【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森(再追加設定)2023年6月7日~8日

(写真:チゴモズ 撮影:高橋尚之様)

梅雨入り間近の時期ですが5月末のこの時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すと長年にわたってこういった風景が全く変わらない点は驚きで、それだけに現地の環境にも配慮し、小型バスを使ったかなり小さなツアーにしています。タイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するピンク色のタニウツギや紫色の桐の花も見事な時期です。今年は季節外れの台風の発生で天気予報を気にしながら状況を見ていましたが、幸いにも前日までの雨は上がり、ちょうど天気が良くなるタイミングで出発できることになりました。

7日、前日の雨が朝まで残ってはいましたが、気になるほどではなく、またこの後は天気が回復してくるとのことで安堵して東京駅前に向かいました。集合場所は雨上がりといった感じで水たまりが残ってはいましたが幸い雨は上がっていて無事、時刻通りに出発することができました。出発後は関越自動車道を走り、午前中はほぼ移動のため車内では今回のツアーで見られる可能性が高い種や前回、前々回の鳥の状況について解説しながら進み、途中、サービスエリアに立ち寄った頃には雨は完全に上がり、さらに進んだサービスエリアでは青空が覗いてきていました。ただ、ここからさらに二つの峠を越えなくてはならないことからさらに走り、まずは現地に向かいました。到着時にはちょうどお昼頃だったことから一旦、昼食の時間とし、合わせて観察機材の準備もしていただきました。昼食中にも周辺からはキビタキのさえずりが聞こえていたため、昼食後は森の中を歩いてみることにしました。今年はここまでアカショウビンのさえずりがよく聞こえていましたが、この日はアカショウビンの声はなく、アオゲラやカケスの姿を見るのみでした。その後は少々蒸し暑くなってくる中、まずはチゴモズの観察に向かいました。過去にはなんとか見られてはいますが、かなりの時間を要することから、まずは1時間ほど状況を見てみることにしました。周辺では今年よく見かけるサシバのつがいが飛び回り、1羽のハチクマも飛んでいきました。またクロツグミのさえずりは延々聞かれ、よく聞いてみるとウグイスやトビの声を混ぜてさえずっていました。そして1時間をやや過ぎたかという頃、ようやくチゴモズのオスが地上から飛び立って止まり、よく見ると間近にはメスの姿もありました。しばらく見ていると盛んに餌を捕っては低木に止まるといった行動を繰り返していて思った以上にたっぷりと観察することができました。またサンショウクイのつがい、イカルのつがいも飛びまわっていて楽しませてくれました。その後は一旦、休憩を挟んでブッポウソウの観察に向かいました。この時間は天気さえよければ順光で見られるためちょうど良いタイミングなのです。到着すると早くも数羽のブッポウソウが飛び回っていました。光線も良いため緑、青、黒、赤の独特のグラデーションを楽しむことができましたが、この日はなぜか数羽のブッポウソウがかなり高い位置を急上昇、急降下するように鳴きながら飛び、ディスプレイフライトのような飛翔をしばらく楽しむことができました。観察後は宿に向かい、夕食をいただいた後はヨタカの観察を行いました。この日は空も明るく条件もまずまずで、まだ薄明るいうちからヨタカが連続して鳴き始めました。声は近くなったり遠くなったりとかなり期待感がありましたが、残念ながらよく止まる場所にはやって来ず、その姿を見るには至りませんでした。

8日、この日は早朝から青空が広がる中、早朝に出発して前回、アカショウビンが見られた場所に行ってみました。朝から数羽のブッポウソウが飛び回り、アオバト、カケスも我々の目前を飛んでいきました。またつがいと思われる2羽のアカゲラが追いかけっこをするように現れて最後はドラミングをしている姿を望遠鏡で見ることができました。またコサメビタキが頻繁にやってきて巣材を集める様子を間近に見ることもできましたが、この日は残念ながらアカショウビンの声を聞くことなく早朝の探鳥を終えました。その後は一旦宿に戻って朝食をいただき、この日は再度別の場所を歩いてブッポウソウを観察しました。小径を進むと枯れ木ではホオジロがさえずり、さらには高い枯れ木に止まるブッポウソウも見ることができました。またここでもブッポウソウのつがいが飛び回り、ちょうど目線ほどの電線にブッポウソウが止まってくれたことから、良い光線、良い距離感で観察することができました。森の中に入るとキビタキ、クロツグミがさえずり、キバシリを見ることもできました。観察後は休憩ついでにお買い物もしていただき、その後は別のチゴモズのポイントがあることから立ち寄ってみました。ここでは残念ながらチゴモズの気配はありませんでしたが、水田ではオオヨシキリが賑やかにさえずり、当地の代表種でもあるノジコにようやく出会うことができ、杉の木でさえずるレモンイエローの美しい姿をじっくりと観察することができました。そして遠くからはアカショウビンのさえずりが響いていました。その後は一旦、昼食の時間として、午後からは再びチゴモズを観察することにしました。残り時間がわずかだったことからあまり期待していませんでしたが、この日は1時間が経たないうちにチゴモズのオスが現れ、地上で餌を捕ったり杉の木や電線に止まったりしてかなり活発に動き回り、いつの間にかメスもやってきてつがいで見ることができました。また付近ではわずかな時間ながらオオルリのオスが杉の木のてっぺんでさえずる姿が見られ、相変わらずサシバのつがいは繰り返し旋回飛翔をしていました。そして最後は上空を飛んで行くブッポウソウも見ることができ、曇り空ながらどんどん蒸し暑くなってくる中、探鳥を終えました。

今回はちょうど雨が上がり、天気予報が良くなるタイミングで出発することができ、快晴とはいかなかったものの雨に降られることなく探鳥することができました。ブッポウソウは今回は緑、紺、黒、赤の独特のグラデーションを見ることができ、数羽がかなり長時間にわたってアクロバットな飛翔をするディスプレイフライトのような行動を見ることができました。またチゴモズに関しては今回、つがいと思われる2羽が見られ、声はほぼ聞けなかったものの、かなりじっくりと時間をかけて観察することができました。またリクエストが多かった当地を代表するノジコもレモンイエローの美しい姿とさえずりを堪能することができ、オオルリやキビタキ、サシバ、ハチクマ、イカル、サンショウクイ、アカゲラなどが見られ、声だけでしたがクロツグミ、アカショウビンも確認できました。今後も当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが保たれるようご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ブッポウソウ 撮影:IH様

 

チゴモズ 撮影:吉田むつみ様

 

サシバ 撮影:高橋尚之様

 

ノジコ 撮影:IH様

 

コサメビタキ 撮影:吉田むつみ様

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