【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2023年5月31日~6月1日

(写真:チゴモズ 撮影:富川誠様)

梅雨入り間近の時期ですが5月末のこの時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すと長年にわたってこういった風景が全く変わらない点は驚きで、それだけに現地の環境にも配慮し、小型バスを使ったかなり小さなツアーにしています。タイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するピンク色のタニウツギや紫色の桐の花も見事な時期です。今年は季節外れの台風の発生で天気に心配がありましたが、進行がゆっくりだったことから今回は影響がなく、訪れる現地は概ね天気は良く蒸し暑くなるとの予報が出ていました。

31日、この日の東京都内は朝から曇り空で小雨が落ちてきていました。ただご集合は順調に済んだため東京駅前を予定通り08:00に出発して、ひとまず関越自動車道を走り新潟県を目指しました。午前中はほぼ移動のため、車内では今回のツアーで見られる可能性が高い種について解説しながら進み、途中、サービスエリアに立ち寄った頃には雨はなく空には一部で青空も見えてきていました。その後、再度サービスエリアに立ち寄ると風は冷たかったもののすっかり天気は晴れに変わっていて、周辺の高原は見事な景観でした。ただし探鳥地に行くにはここからまだ峠を二つほど越えなくてはならないためさらに進み、到着時にはちょうどお昼頃だったことから一旦、昼食の時間とし、合わせて観察機材の準備もしていただきました。ここでは毎年のことですが林内からアカショウビンのさえずりが聞こえ、ほかにもキビタキが歌い、ヤマガラ、サンショウクイが飛び回っていました。昼食後は早速、チゴモズを探すことにしました。この鳥を見るには一度の観察ではうまくいかないことがほとんどのため何回も行けるようにしています。まずは過去に姿があった場所に行き一時間程度様子を見てみることにしました。早速、のどかな里山風景の中をつがいと思われる2羽のサシバが飛び回り、時には「ピックイー」という独特の声で鳴きながら飛んでいることもありました。またハシブトガラスがけたたましく鳴いたため見てみると、複数のハシブトガラスに追われてクマタカが飛んでいましたが早々に林の向こうに消えてしまいました。ほかにも電線に止まるコサメビタキ、ホオジロの姿がありましたが残念ながらチゴモズの気配がないため少々場所を変えてみることにしました。ここではまずモズがやってきて盛んに餌を探し、ヒヨドリが巣材集めをしていました。そして対岸の森からはクロツグミの朗々としたさえずりが響いていてうるさいくらいでした。そして到着して一時間ほど経った頃、ようやく遠くからチゴモズの声が聞こえてきたため探してみると高い杉の木のてっぺんでけたたましく鳴いているチゴモズのオスがいました。まずは遠くから望遠鏡で観察し、その後は少しずつ距離を縮めてみることにしました。幸いなことにこの個体はこれといって警戒することなく鳴き続け、時には低木に止まったりしてくれました。そのため思いのほか良い条件で観察することができ、最後は周辺を並んで飛び回る、サシバ、ハチクマも見ることができました。時間も経ってしまったことから一旦、休憩を挟んでその後は主にブッポウソウが見られている場所をめぐってみることにしました。最初のポイントでは気配はなく、その後に訪れたポイントでも気配はありませんでしたが、賑やかなエナガの親子が通過していき、サシバが悠々と旋回飛翔していました。そして最後に訪れたポイントでは幸いにも3個体のブッポウソウに出会うことができ、フワフワと飛び回る姿や夕方の順光に照らし出された姿をたっぷり見ることができ、飛翔時に見える青斑もはっきり見ることができました。また観察中には間近にサシバが止まり、遠くからはカッコウの声が聞こえてきていました。その後は宿に向かい夕食をいただき、夕食後はナイトウォッチングを開始しました。薄暗くなってくる中、遠くからはホトトギスの声が聞こえ19:30頃からはいよいよヨタカの声が聞こえてきました。声は次第に近くなり期待が高まりましたが、よく止まる場所にはやってくることはなく、結局姿を見ることはできないまま20:00に探鳥を終えました。

6月1日、この日は早朝から快晴の中、宿からわずかな距離にある林道に向かいました。到着すると早速、森の奥からアカショウビンの声が響いていました。坂道を下っていくとサンショウクイが飛び回り、オオアカゲラがブナの木に止まっていました。さらに歩くと間近にさえずっているキビタキを珍しくじっくりと見ることができ、ふいに道路に降りてきたクロツグミのオスを一瞬見ることができました。一旦戻って朝食をいただいた後は再びブッポウソウの観察に向かいました。この時間は昨日とは異なる場所を歩いてみましたが、早速、枯れた木のてっぺんに1羽のブッポウソウがポツンと止まっていました。林まで行くとここではどうやら2羽のブッポウソウがいるらしく、周辺を飛びまわったり、仲良くブナの木に止まったりしていました。しばらく観察した後は休憩を挟んで再びチゴモズが過去に見られている場所をめぐってみました。最初に訪れた場所ではチゴモズの姿はありませんでしたが、賑やかなエナガの幼鳥の群れが飛び回り、ヤマガラの親子の姿もありました。その後は一旦、昼食の時間をとり、その後も別のポイントに行ってみました。バスを降りると針葉樹の林からサンコウチョウの軽快なさえずりが響き渡り、湿地帯ではオオヨシキリがけたたましく鳴いていて時には木に止まってさえずっていました。さらに歩くと針葉樹の枝でさえずっていたノジコが場所を電線に変えてしばらくさえずってくれたことからレモンイエローの美しい姿を観察することができました。またこの日はホトトギスが元気で、さえずりながら飛び回っていて、イカルのつがいの姿もありました。そして最後は時間が押してしまいましたが、まだ残雪があるブナ林でミソサザイのさえずりを聞いて探鳥を終えました。

天候が安定しないことが多い時期のツアーではありますが、今回は両日共に穏やかな陽気となり、日中は汗ばむような時間帯もありました。長らく観察をしてきたブッポウソウは今回は個体数が多い印象で、特に初日の夕方は光線が良い時間帯のため、緑、紺、黒、赤の独特のグラデーションを見ることができ、特に美しく見える飛翔形もたっぷり観察することができて幸いでした。また年々見づらくなっている印象のチゴモズもたった1個体ながらなんとか出会うことができ、今回はけたたましく鳴く様子が見られたほか、良い距離感で観察することができました。また当地を代表するノジコもレモンイエローの美しい姿とさえずりを堪能することができ、クマタカ、サシバ、ハチクマといった猛禽類、またキビタキ、イカル、サンショウクイ、オオアカゲラなどが見られ、声だけでしたがアカショウビンやクロツグミ、サンコウチョウ、ヨタカも確認できました。今後も当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが保たれるようご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ブッポウソウ 撮影:富川誠様

 

ノジコ 撮影:富川誠様

 

サシバ 撮影:富川誠様

 

オオアカゲラ 撮影:富川誠様

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