした。宿の近くまで戻ると乗鞍岳が美しい姿を朝日の中で見せてくれました。7時頃宿に戻り、朝食後チャーターバスで安房峠道路・乗鞍スカイラインを経由し乗鞍岳畳平に向かいました。天候は快晴で途中車窓からは槍ヶ岳や奥穂高岳など穂高連峰の雄大な景色を楽しむことが出来ました。畳平駐車場ではイワツバメが上空を飛び回り、ハイマツの上にカヤクグリが姿を現してくれました。ライチョウ狙いのポイントは標高差数十メートルの急斜面登山道を登らなくてはならないため、一部お客様はご希望により登らず下で残ることになりました。このポイントへの急斜面を頑張って登りきり、ピークに近い平坦な場所で暫く待機することにしました。このピークを越えた先もハイマツの中に登山道が続いており、こちらも偵察しましたがライチョウの姿はありません。このポイントで40~50分程粘りましたが、ここ場所を諦め別のポイントに移動することも選択肢として考慮しつつ下山を開始することにしました。下り始めて間もなく、すぐ近くのハイマツ下部からライチョウのオスが現れ、近くの岩に登りじっと佇みました。その距離は5ⅿ、肉眼で目の上にある赤い肉冠もはっきり見えるまさに感動の出会いとなりました。暫くするとハイマツの下から今度はメスが姿を現し、地味な保護色ながら黒と金色の混じった羽毛とやさしい顔つきが印象的でした。メスは間もなくハイマツの下に入り、一方オスはどんどん私達に近づきその距離は3ⅿ程になってから小さく「グルグルギギッ」といった声を出しメスに続いて消えました。このピークを下ると、先に下山していたお二人のお客様から合図があり、やや距離が離れた中腹の岩場に別のオスが1羽とまっている姿が確認できました。全員下山した後、待機していたお客様達も含めこの岩場の個体を望遠鏡でじっくり観察することができました。待機していたお客様はイワヒバリを至近距離で観察できたとのことでしたが、この直後にホシガラスが上空を通過してくれました。畳平でこの場所のメインとなるライチョウを十分観察できたことから早めの昼食を取り、上高地へ向かうことにしました。畳平から1時間程で上高地に到着、バス停から10分ほどの移動で宿に着き、機材を準備して14時半頃から観察に向かいました。森の小道を歩くとヒガラ、コガラ、メボソムシクイなどが迎えてくれ、キバシリやコサメビタキも近い距離で出現しました。野草もニリンソウが道路際を埋め尽くすように咲き、ミツバツチグリ、シロバナエンレイソウ、ツバメオモト、エゾムラサキなどが美しく開花していました。途中の森では至近距離でニホンザルの群れが現れ、歩道を歩いたり木に登り若葉を食べたり母猿にしがみつく可愛い子ザルも見ることができました。お目当てのコマドリのポイントで暫く粘りましたが、囀りの距離が遠くまた単発でその姿を見ることはできませんでした。その後折り返して引き返す途中でミソサザイや河童橋付近ではカワガラスが現れてくれました。宿の夕食は地の食材が満載で、山菜・新鮮野菜・信州サーモンの刺身や信州牛のみそ焼きなどバランスのとれた料理が並び、〆の蕎麦やデザートも加わり沢山歩いたお客様の疲れを癒すものだったと思います。

5月28日:当日は天候が崩れる予報でしたが、本格的な降り始めが9時過ぎとの予報だったため、予定通り5時に宿を出発し昨日の午後と同じコースを辿りながら早朝探鳥を行いました。しかし歩き始めてまもなくぽつぽつ降り出した雨はその後も降り続きました。雨が降ると小鳥の鳴き声は極端に少なくなり、お目当てのコマドリのポイントでもかなり2~3ヶ所遠い距離から囀りが聞こえてきますが単発でした。この場所では近くで囀るキビタキを観察しながら30分程待機しましたが、小雨がふり続き近い距離で囀る個体が現れないため一旦宿に戻ることにしました。7時半から朝食を取り、天候の様子を見るため出発時間を遅らせ9時としました。しかし出発時刻でも小雨は降り続き、数名のお客様はご希望もあり宿で待機することになりました。出発組も最初に雨宿りも兼ね上高地ビジターセンターに立ち寄っていただき、展示物や上高地の自然を写したビデオ等をご覧いただきました。建物周辺を散策していたお客様がミソサザイを近い距離で撮影されていたため、傘を差しながら少し歩いてみることにしました。キャンプ場にあるケビン裏側に回ると地面の上をオスのルリビタキが歩いており、付近でメスも現れました。ルリビタキ観察中木の幹にキバシリが現れ、至近距離で観察することができました。そのうちビジターセンター付近からコマドリの囀りが聞こえてきました。鳴き声はセンター脇にある笹薮から聞こえてくるため、雨のあたらないセンターの軒先を借りてこの笹薮の脇で待機しました。この場所で40分ほど粘りましたが、囀りは近い場所から聞こえるにもかかわらず藪の下を動き回っているようで、目視できる場所に現れることはありませんでした。残念ながらここで鳥の観察は時間切れとなり、宿へ戻り荷物整理をして帰路につきました。

今回のツアーは普段観察することがない亜高山~高山帯に生息する鳥達を楽しんでいただきました。ライチョウ、コマドリのツアー2枚看板のうちコマドリは悪天候の影響もあり残念な結果となりましたが、ライチョウはじっくり観察していただきました。またオオルリ、キビタキ、ルリビタキなどの姿、鳴き声も美しい鳥ばかりでなくキバシリ、コサメビタキなど地味ですが味わいのある鳥達とも出会うことができました。姿は確認できませんでしたがコマドリ、コルリ、クロジ、エゾムシクイといった特徴があり美しい囀りを間近で聞いていただきました。お客様の1日当たり歩行が2万歩を超えた日もあり、また雨天の中も含め沢山歩いていただき大変お疲れさまでした。最後に、この度はツアーにご参加いただき誠にありがとうございました。

小島久佳

カヤクグリ 撮影:鈴木利幸様

 

イワヒバリ 撮影:鈴木利幸様

 

ゴジュウカラ 撮影:鈴木利幸様

 

オオルリ 撮影:鈴木利幸様

 

ライチョウ 撮影:鈴木利幸様

 

キバシリ 撮影:鈴木利幸様

 

ヒガラ 撮影:鈴木利幸様

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