【ツアー報告】春の利尻島 最北の航路と渡りの鳥たち 2022年5月12日~15日

(写真:マミジロキビタキ 撮影:天野昌弘様)

本州に住んでいる我々にとってはもうこの時期は春の渡りはすでに終わっている印象がありますが、北海道北部の島々ではこの時期はちょうど春の渡りの最盛期を迎えています。このツアーでは時期を5月の初中旬に合わせることで渡り途中の小鳥類に期待できるようにしているほか、海上を渡る海鳥たち、そして利尻島内ではクマゲラやコマドリ、また道内では原生花園の小鳥やヤマゲラを探すなど、さまざまな楽しみを組み合わせています。北海道はさまざまな時期にツアーを企画し、いずれも大好評を得ていますが、この時期は厳冬期や花々が咲き乱れる初夏に負けない魅力があります。ただ、この時期の道北はまだまだ真冬のような気温になることも普通で、さらに利尻島に渡る船上は冷たい風が吹きつけます。今回は西から天気が崩れてくる中での出発となり、利尻島での天気がやや心配かといったなかでの出発となりました。

12日、この日は曇り空の羽田空港に予定通りご集合が完了したため連絡事項をお伝えしてから搭乗し、ひとまず稚内空港に向けて出発しました。到着した稚内空港は晴れていて気温は18℃。暖かくさわやかな印象でした。観察機材準備の後は原生花園に向かいました。到着後は周辺からアオジのさえずりが聞こえ、木道に向かうと芝生を歩き回るアオジ、アカハラの姿がありました。まだまだお花の時期ではないため咲き乱れる黄色いエゾカンゾウの花を見ることはできませんが、この日もノビタキのオスが飛び回り、草地からはホオアカが飛び立って木に止まりました。ひとまず木道を一周歩いてみましたがこれといった種には出会えず、ウグイスのさえずりを聞き、リュウキンカの花を見てから、一旦、別の場所にも行ってみました。ここでは幸いなことに夏羽のオオジュリンがやってきて枯れ木でしばらくさえずってくれ、池にはマガモ、ハシビロガモの姿がありました。黄色いツメナガセキレイも飛んではきましたが草地に入ってしまい見ることはできませんでした。その後はさらに南に移動し、途中、浮き巣に乗っている夏羽のアカエリカイツブリの姿を観察してから移動しました。木道を歩いていくと早速、枯れ木に止まっているツメナガセキレイの鮮やかな黄色が見え、一旦、飛び立ってしまいましたが別個体がハンノキにしばらく止まってその姿をじっくりと見せてくれました。そしてこの日はなぜか突然、複数のオオジシギのディスプレイフライトが頭上で始まり、まるで戦闘機が飛び回るかのような圧倒的な迫力をしばらくの間、堪能することができました。この後は見事な利尻富士が見える海岸線まで移動して北上しホテルに向かって移動することにしました。ただ、途中には港があることから立ち寄ってみました。堤防に並ぶ夏羽のオオセグロカモメやウミネコ、海岸でユリカモメ、ウミアイサ、そしてテトラポットで休むゴマフアザラシが見られ、最後はノシャップ岬まで移動し、次々に飛んで行くウトウやシロエリオオハム、海上に群れるウミアイサ、そして餌を探し歩くキアシシギを観察してこの日の探鳥を終えました。

13日、この日は早朝便に乗船しなくてはならなくなり早朝にホテルを出発しました。残念ながらどんよりとした空から小雨が落ちていました。乗船後はデッキに出て海鳥観察を行いました。この航路の目玉は夏羽に換羽したシロエリオオハム、群れで飛び回るアカエリヒレアシシギ、北上中のハシボソミズナギドリですが、まずはウトウの群れが次々に飛び、期待通りに白黒模様のシロエリオオハム、真っ赤なアカエリヒレアシシギの夏羽が楽しませてくれましたが、この日はなぜかハシボソミズナギドリの姿はありませんでした。ただし、航路上では次第に空が明るくなり、到着した利尻島、鴛泊港では青空も見えてきていました。早速、現地在住ガイドさんと合流してから観察機材の準備をしていただき、その後はクマゲラの姿を求めて出発しました。このツアーでは毎回、現地で山のガイドをされているガイドさんに下見をしていただいています。コマドリやミソサザイがさえずる中、現地に到着後は遊歩道沿いでひたすらクマゲラが現れるのを待つことにしました。ただこの日はなかなかクマゲラに出会うことができず、結局2時間以上を費やすことになり、一時はどうなることかと思いましたがようやくクマゲラに出会うことができ、その後は一旦、鴛泊まで戻ってフェリーターミナルで昼食の時間としました。昼食後はこのツアーで最も珍鳥が見られている場所に向かいました。ただ、途中の車窓から海面に群れるトドの姿があったことから一旦下車して観察する時間をとりました。到着するとこの日はあまり鳥の雰囲気はなく、海上に浮いている夏羽のシロエリオオハムやシノリガモ、遠くの木に止まるツツドリなどを見てから次の場所に移動しました。ここではいつも以上にウミネコが大群でやってきて水浴びをし、湖面にはカイツブリ、キンクロハジロの姿もありました。その後は公園に向かいました。ここでは抱卵中のオオセグロカモメが見られたほか、海上に大群で群れ飛んでいるアカエリヒレアシシギを見ることができました。その後は再びクマゲラの姿を再び見ることができ、この日の最後は小雨が落ちてくる中、ノビタキ、ノゴマを観察してこの日の探鳥を終えることにしました。

14日、昨夜からの雨は早朝も止むことがなく、結局、この日の早朝探鳥は中止。朝食後も雨はかなりひどい状況のため、歩いての探鳥は不可能と判断し、この日もひとまずクマゲラがやってくるのを待つことにしました。針葉樹林のため雨をそれなりに遮ることはでたものの雨は止むことなく、それでも間近にヒガラやハシブトガラ、ゴジュウカラがやってきてくれ、ツツドリ、コマドリ、ミソサザイのさえずりを聞くこともでき、結局この日も2時間ほどの間でクマゲラに出会うことができ、道端で餌を探すウソ、渡り中と思われるオオルリのオスなどを見ながら道を戻り、その後は別の場所に向かうことにしました。生憎の霧の中でしたが、斜面を歩くオシドリのつがいが見られ、時折、霧が晴れると幻想的な姿を見せてくれました。ただこの日は終日雨だったこともあってやや時間が余っていたのでちょっとした直観を信じて別の場所に行ってみることにしました。まだまだ小雨が降っている状況でしたが、まずはグランドでは期待していたツグミの群れはすでに北へと去ってしまった後のようでその姿はなく残念。その後は公園に行ってみました。小さな池があるためか2羽のコサメビタキがフライキャッチを繰り返していて、しばらく見ていると黄色い小鳥が飛びました。キビタキか?と思いましたが良く見ると眉は白色。ツアーとしてはこれで3期連続となるマミジロキビタキとの出会いが最後の最後で待っていました。ほかにもオオルリ、そしてあまり見る機会がないクロジもじっくりと見られ、その後は鴛泊のフェリーターミナルに移動して昼食をいただき、現地でお世話になったガイドさんからご挨拶をいただき乗船しました。帰りの航路はやや波が立っていましたが、いきなりハシボソミズナギドリの群れが舞い上がり、続けざまに夏羽のアカエリヒレアシシギの群れが連続して飛んでいました。またウトウも見られ、ウミウとヒメウが並んで飛ぶ珍しいシーンなどを見て稚内港に到着。その後はこの日の宿泊地に向かいました。

15日、この日は探鳥時間を確保するため早朝にホテルを出ました。天気予報は概ね問題ありませんでしたが早朝は曇り空。ただ遠くを眺めると青空の面積が大きくなってきているようにも感じました。1時間ほどの移動時間の中で朝食をとっていただき、到着後は観察の準備をしてから歩き始めました。すると早速、ヤマゲラの独特の声が聞こえ、声がする方向い行ってみるといきなり飛び立ったオスが枯れた高木に止まってくれました。観察しているとあまり動こうとせずじっとしていて、時折、独特の声で鳴いてくれました。飛び立った後も付近にいたため再度観察する機会があり、思わぬ形で目標を達成することができました。観察している最終にはアオジ、ベニマシコが間近に現れ、電線には美しいニュウナイスズメのオスが止まっていました。林内にはいるとツツドリ、コルリ、センダムシクイなどの声に包まれ、枯れ木では営巣中のハシブトガラがせっせと餌を運んでいて、針葉樹ではコルリが高らかにさえずる様子を全員でじっくり観察することができました。今年は残雪がほとんどないためさらに奥に進むと、道端からいきないヤマシギが飛び立ち、さらに進むと広場でコサメビタキとキビタキのメスが地上に降りてはせっせと餌を探していました。しばらく見ているといつの間にかキビタキのオスも加わり、さらに観察しているとどこからやってきたのか橙色の小鳥が針葉樹に止まりました。見てみると美しいムギマキのオスで驚かされました。その後は別ルートから戻ると、地上に降りていたコルリが木に止まってさえずりだし、意外な形で観察できました。その後は一旦、場所を変えてみることにし、エゾエンゴサクやカタクリの花が咲く道を歩いてみました。草地ではホオジロがさえずり、白樺林からは相変わらずヤマゲラの声が響いていました。するといきなり数羽のオオジシギのディスプレイフライトがはじまり、しばらくの間、大迫力の編隊飛行を楽しむことができ、クロツグミのさえずりも聞くことができました。そして最後は再び駐車場まで戻ると、ようやくマミチャジナイに出会うことができ、観察しているといきなりヤマゲラのオスとメスが現れて芝生で餌を採りはじめたことから、少々時間をオーバーして観察し、あわただしく探鳥を終えました。

今回の利尻島ツアーは晴天でスタートしたものの、利尻島内では1日雨に見舞われてしまい、残念ながら十分な探鳥ができない時間帯がありました。ただそこは毎回、事前に利尻島内の野鳥の状況をリサーチしてくださる現地在住ガイドさんのおかげで、今回もクマゲラの姿を見る時間に充てるなど有意義に過ごすことができました。また天候が一時的に悪化したことが幸いしたのか、それまでやや少なかった小鳥類にオオルリやコサメビタキが加わり、3期連続となるマミジロキビタキに出会えたことは幸いでした。また、道内ではツメナガセキレイ、オオジシギ、ノビタキ、アカエリカイツブリ、森では主な目的だったヤマゲラに出会うことができ、ニュウナイスズメ、ベニマシコ、ツツドリ、コルリ、マミチャジナイ、ムギマキなどにも出会え、オオジシギのディスプレイフライトは印象的でした。また往復の航路ではこの航路の定番である夏羽のシロエリオオハム、夏羽のアカエリヒレアシシギ、ウトウ、ハシボソミズナギドリの群れが見られました。今後もしばらくの間はコロナウイルス感染予防に徹しながらのツアー運行となります。皆様には事前および当日の検温、健康観察などをお願いいたしますがどうかご協力ください。私もほぼ毎週のPCR検査を継続して参ります。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

クマゲラ 撮影:山尾文明様

 

ヤマゲラ 撮影:天野昌弘様

 

アカエリヒレアシシギ 撮影:久野守正様

 

キビタキ 撮影:鶴田美津子様

 

オオジシギ 撮影:天野昌弘様

 

キビタキ 撮影:久野守正様

 

ヤマゲラ 撮影:鶴田美津子様

 

コルリ 撮影:天野昌弘様

 

クマゲラ 撮影:久野守正様

 

キビタキ 撮影:鶴田美津子様

 

マミチャジナイ 撮影:天野昌弘様

 

ヤマゲラ 撮影:久野守正様

 

コルリ 撮影:鶴田美津子様

 

クマゲラ 撮影:天野昌弘様

 

トド 撮影:久野守正様

 

ツメナガセキレイ 撮影:鶴田美津子様

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