【ツアー報告】出水・諫早・有明海 冬の九州縦断 2020年1月12日~14日

(写真:アネハヅル 撮影:小林恒勝様)

九州縦断ツアーは今シーズン3本建て。今年から新たに長崎県諫早干拓を加え、冬の九州三大探鳥地である、鹿児島県出水、長崎県諫早、佐賀県東与賀を訪れます。まず初日の出水では今シーズン15,000羽を超えるツルの大群を観察。マナヅル、ナベヅル、クロヅル、カナダヅルを始め、今年は14年ぶりに飛来したアネハヅル成鳥を観察します。二日目の長崎県諫早では国内唯一の定期飛来地になっているナベコウを探し、広大なアシ原上を飛翔するチュウヒ、ハイイロチュウヒほかタゲリ、ホシムクドリなどを観察します。最終日の佐賀県東与賀では干潟に群れる数千羽のシギ・チドリ類やツクシガモ、クロツラヘラサギ、ズグロカモメなど九州を代表する冬鳥を観察していきます。

12日、第一日目今朝の鹿児島は朝から雨模様。少し心配しましたが、集合時刻の正午頃には雨も上がっていました。鹿児島空港から一路出水を目指します。今シーズン14年振りに飛来したアネハヅル成鳥を確認するため現地での時間を十分にとりました。まずツル観察センターに行くとツルは既に周辺地域に散らばった後でした。三連休の中日で観光客も多いため直ぐに東干拓に向かいました。バスの車窓から4羽のカナダヅルを見つけます。バスを監視所前に停め歩きで接近。途中、クロヅルやナベクロなどを発見しましたが、本命のアネハヅルは見つかりません。周囲にいるタゲリ、ムネアカタヒバリ、ヘラサギやツクシガモを見て、再度今朝見られた観察センターに戻りました。到着直後、数百メートル離れた農道に車が並ぶ光景にやや違和感を感じました。近寄ってみると感が的中!ナベヅル群中にアネハヅルが採餌していました。しばらく観察した後、ナベヅルと共に飛び立ち、我々のすぐ頭上を越えて飛去しました。美しい成鳥個体でした。

13日、早朝暗いうちに宿を出発。昨日アネハヅルが見られた観察センターを目指します。ツルはまだ塒の水田の中。7時過ぎ漸くエサ撒きの軽トラがやって来ると次第に騒ぎ始め、乱舞が始まりました。鋭い声で鳴きながら空を飛び交う光景は宮城県伊豆沼のガンを彷彿とさせます。夜明け直後の赤い空を舞うツルの群れに十分感動した後、本日次の探鳥地である諫早に向かいます。一路北上し、島原半島へ移動。船の後ろについてくるユリカモメの群れは乗客が投げるお菓子狙いです。右舷を沖に向かって続く長大な埋め立て地の荒地にはヘラサギ、ツクシガモ、ホシハジロの群れが羽を休め、中にオオハクチョウやカワアイサの姿も見られました。しばらく進むと沖のブイに今シーズン好調なカツオドリが数羽止まっています。その後は餌取りダイブなど30羽以上観察出でき、ちょっとしたカツオドリ祭りで盛り上がりました!正面には雄大な普賢岳の山容が広がります。到着後は約1時間で諫早に到着。まず、ナベコウのポイントを見て回りますが、見当たりません。後で再度探すことにし、はやる気持ちを抑えて広大な葦原を見渡せる土手上へ。時間的なタイミングがあるようで、全く鳥が飛んでいません。気を取り直して、他の小鳥を探します。タカサゴモズは直ぐに見つかりました。アシ原の中の開けた部分の地面でよく見るとミミズを飛び跳ねながら盛んに探して食べています。お客様が土手沿いにマミジロタヒバリを発見されます。ここでは毎年数羽が越冬しています。午後3時過ぎ辺りからチュウヒが飛び始め、ハイイロチュウヒも雄雌共に漸く観察出来ました。最後に枯れ木に止まるコチョウゲンボウ♀を見てこの日の締めとしました。途中、ナベコウに注意しましたが、最後までその姿を確認することはできませんでした。

14日、本ツアー最後の訪問地佐賀県東与賀干潟です。今朝はホテルで朝食を食べて出発します。途中、どうにかトモエガモを確認し目的地へ向かいます。九州の干潟の観察開始時刻は満潮時の3~4時間前からが通常です。干満の時間を間違えると数キロ先まで干潟が現れ、鳥は遥か彼方、探鳥どころではなくなってしまいます。現地到着後、まず干潟公園内を探鳥。芝生広場やちょっとした林、植込みなどに小鳥が生息しています。冷え込んでいるため、小鳥の動きが悪いようです。ここでルリビタキ、アオジ、ウグイスなどを初確認。堤防内クリークに沿って小さな葦原があり、ツリスガラを探しましたが見つかりません。今シーズンはかなり少ないようです。しばらく探鳥した後、堤防から干潟に降ります。クロツラヘラサギ9、ヘラサギ1を目の前で観察。遠くには黒い米粒のように干潟上にシギ、チドリが無数に散らばっています。ホウロクシギ、ダイシャクシギ、アオアシシギ、夏羽のオグロシギ夏羽、オオハシシギ、一部夏羽のコオバシギ、ミヤコドリなど。移動しながらシギ・チドリを観察していくうちに足元で「サーッ」と潮が音を立てて満ちてきて、柵を超えてきました。満ち潮の勢いとその音に皆様驚かれます。大潮の時は予想外のスピードで潮が満ちてきます。ほぼ満潮時刻が近づいてくるとシギ・チドリの大群が飛び立ちます。数千羽の群れが鳴きながら飛翔する光景は一見の価値アリです。そして最後にバスに向かおうとした頃、アボセット2羽が水際まで飛んできてくれました!皆さん大満足です。こうして九州縦断ツアー第1弾、お陰様を持ちまして無事に終了することができました。

最後になりますが、今回のツアーで九州を代表する冬鳥たちを十分に楽しんでいただけたでしょうか。最終的に104種類の鳥たちに出会うことができました。この冬は少し異変で、毎年常連のコクマルガラスやツリスガラがとても少ないようです。それでも当地14年ぶりのアネハヅル、熊本-島原フェリー航路でのカツオドリの乱舞、諫早のタカサゴモズ、東与賀のソリハシセイタカシギなど九州らしい珍鳥にも遭遇できました。冬の九州と言えば、出水の15,000羽超の圧倒的なツルの大群や諫早の雄大な普賢岳をバックにアシ原を飛ぶチュウヒ、ハイイロチュウヒ、東与賀の広大な有明海の干潟に群れる数千羽のシギ・チドリの大群など大自然の中に生きる鳥たちに思わず感動してしまいます。ぜひ、この感動をもっとたくさんのバードウォッチャーに味わっていただきたいと感じています。

波多野邦彦

ソリハシセイタカシギ 撮影:小林恒勝様

 

アネハヅル(左)とナベヅル 撮影:小林恒勝様

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