【ツアー報告】初夏の戸隠高原ハイキング  2022年5月18日~19日

(写真:マミジロ 撮影:岩田精一様)

思い起こせば20年ほど前に私が初めてバードガイドを名乗って訪れたのが、この戸隠高原でした。当時は秋の企画のみでしたが、春も素晴らしい探鳥地であることから、その後は年に二回企画するようになりました。私的な感覚ではありますが、数多くある国内の探鳥地の中でも特に好きな場所で、若いころから通い続けています。そのせいか特に得意な場所になり、毎回訪れるのがとても楽しみでもあります。初夏の戸隠高原の特長といえばとにかく可愛らしい小鳥類が多く、また見やすいことでしょう。特に目立つのがキビタキとコサメビタキでクロツグミとの出会いの確率が高いことも忘れてはいけません。ほかにも、ニュウナイスズメ、サンショウクイ、アオジ、ノジコ、コルリ、ミソサザイ、また留鳥のコガラやエナガ、キバシリ、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラなどが存分に楽しませてくれます。珍鳥と呼ばれる種に出会う確率は極めて低いものの、美しい風景と野鳥、そして花々に囲まれる2日間はまさにバードウォッチングの醍醐味が凝縮されているといっても過言ではないでしょう。今回は幸いにも両日共に晴天予報の中での出発となりました。

18日、早朝からカラッと晴れわたった東京駅を出発してひとまず長野駅に向かいました。今回はハイキング探鳥というとで比較的歩く探鳥であること、これは疲れに直結するであろうことから帰りはさっと2時間もかからずに帰れるほうが体力的も良いだろうと考え往復新幹線利用としています。途中、車窓から外を見ていましたが、空は見事に晴れ渡り雨の心配は全くないことが確信できました。長野駅到着後は現地集合のお客様と合流してからバスに乗車していただき、まずは今回お世話になるホテルに向かいました。好天のせいか人の出は多い印象で途中、飯綱高原付近から中社にかけても車も多くいよいよ戸隠にも賑わいが戻ってきた印象でした。ホテル到着後はまずロビーにて各自昼食をとっていただき、合わせて観察機材や服装の準備をしていただき再度バスにて出発しました。この日はまだまだ混雑しているだろうとのことでまずは人が少ない場所に向かいました。ただ、途中にある小さな湿地のミズバショウが見事だったことからちょっとだけバスを止めてみることにしました。時期的にはやや遅めながらも可愛らしいミズバショウが咲き、リュウキンカ、そしてショウジョウバカマの花も見られ、頭上にはコサメビタキがやってきてくれ、地上を歩き回るアカハラの姿を見ることもできました。その後はまずヒガラやアオジがさえずる中、足元に咲いているニリンソウの花を見ながら歩きだしました。ここでは思ったほどの成果はありませんでしたが、1羽のノスリが急上昇、急降下を繰り返すディスプレイフライトをしばらくの間、見せてくれました。林に入るとイカルの姿があり、枝先でさえずるアオジ、飛び回っている美しいキビタキのオスを見てから一旦、移動しました。ここでは見事な戸隠山が目の前にそびえ、1羽のモズが飛んできて楽しませてくれました。林ではアカゲラが鳴きながら飛び、イカルの群れがどこからともなくやってきて「お菊二十四」と聞こえるさえずりを披露してくれました。戻る途中ではアカハラが地上を歩き、ニュウナイスズメが賑やかに鳴きながら枝先に止まっていました。その後は夕方に合わせて別の場所に向かいました。池にはカイツブリの姿があり、付近の枯れ木にはニュウナイスズメが巣を作っているらしく賑やかに鳴いていました。林にはいるとウグイス、ヒガラ、アオジといった小鳥たちの声は途切れることはなく、この日は木道エリアで過ごすことにしました。お目当てのクロツグミはまだまださえずりだしてはいませんでしたが、周囲ではアカハラの動きが良く、ミズバショウ園の地上に降りて餌を探す姿を間近に見ることができ、この日はノジコが見やすく、何度も木に止まってさえずる姿をじっくりと見せてくれました。また2羽のエナガが飛んできて目線ほどの高さで餌を探したり、コガラが水浴びにやってきたりと飽きの来ない時間を過ごすことができ、その後はようやく複数のクロツグミが大音響のさえずりを披露してくれ、木に止まって朗々とさえずる姿を何回か見ることができ、周囲が薄暗くなってきた頃、この日の探鳥を終えました。

19日、早朝から見事な戸隠山が見える中、早朝に外に出ると、あまり聞いたことがないさえずりが聞こえてきました。見てみると最近、長野エリアで続々と繁殖が確認されているジョウビタキのオスが梢でさえずっていました。初夏の戸隠高原のツアーはすでに10年以上企画してきましたがジョウビタキが記録されたのは初めてのことで、繁殖域をかなり広げていることがわかりました。さらには遠くから久しぶりにマミジロのえさずりが聞こえたことから歩いて行ってみると、梢でさえずるマミジロに出会うことができ、早朝から見事な大声量のまろやかな歌声を堪能しつつシックなその姿を見る幸運に恵まれました。その後は木道を一周しながら再び木にじっと止まっているクロツグミ、そしてノジコ、アオジ、キビタキ、コサメビタキ、ゴジュウカラなどを観察して一旦宿に戻って朝食をいただきました。朝食後はこの日はおそらく景色が見事だろうということで鏡池まで行き、湖面に映る見事な新緑、そしてつがいで行動しているオシドリを観察してから歩きました。途中、ミズバショウがきれいに咲いているエリア、ニリンソウが咲いているエリアを過ぎ、途中、アオジ、アカハラ、そしてクロツグミのさえずりが聞こえ、ある場所ではキビタキのオスがしばらくの間、枝に止まって美しい姿をじっくりと見せてくれ、しばらく見ているとメスもやってきてくれました。その後はたまたま巣穴に出入りしているアカゲラがいたことから距離をとって観察してから昼食のため、一旦宿に戻り、戸隠高原ツアーの隠れた目玉である戸隠蕎麦をいただき、最後の2時間ほどは歩くことに疲れたことから、ある場所の狭い範囲の中で、たまたま繁殖行動中のオオアカゲラ、ゴジュウカラを観察することにしました。いずれも一定の距離感を保って観察することにより、親鳥は頻繁にやってきてくれました。ゴジュウカラは動きが良くせっせと巣としている樹洞に餌を運んでいました。オオアカゲラは1時間に1回程度ではありますがオスとメスを同時に見ることができました。そして最後はここまで見ることができていなかったキバシリの姿も堪能することができ、最後の最後は針葉樹の梢に止まって鳴いているサンショウクイを観察してやや汗ばむような陽気の探鳥を終えました。

今回の初夏の戸隠高原は両日ともお天気に恵まれたことがとにかく幸いでした。目玉であるクロツグミは良い感じでさえずっている姿を何回も見せてくれ、早朝にはマミジロ、ジョウビタキにも出会うことができました。そして新緑の美しい林ではキビタキ、コサメビタキ、ニュウナイスズメ、アオジ、ノジコ、サンショウクイ、アカハラなどが続々登場し、アカゲラ、オオアカゲラ、ゴジュウカラ、キバシリ、コサメビタキ、ニュウナイスズメに関しては繁殖行動の一部を見ることもできました。今後も事前、当日の検温および健康観察をお願いしながらの運行となりますが、ぜひご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ノジコ 撮影:AM様

 

アカハラ 撮影:岩田精一様

 

キビタキ 撮影:AM様

 

オオアカゲラ 撮影:岩田精一様

 

アカゲラ 撮影:AM様

 

オオアカゲラ 撮影:AM様

 

マミジロ 撮影:AM様

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