【ツアー報告】タカ渡る白樺峠と渡りの小鳥たち 2018年9月25日~26日

(写真:ハチクマ 撮影:日下部桂子様)

秋といえばタカの渡り観察を外すわけにはいかないでしょう。バードウォッチングにはある一定期間しか見ることができないものが多数あり、その代表と言ってよいのが秋のタカ渡りで、一年のうちでも見られる最適な期間はわずか半月ほどしかありません。ただしタカ渡りは天候に大きく左右され、天候が悪いとほぼ見ることができないというリスクがあります。そのためツアー前には毎日何回も何回も天気予報を見る生活となります。今回は残念ながら25日、26日ともに天気予報は雨マークが並びどうなることかと心配になりましたが、毎年毎年白樺峠の天気予報は行ってみないとわからないという印象があるため少々期待しての出発となりました。

25日、早朝に天気予報を確認しましたが天気予報はやはり雨。まだ雨は落ちてはいないものの曇り空の下、予定通り新宿駅を08:00に出発しました。車窓から外を眺めているとまだまだ雨が落ちてくる様子はなかったものの、とうとう岡谷駅からは雨が降り始めてしまいました。そのまま松本駅に到着し、合流後はバスにて一路、乗鞍高原方面に向かいました。途中にある道の駅で一旦休憩の時間をとり、その間に現地に連絡を入れました。まず本来の目的地である白樺峠は雨と視界不良のため断念することにし、畳平に連絡を入れてみましたが、とりあえず通行止めはなく雨も止んでいるとのことでこの日は白樺峠を断念して畳平に向かうことにしました。ただ雨のため観察機材準備ができないことから宿に連絡を入れたうえでまずは宿に向かい、ロビーをお借りして観察機材や雨具の準備をしてから畳平に向かいました。エコーラインを進むと幸い雨は降っておらず、どうやら最悪の状況ではなさそうでした。ただ霧はまだ残っていたため視界が心配でしたが、ライチョウを見ることを考えると決して悪い状況ではありませんでした。そして間もなく駐車場というところで意外にもパッと視界が開けました。到着後は時折流れてくる霧の間からナナカマドの紅葉を見ながら歩きました。途中のハイマツ林ではホシガラスが元気に飛び回ってはハイマツの実をせっせと集める様子が見られ、その後も飛翔する姿など何度も何度もその姿を見ることができました。そしてゆっくりと歩いていると、足元もハイマツからライチョウがひょっこりと顔を出してくれました。残念ながらすぐにハイマツに隠れてしまいましたが、なんとかライチョウの姿を見ることができ、次第に薄暗くなってくる畳平を後にしました。宿に戻った後は思いのほか冷えた体を温泉で温めていただいてから夕食とし、夕食後は少々時間をいただいて翌日のタカ観察に備えてタカの識別講座などを行いました。結局、この日は悪天候のためタカ観察はなかったようで公式カウントは発表されていませんでした。夜は翌日の天気予報が心配だったため、遅くまで天気予報を見ていましたが、一部の天気予報で晴れマークが出ていて期待が持てました。

26日、05:30に目を覚ますと外は小雨が降っていてうっすらと霧がかかっていました。この日は06:00から宿周辺での早朝探鳥を予定していたため時間よりもやや早めに外に出ましたが、残念ながらまだ霧雨模様でした。小鳥たちは雨が上がると一斉に動き出し、それに合わせて声が聞こえてくるのですが、この日はまだまだ動きを感じることができませんでした。そのため出発を30分遅らせて待機していただき、ようやく雨があがった06:30頃から探鳥を開始しました。歩き出すとようやくヒガラの声が聞こえましたがまだまだ霧がありました。乗鞍観光センター裏まで行ってようやくカケスのにぎやかな声が聞こえ、この秋よく見かける数羽のカケスの小群の姿を楽しむことができました。また霧に包まれた林からはモズやウグイスの声が聞こえ、ススキのある場所ではホオジロの成鳥が幼鳥に餌を与える場面を見ることができました。そしてこの辺りからようやく空が明るくなり始めると、それに合わせるように小鳥たちの動きもよくなり、ヒガラとコガラとシジュウカラの混群が元気よく動き始め、カラマツ林では2羽のエゾビタキと1羽のサメビタキがてっぺんに止まっていたため望遠鏡を使って観察しました。サメビタキはじっくりと見ることができませんでしたが、エゾビタキはその後、何回もその姿を見せてくれ、フライキャッチをしたりして楽しませてくれました。そして比較的距離感がよかったことから胸の縦斑も見ることができました。付近ではアカゲラのメスの姿もあり、いつの間にかオスもやってきてくれ、翼が青いオオルリのオスの幼鳥の姿もありました。やや遅れましたが一旦朝食のために宿に戻った頃には、青空の範囲が見る見る広がってきたことから朝食後には白樺峠に向かいました。バスで林道を走っているころからはどんどん晴れ間が広がり、白樺峠タカ見の広場に到着した10:00頃には天気予報を完全に覆すような秋空でした。我々のタカ観察はお好きな場所で観察していただけるようトラベルイヤホンを使用しています。これがあればガイドの声を即、聞くことが可能なため出現状況や識別ポイントをリアルタイムで共有することができ、また大声を出さなくてよい点も助かります。対岸の尾根にはやや雲がかかっていましたが早速、10:30に5羽ほどのハチクマが眼下の林から舞い上がり、10:40にはツミにモビングされながらハチクマが飛びました。11:00にはどこから来たのか3羽のハシブトガラスが飛び、11:10には逆光側ながら数羽のハチクマがタカ柱を作りました。11:30には10羽ほどのハチクマが再び眼下の林からタカ柱を形成しながら舞い上がり、11:35には2羽のノスリが絡まりあうように飛翔しました。11:40にはこの日初となるハリオアマツバメの群れが高速で飛翔し、11:45には数羽のハチクマが左側から舞い上がり我々の真上を通過していき歓声が上がりました。12:00には長野県内の別の観察ポイントで800羽ほどのタカの渡りが観察されたとの情報がもたらされ期待が膨らみました。12:20には先ほどのノスリと思われる2羽が飛び、12:30には低くハチクマのオスが飛翔したため青白い顔の色がわかりました。そして12:40には珍しく2羽のツミが低く飛んでくれ、12:50からは松本方面を背景にタカ柱が連続して上がり盛り上がり13:05と13:20に出現したタカ柱は30羽ほどの塊だったことから見ごたえがありました。ただこの時間帯は舞い上がったタカたちが低く右側に飛翔したことから、我々の真上を通過することはありませんでした。そして14:00、14:05には当地では珍しいハヤブサが飛び、その後はやや風が強まって肌寒くなってきました。対岸の尾根には見る見るうちに独特の形をした雲がかかり、いつしかタカの動きも止まってしまいました。ただそろそろ帰ろうかと思った15:20。右側の白樺林の裏を通過するように巨大な猛禽類が飛翔したかと思うと、我々の目線ほどの高さを悠然と舞い始めました。当地ではあまり見かけないイヌワシが最後を締めくくってくれたのでした。結局この日の公式カウント数はサシバ286羽、ハチクマ137羽、そのほかを含めた総数は524羽でした。

毎年秋恒例の白樺峠でタカの渡りを観察するツアー。毎年のことながら天気予報に泣かされました。ただ前回同様に今回も天気予報が良いほうにはずれ2日目には想像もしていなかった真っ青な秋空が広がりました。おかげさまでサシバ、ハチクマといった秋のタカ渡りの主役が出そろってくれ、ツミ、ノスリ、ハヤブサ、そしてハリオアマツバメ、アマツバメが飛び、最後の最後には悠然と飛翔する巨大なイヌワシがツアーを締めくくってくれました。また乗鞍高原ではエゾビタキ、サメビタキ、オオルリ、畳平ではライチョウ、ホシガラスに出会うこともできました。来年以降も事前のタカ渡り識別講座、現地でのタカ渡り講座、またタカ観察ではトラベルイヤホンを使用して出現状況や識別ポイントをリアルタイムで案内することを基本にツアー企画したいと思います。タカ渡りは天候のリスクはありますが、同じシーンは2度ありません。毎回新しい発見や意外性のある出会いに期待してまたぜひお出かけください。この度はお疲れ様でした。

石田光史

ホシガラス 撮影:中村由紀子様

 

アカゲラ 撮影:須崎明男様

 

ハチクマ 撮影:日下部桂子様

 

 

ハヤブサ 撮影:中村由紀子様

 

エゾビタキ 撮影:須崎明男様

 

ハチクマ 撮影:日下部桂子様

 

コガラ 撮影:須崎明男様

 

オオルリ 撮影:日下部桂子様

 

ノスリ 撮影:須崎明男様

 

ハチクマ 撮影:日下部桂子様

 

ハチクマ 撮影:須崎明男様

 

ゴジュウカラ 撮影:須崎明男様

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