【ツアー報告】落石クルーズで夏羽のエトピリカに会いたい! 2021年7月11日~13日

(写真:エトピリカ 撮影:天野昌弘様)

コロナウイルス感染拡大から長らく運休していた根室落石ネイチャークルーズ。この夏こそはとの思いでツアー企画しましたが、残念ながらなかなか運行再開の連絡はきませんでした。ただようやく6月初旬になって、数日前からの健康観察データ提出など一部条件付きながら運行を再開するとの連絡が入りました。この落石クルーズには実は営業運行以前からお付き合いさせていただいており、試験運行時の乗船やその後の意見交換会にも出させていただきました。その後、営業運行が始まってからも道東ツアーではこの落石クルーズをツアーには必ず入れるようにして微力ながら応援してきました。そのため今回1年半ぶりに乗船できることは感慨深いものでした。

11日、朝から蒸し暑い羽田空港をほぼ予定通りに出発して釧路空港に向かいました。釧路空港に到着後は観察機材を準備してから出発し、宿泊地である根室市を目指しました。この日の釧路はどんよりとした曇り空が続きましたが、雨が降ってくるような雰囲気はありませんでした。この日は探鳥する時間はほんのわずかしかありませんでしたが、途中にあるポイントで探鳥するため、まずは道の駅に立ち寄り、その後は厚岸湾を左手に見ながら進みました。エゾカンゾウの花が咲き乱れる湿原の道を走ってみましたが、ここではタンチョウの姿はなく、湿原内にはエゾシカの姿がありました。その後はやや霧が濃くなってくる中、岬に行ってみました。霧がかかってはいましたがかろうじて周囲が見渡せる状況の中、早速、さえずっているノゴマの姿がありました。観察していると今度はオオジュリンがさえずりはじめ、いつの間にかショウドウツバメが飛び回っていて地面に降りている個体も見ることができました。また珍しくノゴマのメスが目立つ場所に出てきてくれ、付近では真っ赤な喉を震わせてさえずるノゴマのオスの姿も見られました。シマセンニュウのさえずりも引っ切り無しに聞こえてはいましたが、なかなか良い場所には出てきてくれず、最後にようやく枯れ木に止まってさえずる個体を見ることができ、この日は急ぎ足で根室市内のホテルに向かいました。

12日、この日も早朝から霧が立ち込める中、ホテル近くにある公園に早朝探鳥に出かけました。どんよりとはしていましたが幸い雨はなく、駐車場でバスを降りると早速、ハシブトガラ、ヒガラの声が聞こえました。少し歩いていくと間近にシロハラゴジュウカラの姿があり、地面を歩きながら餌を探しているようでした。さらに進むとどこからともなくシメの群れが飛んできてナナカマドに止まり、本州で冬に見るものとは違った鉛色の嘴が鮮やかでした。周辺ではハシブトガラ、ヒガラ、シジュウカラに混じってセンダイムシクイの姿があり、枯れ木にはベニマシコの幼鳥がじっと止まっていました。遊歩道を進むとウグイスが鳴き、池ではオオセグロカモメ、ウミネコの美しい夏羽個体が水浴びを繰り返していました。そしてこの日は草原でノゴマがさえずっていました。一旦、ホテルで朝食をいただいた後は落石漁港に向けて出発しました。ただやはり霧は濃く、途中からは視界が遮られるほどでした。落石漁港に到着するとやや視界はあったものの海上には霧が広がっていました。ひとまず出航。海上に出るとうねりや波はなかったものの視界は悪く、うっすらとユルリ島が見える程度でした。船が進むと霧の仲から次々にウトウが現れ、穏やかな海上にはハシボソミズナギドリ、ハイイロミズナギドリが着水していて次々に飛び立っていきました。その後は相変わらず晴れない霧の中を進むと、ウトウの群れの近くに浮上している非生殖羽のエトピリカの姿があったためまずはこの個体を観察しました。その後はケイマフリが繁殖している入江まで行くと、ここは幸いにも視界があり、間近に浮上しているケイマフリの群れを観察することができ、求愛行動や鳴き交わしも観察することができました。その後はようやく深い濃霧から抜け出して一気に視界が広がる中、再び濃い霧の中を進み、愛嬌あるラッコの姿を楽しむことができ、その後は岩場で休んでいるチシマウガラスを観察しました。たまたま視界が広がっていたことからじっくり観察することができ、美しい生殖羽個体を含む5~6羽のチシマウガラスを観察することができました。エトピリカの成鳥生殖羽も貴重ではありますが、このチシマウガラスの成鳥生殖羽を国内で観察できることもさらに貴重な経験と言えるでしょう。そして港に戻る途中でも非生殖羽のエトピリカを観察することができ、この日は深い霧に遮られながらもなんとか非生殖羽のエトピリカを2個体観察することができました。下船後は30分ほどバスにて移動して各自昼食を購入していただいてから野付半島にあるネイチャーセンターに移動しました。到着した野付半島は曇り空ながらも空は明るく、肌寒さは全くありませんでした。湿原ではエゾシカが群れ、周囲からはシマセンニュウのさえずりが聞こえていました。遊歩道を歩くとハマナスに止まってさえずるシマセンニュウを見ることができ、じっとしているオオジュリンの姿もありました。さらに進むとハマナスの上でさえずるノゴマの姿もあり、電柱に止まっているカッコウなどしばらくの間、観察してから出発し、その後は道の駅に立ち寄り、最後はタンチョウの親子を見てから、枯れ木に止まっているオジロワシを見てこの日の探鳥を終えました。

13日、前日の状況から期待して起床し外を見ると残念ながら昨日よりも深い霧。しかも地面が濡れていて深夜に雨が降ったようでした。早朝探鳥のため外に出ると幸い雨は落ちてはいませんでしたが霧は晴れる気配がありませんでした。この日も早朝に明治公園に行くとエゾセンニュウが独特のさえずりで歌い、相変わらずハシブトガラ、ヒガラ、シジュウカラは賑やかで、この日はノビタキのヒナも元気に動き回っていました。またこの日はベニマシコが何度も姿を見せてくれ、真っ赤なオス個体がカラマツの梢でさえずってくれました。池では相変わらずオオセグロカモメが水浴びをしていて、草原ではコヨシキリの姿があり、枯れ木には2羽のベニマシコが止まっていてさえずっていました。また帰り道ではアオジが間近にさえずっている姿を見ることができました。探鳥後は一旦ホテルにて朝食をいただき、心なしか空が明るくなってくる中、落石漁港に向かいました。ただバスが進むにつれて霧はどんどん濃くなってきてしまい、結果的には前日よりもはるかに濃い霧の中で落石漁港に到着しました。出航後もかなり深い濃霧でどうなることかとは思いましたが幸い海況は良く、ほとんど波が立っていないような状況でした。霧の中からは次々にウトウが現れ、この日は少々早めにユルリ島の間近まで行きましたが残念ながら鳥影はほとんどありませんでした。その後はエトピリカがよく見られている場所を探し回りましたがその姿はなく、代わって着水しているオオミズナギドリ、ハイイロミズナギドリが見られました。なかなかエトピリカに出会えない状況が続きましたがユルリ島の東端まで来たあたりで霧の中からようやく生殖羽のエトピリカが現れてくれ、そっと船を接近させながらじっくりと観察する機会に恵まれました。その後、さらにもう1個体にも出会うことができ、この個体も警戒心が薄かったことからしばらくの間、じっくりと観察することができ、戻る途中にも非生殖羽のエトピリカ2個体にも出会うことができ、終わってみればこの日だけで4個体のエトピリカに出会うことができました。この日はケイマフリやチシマウガラス、ラッコは観察条件が良くなかったですが、生殖羽のエトピリカが良く見られたことから2回乗船したことが良い結果につながりました。下船後は各自昼食を買う時間をとってから厚岸町を経由して釧路空港に向かいました。

さて、果たして落石クルーズに乗船することができるのだろうか?という状況の中でのスタートではありましたが、幸いにも直前になって乗船できることになり本当に幸いでした。夏季は海況不良は少ないものの道東沿岸特有の濃霧があり、今回はまさにその濃霧に悩まされるクルーズでした。ただ12日はエトピリカ以外を、そして13日は生殖羽のエトピリカをじっくり見ることができ、結果的には2回の乗船が成果に繋がりました。チシマウガラス、ケイマフリ、ウトウ、アカエリヒレアシシギ、そしてラッコやゴマフアザラシも観察することができ、クルーズ以外の時間はタンチョウ、ノゴマ、シマセンニュウ、オオジュリン、ベニマシコ、ノビタキ、ハシブトガラ、シロハラゴジュウカラなどを見ることができました。なかなか大変なクルーズではありましたが成果があって幸いでした。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

エトピリカ 撮影:天野昌弘様

 

チシマウガラス 撮影:天野昌弘様

 

オジロワシ 撮影:天野昌弘様

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