【ツアー報告】東シナ海の秘島 平島 2023年4月21日~26日

(写真:カンムリカッコウ 撮影:山尾文明様)

4月21日、鹿児島港南埠頭に全員集合。「フェリーとしま2」に乗船。「フェリーとしま2」は1,953トン、全長93.4mのフィン・スタビライザを装着した立派なフェリーである。波が高くて欠航かもしれないという話だったが揺れはほとんど無く快適に眠る。

4月22日、早朝に甲板で鳥見を開始、数百羽のオオミズナギドリがずっと流れていく。カツオドリがフェリーに付いて来てみなさんで盛り上がる。諏訪之瀬島へ近づくと火山灰が降っていて、今も活火山の島であることを思い知らされる。平島に到着。民宿へ向かう途中、ツバメ類がたくさん飛び、あちこちにキビタキがいるので鳥は入って来ているようだ。3年ぶりに訪れた私を島の人たちは覚えてくれていてみんな笑顔で声を掛けて挨拶をしてくれる。いつもの民宿に荷物を置き鳥見を開始。コムクドリの群れやヒヨドリの群れが飛び回り、亜種サンショウクイがあちこちにたくさんいる。ノジコ、キビタキ、オオルリもたくさん見られ、早速、愛想の良いヤツガシラがいてみなさんで盛り上がる。何百羽のツバメが渡ってきて、中にイワツバメ、アマツバメが混じる。昼食後、マヒワ、マミチャジナイ、コホオアカなどを見ていると、民宿の親父さんから電話が鳴る。なんと、今、出てきた民宿の庭にカンムリカッコウがいて、他の民宿の人たちがみんなで見ているというではないか。慌ててみんなそれぞれ探すが3人がチラッ見られただけであった。その後、ズアカアオバト、アオジ、サギ類などを確認して観察終了。本日の確認種は40種。夕方、週に3日だけオープンする「あかひげ温泉」へ行く。皆さんで温泉に浸かりながら地元の人と雑談するというのもなかなかないいものである。

4月23日、晴れ、早朝に宿の周りを歩く。ビンズイがたくさん入っててあちこちにいて、センダイムシクイが囀る。亜種サンショウクイも昨日よりさらに増え3050羽の群れが飛び回り、亜種リュウキュウサンショウクイもいる。朝食後、数人のお客様とアカヒゲの雄をじっくりと堪能する。男女諸島から奄美諸島にいる亜種アカヒゲは今年、別種となるが、奄美諸島より北のものは夏鳥として渡来し、サイズが大きく、中でもトカラ列島のアカヒゲが最も美しいと思う。シマアジ、バン、アカハラ、メボソムシクイなどが見られ、キビタキ、オオルリもかなりの数がいる。コムクドリの50100羽の群れも飛び回っている。ところが、午後になると鳥が出て行ってしまったのかどんどん減っていく。それでもヤツガシラは少なくとも3羽はいるのでみなさんでじっくりと観察、撮影する。カラアカハラ雄、アカハラダカの綺麗な写真を撮られたお客様がいてみなさんに羨ましがられる。本日、島にいるバーダーは誰もカンムリカッコウを見ていないので抜けてしまったようだ。本日の確認種は45種。夕食は民宿の息子が釣って来た新鮮な魚と今が旬の琉球竹の筍。これが美味しい。

4月24日、今にも降りそうな曇りの中、早朝に出発。アカコッコ1羽が囀っている。クロツグミを見るが鳥がほとんど抜けたようでシーンとしている。朝食後、「ミヤマヒタキがいるよ!」と島にいるバーダーから電話がある。ありがたいお電話に感謝しつつ、あちこちに散らばっているお客様を全員探して歩き出す。そして、全員でじっくりとミヤマヒタキをたっぷりと堪能したのである。ところが、そんな盛り上がっている中、島内放送で「今夜、鹿児島を出る予定のフェリーは海が荒れているので26日となる」と言う。ゲッゲッ、なんと2日間も延泊となってしまうのだ。急いで、ミヤマヒタキのポイントから離れて会社へ電話をしていると、今度は頭上の木で亜種リュウキュウサンコウチョウの尾の長い雄がフライング・キャッチをしているではないか。慌てて、みなさんを呼んで、こちらもじっくりと観察、撮影したのである。昼食後、別の宿に泊まっているバーダーからカンムリカッコウを見たという情報を頂く。みなさんそれぞれに探しに行くが、出来ることなら全員が見て、今夜、みんなの笑顔で乾杯したいのだ。すると別のバーダーからカンムリカッコウを見たという連絡がきた。私は出来るだけみんなを集めて待つことにした。暫く待つが動きはない。すると、直ぐ坂の上で見たというお客様がいた。そこで、ポイントを替えて待つと、その感が的中し、広場に出て来てシャリンバイにとまる個体をみなさんでじっくりと観察、撮影する。海外でも藪の中でチラッとしか見られないのにオープンな場所で採餌をする。ところが、この場に2名のお客様がいないのだ。私は、みなさんを置いて2名を探しに走っていると、民宿の息子から電話があり、また、泊まっている民宿の庭にカンムリカッコウが出ているという。急いで民宿へ行くと、見ていなかった2人がいて「あまりの近さに写真も撮れなかった」と笑っていた。時間的に考えるとカンムリカッコウは2個体がいたようなのだ。しかし、これで、本日はミヤマヒタキとカンムリカッコウを全員で堪能したという凄い日になったのである。ちなみに、ミヤマヒタキは午前中で抜けてしまい、急いで見に行って本当によかったと全員が胸をなでおろしたのであった。本日の確認種は38種。

4月25日、夜中から暴風雨。早朝に小降りになったので民宿の周辺を歩く。風が強く鳥影がほとんどない。遠くからアカコッコの声が悲しく聞こえる。トカラ列島の鳥たちは、ツバメ、モズ、ウグイスなどの本土系の種とズアカアオバト、アカヒゲ、リュウキュウメジロの琉球系の種、さらにアカコッコ、イイジマムシクイのような伊豆諸島の種が混在するという不思議な島なのだ。しかし、アカコッコは伊豆諸島のものとは囀りが全く違っていて初めは何か分からなかったほどである。朝食後、風は強く雨が降ったりやんだりの中、島内を歩く。サシバ1羽が風に流されていく。明らかに鳥が減ってしまったがアカヒゲとヤツガシラがいるので何とか盛り上がる。150羽程のコムクドリの群れが飛び回るがとまらない。昼食後、あれだけいたツバメやサンショウクイがほとんどいなくなり、ビンズイだけが残っている。鳥たちの春の渡りはとにかく早く繁殖地に着きたいので、こんな所でのんびりとしている場合ではないのだ。電線にとまっている150羽程のコムクドリを見付けて、何かいいものが入っていないかとドキドキしながら端から見ていくが、全てコムクドリであった。その後もぱっとしないまま、本日は終了。本日の確認種は38種。

4月26日、早朝に小雨の中を宿の周りを歩く。風は弱くなり、道路にアオジやノジコが降りてて、チュウサギやダイサギがぱらぱらと入って来る。昨日よりも鳥の声がする。朝食後、雨も上がり風も止み、島内を歩くと、キビタキの雄若鳥やシロハラがたくさん入って来てあちこちにいる。ツバメチドリ、ミゾゴイなどの新しい種をみる。ヤツガシラも34個体が入って来ているようでいろんなところで見る。昼食後、久々に晴れてきたので牧場へ行く。セッカ、イソヒヨドリ、タカブシギ、ツグミ、コホオアカなどを見ていると亜種タイワンハクセキレイ3羽とレンガ色の綺麗なムネカアタヒバリ2羽がいてみなさんでじっくりと観察、撮影する。亜種シベリアアオジもたくさん入って来たようだ。展望台にいると“ボンッ”という音がしたので音の方を見ると、20km離れた諏訪之瀬島が噴火して噴煙を上げていた。人生で火山の噴火の瞬間を見ることってそうそうないだろう。海からツバメがたくさん入って来て、キビタキ成鳥雄がたくさん道路にいる。こういう島に来ると、珍鳥狙いだけでなく、いわゆる普通の鳥たちが日替わりどころか朝と夕方で増えたり減ったりする渡りを目の当たりにすることができて感動するのである。本日の確認種は44種だが個体数が多い。

4月27日、晴れ、早朝に宿の周辺を歩く。アトリ、マヒワ、アカハラがたくさん入って来てあちこちにいる。種数だけでなく鳥の個体数が増えて、島が賑やかな感じとなる。朝食後、この島に15年程通っているが初めて出会った珍鳥カワラヒワを観察、撮影する。昨日よりキビタキがさらに増えて、愛想の良いアカヒゲが飛び回り、ノゴマの雄も出て来て囀る。ノビタキ、ミヤマホオジロ、亜種ホオジロハクセキレイ、カラアカハラなどを観察、撮影していると綺麗な繁殖羽のアカガシラサギが海から入って来た。お昼を食べに宿に戻る途中で飛んでいるムラサキサギを発見。昼食後、降りているムラサキサギを観察、撮影。ムジセッカやキマユムシクイがたくさん入って来てあちこちにいる。ムクドリ、コムクドリの群れも飛び回り、シロハラホオジロ、キマユホオジロ、ヤブサメなども見られて鳥が増えたのを実感する。本日の確認種はこのツアー最多の53種。ところが、夕方になると、あれだけいたキビタキ、ビンズイをほとんど見かけなくなり、鳥たちはどんどん出て行ったようだ。

4月28日、朝は自由行動。みなさんそれぞれ散策をしたり、アカヒゲの写真を撮ったりしてから朝食。8:20 「フェリーとしま2」は鹿児島に向けて出港。オオミズナギドリ、カツオドリなどを見ながらの航海だが南の海は心が折れるほど鳥が少ない。錦江湾内でスジイルカ8頭がフェリーの横でジャンプをする。18:00鹿児島港に接岸。鹿児島市内のホテルへ向かったのである。

4月29日、6:30朝食、7:00出発。そして鹿児島空港から飛び立ち、長い旅は終わったのである。ミヤマヒタキ、カンムリカッコウという珍鳥だけでなく、鳥たちが渡っている様子が実感できた平島でした。みなさま、長旅となってしまい大変にお疲れ様でした。

宮島仁

ミヤマヒタキ 撮影:福渡毅様

 

アカハラダカ 撮影:横さん様

 

カツオドリ 撮影:西川恵美子様

 

カンムリカッコウ 撮影:山尾文明様

 

アカヒゲ 撮影:福渡毅様

 

アカガシラサギ 撮影:横さん様

 

ノジコ 撮影:西川恵美子様

 

ヤツガシラ 撮影:福渡毅様

 

ミゾゴイ 撮影:横さん様

 

サンショウクイ 撮影:西川恵美子様

 

リュウキュウサンコウチョウ 撮影:福渡毅様

 

シロハラホオジロ 撮影:横さん様

 

コホオアカ 撮影:西川恵美子様

 

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