【ツアー報告】冬の信州でイスカに会いたい! 2021年3月10日~11日
(写真:イスカ 撮影:中村裕一様)
人気のある赤い鳥の中でも特徴的な嘴を持っているイスカは日本国内では冬鳥とされていますが夏季にも見ることがあり、少々謎がある鳥でもあります。また毎冬毎冬飛来するわけではないためなかなか出会いのチャンスがないのも事実で出会うことはなかなか難しいのが現実です。イスカは特にマツの種子を好んで食べるため針葉樹の林を探すことが重要で、嘴が互い違いになっていることが最大の特徴です。この嘴を使ってマツなどの針葉樹の種子をついばんで食べるためこういった採食シーンが見られればとも思いツアーを企画しています。またツアーではここ数年、皆様からのリクエストが増えているシングル部屋を利用したプランにしています。今回は当初の予定よりも約1カ月ほど遅れての催行になってしまいましたが、おかげさまで天気予報も良好で良い状況で探鳥ができそうです。
10日、今回からご集合時間を東京駅前09:00に変更して遠方のお客様にもご参加いただけるようにしました。おかげさまで順調にご集合が完了したことから快晴の東京駅前を予定通り出発してひとまず中央自動車道を走りました。バス車内ではいつものようにこのツアーで見られそうな鳥の解説やイスカの話などをしながら進め、途中、サービスエリアで休憩し、その後はやや風が強まる中、頂に雪を被った八ヶ岳を遠くに眺めながら進み、予定通りサービスエリアに到着したためここで一旦各自昼食、そして観察機材準備をしていただきました。その後は現地まで移動してからトイレ休憩を挟んでいよいよ探鳥開始となりました。本来ならば積雪のある場所ですが、ここ数日の暖かさのせいか道には雪はなくまるで春の探鳥のような雰囲気でした。周囲からはホオジロやヒガラのさえずりが聞かれ、下見時に最もイスカが良く見られた場所でひとまず時間をとってみました。ただ残念ながらこの日はイスカの雰囲気が全くなく、上空を飛翔するハイタカ、餌を探すジョウビタキのメスが見られたのみでした。そのためさらに小道を歩いていくことにすると幸いにもイスカの声が僅かに聞こえ、探してみると松の木のてっぺんに真っ赤なイスカのオスが止まっていました。距離はありましたが順光の中、美しい真っ赤なイスカのオスをじっくり見ることができました。その後はさらに進むと斜面の林の中からオオマシコの小さな声がしたため観察してみると、斜面をノコノコ歩きながら採食している複数のオオマシコの姿がありました。なかなかすっきりした状況で見られずイライラしましたが、しばらく見ていると次々に道に出てきて採食行動しはじめたことからじっくりと観察することができ、なかなか見ることができない真っ赤なオス個体も複数見ることができました。3時間近く経ったことから一旦戻ってトイレ休憩した後は、再度同じ場所に戻ってイスカの登場を待ってみました。夕方になり次第に風が冷たくなる中、しばらく待ってみましたが、この日はどうにもイスカが現れる雰囲気がなく、代わって現れた2羽のマヒワの姿を見てこの日の探鳥を終了しました。
11日、この日も幸いなことに早朝から快晴。08:00に出発して現地に向かうと、遠く八ヶ岳、車山、北アルプスの山々もはっきりと見ることができました。小道を歩きはじめると早速、コガラ、ヒガラ、ヤマガラ、コゲラの混群が出迎えてくれ、しばらくの間、コミカルに動き回る小鳥たちの姿を楽しみました。ひとまずこの日も午前中は同じ場所で待機するために歩きましたが昨日いたものと同じ個体と思われるマヒワが2羽、間近を歩いて採食していました。ほかにもホオジロが地面で採食していて、いつの間にかカヤクグリも現れました。現地ではひとまずイスカの登場を待つことにしましたが、この日もなかなか姿を見ることができず、上空を飛翔するノスリ、魚を捕らえてどこかに運ぶミサゴ、またカラマツにやってきたカシラダカを見て過ごすに留まりました。時間もお昼に近づいたことから一旦戻って昼食の時間とし、その後は再び同じ場所に行ってみました。ただどうにも動きがないことから少々小道を歩くことにすると、周辺からイスカの声が聞こえました。なかなかしっかり観察できる状況にはなかったですが、鳴きながら飛ぶ姿や松の木にとりついている姿、そしてようやくメスが松の木に止まったところを望遠鏡で見ることもできました。また周辺の斜面からはこの日もオオマシコの声が聞こえ、道端に出てきて採食している様子も観察することができたほか、クマタカを観察したお客様もいらっしゃいました。その後は再び来た道を戻って行くと、ようやくカラマツに止まっている1羽のイスカのメスに出会うことができ、望遠鏡を使ってじっくりと観察することができました。時間もなくなってきたことからそのままやや延長してイスカの出現を待ってみましたが、この後はベニマシコやマヒワの姿を見ることはできましたが、イスカの登場はなく探鳥を終了しました。
緊急事態宣言発出に伴い、本来のツアー予定から1か月ほど遅れての催行となってしまいましたが、主な目的であったイスカ、そしてオオマシコに関しては予想外の良い状況でさまざまな個体を観察することができただけでなく、真っ赤な成鳥のオス個体を複数観察することができました。ただ、イスカの出現は僅かにタイミングを逸してしまったようで、間近にじっくりと観察する機会に恵まれなかったのは残念でした。またイスカの観察に時間を使ってしまったことから諏訪湖畔での観察を行えませんでした。ただ、今回は春のような陽気の中で観察することができ、当地らしい強風や厳しい寒さを感じることはありませでした。今後も今回のようにシングル部屋を利用したツアーを増やす方向で企画をすすめたいと思います。この度はご参加いただきましてありがとうございました。またの機会にご一緒できましたら幸いです。
石田光史