【ツアー報告】日本最大のガンの越冬地 伊豆沼と蕪栗沼・化女沼 2020年11月14日~15日
(写真:早朝の飛び立ち 撮影:大塚敦雄様)
ご存知、日本最大のガンの越冬地、伊豆沼。その周辺にある蕪栗沼や化女沼を含めて週末利用の2日間でめぐる秋恒例のツアーです。伊豆沼周辺には今季も10万羽を超えるガンたちが飛来し、マガンをはじめ、ヒシクイ、ハクガン、シジュウカラガン、カリガネといった5種類のガンたちが見られることが特長で、塒から飛び立って行く早朝の塒立ち、そして夕景の映える中、続々と塒に戻ってくるガンたちを観察する大イベントもあります。ただし、探鳥地のほとんどが狭い道な上、駐車スペースが限られていることから我々のツアーではマイクロバスを使用し15名様限定としています。これにより歩く距離も軽減され、広大な畑地の隅々まで探鳥可能で、警戒心の強いガン類に近づく手段として車内からの観察といった手法も可能になりました。そして今回は大変珍しく、2日間共に穏やかな晴天の予報が出る中で出発することができました。
14日、早朝から快晴の東京駅を予定通り出発して新幹線でくりこま高原駅を目指しました。到着後はやや風がある中、まずは徒歩にてホテルまで向かい、ロビーをお借りして観察機材準備を行ってから探鳥に出発しました。まずは伊豆沼に行くと、かなり大きなマガンの群れが地上に群れていたため強風吹き荒れる中、まずは基本となるマガンの観察を行いました。その後も別のマガンの群れを観察し、ここではマガンの成鳥、幼鳥の特徴を覚えていただきました。ただ観察していると伊豆沼から次々とマガンの群れが飛来し、真っ青な空を飛翔する美しいマガンの姿を堪能することができました。その後は池でオナガガモやキンクロハジロ、やや距離はありましたが2羽のヒシクイの姿もありました。伊豆沼の湖面を見ると昼間にも関わらずかなりの数のマガンが群れ、強風にあおられながらも次々に飛び立って行く様子を観察することができました。この後は一旦トイレ休憩をとり、その後は周辺の畑地をめぐりながらカリガネを探しました。まずは車内から群れているマガンの姿を探しながら進みましたが、この日はなかなかカリガネの姿がありません。ただ1時間ほどしてようやく草地に群れている数十羽のカリガネの姿を見つけることができ、ひとまず一定の距離を保ってバスを安全な場所に止め、その後はバスを降りて徐々に近づきながら観察することにしました。マガンの群れもいましたがざっと見て30羽以上のカリガネが群れ、近づくに連れて次々にマガンが飛び立っていったものの、幸いにも最も近い場所に群れていた家族と思われるカリガネの群れは居残ってくれたことから観察することができました。よく見ると6羽の幼鳥を連れた親子のようで、望遠鏡を使ってマガンとの違いを観察しました。順光だったこともあり顏つきの違いや黄色のアイリングもしっかり見ることができ、観察後はやや時間が押したものの、見る見る傾いてくる夕陽を見ながら塒入り観察を行うことにしました。マイクロバス使用のためポイントのすぐ下まで行くことができ、到着後は堤防上に上がって観察を開始しました。この時間になるとかなりの寒さになるのですが、この日は風がなかったためか寒さはほとんどなく、夕陽を背景に続々と塒に帰ってくるマガン、シジュウカラガンを観察しました。この日はシジュウカラガンの戻りが早かったようで、周辺の畑地にすでにシジュウカラガンが群れていて、ほかにも電線にはコチョウゲンボウ、ノスリ、またヨシ原の上を美しいハイイロチュウヒのオスが飛んでいました。この日の日没は16:30でしたが、天気が良かったせいで17:00まで観察し、圧倒的な迫力の塒入りに感動してホテルに戻りました。
15日、この日は早朝の塒立ちを観察するため05:30にホテルを出発して伊豆沼に向かいました。まだまだ薄暗いですが空は快晴で星が輝いていました。しばらく進むと東の空が明るくなりはじめ到着後に準備をしていると幸い東の空には雲がほとんどなく、空は真っ赤に焼けてきました。いつものようにガンたちはかなり遠い所に群れていましたが、続々と飛び立っては手前側に着水しはじめ、群れは次第に大きくなってきていました。さらにはモヤがかかり始める中、見事な朝日が輝き始めた頃、この日は珍しく目の前の群れがほぼ一斉に飛び立ちました。地面を揺らすような鳴き声と羽音は迫力満点で、しかもその群れが我々の頭上を通過していったため、感動はさらに大きいものになりました。その後はやや時間があったことから伊豆沼の北側に移動して湖面に群れているオオハクチョウ、ヒシクイ、カワアイサ、カンムリカイツブリ、ハジロカイツブリなどを観察し、オオハクチョウの群れに混じるコハクチョウと亜種アメリカコハクチョウも観察しました。07:45にはホテルに戻り、朝食をいただいてから再度出発して化女沼に向かいました。小鳥類の姿は少なかったものの、ジョウビタキのオスやカケス、そしてダム湖にはホシハジロ、ヒドリガモ、ヨシガモ、ミコアイサの姿があり、この日は群れで飛び回るカケスの姿が目立ち、どんぐりを咥えた個体も見られました。その後はシジュウカラガンの群れを探すことにしました。現地では広大な畑地をめぐりましたが、この日はマガンの小群は点在していましたが残念ながらシジュウカラガンの群れを見つけることはできず、その後は範囲を広げて探してみましたがその姿はなく、最後に別の場所に向かいました。するとここでようやくシジュウカラガンの群れに出会うことができ、マガンの群れと共に採食する姿をじっくりと観察することができました。時間が過ぎてしまったことからこの後は各自昼食とし、その後は一旦伊豆沼に戻って沼を一周しながらハクガンを探しましたがこの日は残念ながら出会うことはできず、その後は再び蕪栗沼まで移動して沼の周囲を歩きながら探鳥しました。まだまだ時間は早かったですが、それでもマガンが続々と沼に集結し始めていて、青空を背景に見事な飛翔をしばらく観察することができました。周辺の草地ではベニマシコ、ジョウビタキ、ツグミの姿があり、湖面で採食するヒシクイ、ハマシギ、オオハシシギも観察することもできました。そしてこの日も最後は塒入り観察を行いました。前日に比べると西の空にはやや雲がかかってはいましたが、それが結果的には鮮やかな夕景を演出してくれ、真っ赤な空を堪能することができました。この日も西の空から続々とガンたちが戻ってきて、薄暗くなってきた頃からは東側から大きな群れがいくつもいくつもやってきて我々の頭上を越えていきました。この日は16:45まで観察して駅に向かいました。
今回はこのツアーとしては珍しく、ほとんど防寒装備を使用しない暖かで穏やかな2日目で、特に2日目朝の飛び立ちは見事で印象的でした。ガンたちは今年も健在で、ここ数年のカリガネ、シジュウカラガンの増加は目を見張るものがあります。ガンたちの異常な増え方はやや心配な部分もありますが、彼らが安心して越冬できる環境が今後も続いて行くことを祈るばかりです。今後も探鳥地の状況を考慮し、小型車を使って隅々まで探鳥可能なよう企画してまいります。我々バードウォッチャーにとって伊豆沼のこの風景は晩秋には絶対外せない光景であるとい思います。またの機会、ぜひ足をお運びください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史