【ツアー報告】シャチとヒグマが棲む世界遺産・知床 ダブルクルーズ 2019年6月14日~16日

(写真:シマフクロウ)

ここまで野鳥だけを観察するツアーを企画し続けてきましたが、昨年からは野鳥を含めた野生動物、またその景観などもお楽しみいただくといった視点で世界遺産をめぐるツアーを企画することにしました。その第一弾がこの知床です。昨年は主役のシャチとヒグマ、そしてタンチョウやオジロワシ、ギンザンマシコ、シマフクロウ、そしてキタキツネやエゾシカといったさまざまな生き物たちに出会え、そしてさらにこのツアーの中心である羅臼町の食文化にも触れていただきたいと思い、お土産としてお持ちいただく羅臼昆布をお客様自身で切っていただく、羅臼昆布ヒレ刈り体験という企画も加え、大好評をいただきました。ただ今回は出発直前に低気圧が発生してしまい、次第に北海道に近づいてくるという状況の中での出発となってしまいました。

14日、天気予報では午後から知床は晴れという予報が出ていたため期待して羽田空港を出発しましたが、着陸前に外を見ると今にも雨が落ちてきそうな曇り空でした。到着後にはさらに悪いことが続き、この日の午後のクルーズが強風のため欠航になったとの連絡が入ってしまいました。そのため急遽、空港内で観察機材の準備をして、最終日に行く予定だった場所に向かいました。空はどこまでも曇り空でやや風がある状況で、その風が黄色いエゾカンゾウの花を揺らしていました。風と寒さと時間帯のせいか、ほとんど鳥の声はしませんでしたが、どこからともなくシマセンニュウのさえずりが聞え、風に流されるようにハリオアマツバメが飛んでいきました。さらい行くとテトラポットに止まるオジロワシの姿があり、さらに先の原生花園では3羽のタンチョウが湿地を歩き、2羽のオオジシギが飛び回っていました。少し歩いて行くとノビタキのオスが間近に止まり、どこからともなく飛んできたカッコウが間近を飛んで行きました。その後はオオジュリンのオスとメスがハマナスに止まってじっくりとその姿を見せてくれました。この後は天候のせいでどんどん暗くなってきたため、少々早めに宿泊先に向かいました。この日は夜にシマフクロウ観察があることから到着後は一旦お部屋に入っていただき、その後は再度ご集合いただき、オオルリやキビタキのさえずりが聞える中、観察場所に向かいました。到着後は見る見る暗くなる中、観察機材準備をしていただきシマフクロウの出現を待ちました。ただこの日は雨、風といった悪条件ではなかったものの結局シマフクロウは現れず観察を終了しました。

15日、低気圧が接近しているとのことから時間が経てば経つほど海況が悪くなるだろうとの予想で、この日08:30から乗船予定だったヒグマ観察クルーズを06:00出港に急遽変更しました。そのため朝食前の05:00に宿を出て相泊港に向かいました。幸い思ったほど風は強くはなく海況もそれほど悪くはない印象でした。現地では早速準備に取り掛かり、このクルーズを運行してくださる「知床らうすリンクル」のスタッフの案内で2隻運行で出港しました。前日の運行時は全身すぶ濡れだったと聞いていたのでかなり警戒していましたが、思った以上に海況は良くスムーズに運行して行きました。この日の知床半島は刻々とその表情が変わり、出港時はどんよりとしていましたが次第に霧が出てきたかと思うと、時折陽射しがあり断崖が橙色に輝いていました。海上には多くのウトウの姿があり、まずは斜面で餌を探す2頭のエゾシカの姿があり、その後は岩礁帯で繁殖中のウミネコ、オオセグロカモメ、ウミウの姿を間近に見ることができました。そしてようやく断崖にへばりつくように餌を探すヒグマの姿を見ることができ、僅かな時間ながらさらに高い斜面にはもう1頭のヒグマの姿がありました。ヒグマはのそのそと歩きながら斜面を移動していて一旦姿が見えなくなってしまったものの再びその姿を見せてくれました。ただここでかなり海況が悪くなり、波がかなり深くなってきたため折り返すことにして相泊港に戻りました。クルーズ後は一旦宿に戻って朝食をいただき、朝食後は予定通り知床峠を経由して知床五湖方面に向かいました。ただ出発するとすぐに深い霧となり、知床峠手前では道路を横切るヒグマの姿が見られ驚かされました。その後は雨、風も混じって大荒れとなってしまったため知床峠での探鳥は諦めて、そのまま知床五湖方面に向かいました。ただ峠を下って行くと霧は晴れ、見る見るうちに晴天となりました。そのため知床五湖フィールドハウスに順調に到着することができ、予定通り高架木道を歩きました。バスを降りると音を立てるような強風が吹き荒れ、アマツバメが風に流されるようにスイスイ飛んでいました。小鳥類の声はほとんどなく残念でしたが、知床五湖の一湖から雄大な風景を楽しむことができました。この後は昼食のために一旦宿に戻り、その後は幸い雨が落ちてはいない宿周辺を歩いてみました。ソングポストではオオルリが朗々と歌い、複雑な音色のキビタキやセンダイムシクイ、そしてヤブサメも歌い、繁殖中のヒガラがせっせと巣に餌を運んでいました。また川沿いではキセキレイ、そしてカワガラスの姿もじっくりと見られました。そして前日夜にシマフクロウが見られなかったことから、この日再度チャレンジすることにしていたため、この日の夕食後に予定していた「羅臼昆布ヒレ刈り体験」を夕食前に行うことにしました。この企画では羅臼昆布のヒレ刈りだけでなく、昆布についてのさまざまな解説をしていただきました。そしてもちろんそれぞれにヒレ刈りしていただいた羅臼昆布をそのままお土産としてお持ち帰りいただきました。その後は夕食をいただき、再度シマフクロウ観察に入りました。雨や風が心配されましたが幸い気になるほどではありませんでした。ただこの日もシマフクロウの気配がなく心配でしたが、ようやく近い距離感で鳴き交わしが始まりました。これはチャンスと気合が入りましたがシマフクロウはやってきてはくれませんでした。ただその後、ようやくメスと思われる個体がやってきて餌を捕獲するシーンを見せてくれ、一旦姿を消したものの直後にはオスと思われる個体がやってきて木に止まったり、餌を捕獲するシーンを見せてくれ2度目のチャレンジでようやくその姿を見ることができたのでした。

16日、昨夜からの雨はいよいよ本降りとなり、早朝から激しい雨と強風という最悪の天候でした。この日は早朝探鳥を予定していなかったことから07:30から朝食をいただき、知床ビジターセンターのオープンに合わせて出発しました。激しい雨だったことから館内を30分ほど見学していただき、シャチの骨格標本や昨夜見たシマフクロウの剥製、また知床の自然に関するさまざまな展示を見ていただいてから、こちらもリクエストが多かった道の駅しれとこらうすに向かいました。ここでも30分ほど時間をとって羅臼町だからこその海産物などをお土産としてご購入いただきました。この頃になると雨と風はさらに激しくなってしまいましたが、バス車内からでも動物たちをなんとか観察できるようにと、初日にも訪れた野付半島に向かいました。半島状になっているため海からの風はいっそう強くなり、小鳥類の気配はほぼありませんでしたが、たまたま餌を食べているエゾシカが間近に現れてその姿を楽しませてくれたほか、雨に濡れながらもノコノコ歩きまわるキタキツネがこちらをうかがうように見ていました。また最後は霧にかすむように湿原に佇むタンチョウの姿を見ることもでき、強風に押し流されるかのように野付半島を後にしました。

今回はたまたまタイミングを逸してしまい、皆様に一番にご覧いただきたいと思っていたシャチの姿は見られず残念でした。ただ、乗船時間を変更することによってなんとかヒグマクルーズに乗船することができ、険しい知床の山々で生きるヒグマの姿を見ることができました。また初日に出会うことができなかったシマフクロウは、急遽2度目のトライでなんとかその不気味な鳴きかわしを堪能することができ、またその後には闇夜からふわっと現れたシマフクロウの姿を堪能することができました。また野付半島ではタンチョウやオジロワシ、エゾシカ、キタキツネ、宿周辺ではオオルリやキビタキ、カワガラス、キセキレイなどの小鳥類も見られました。そして自然以外の部分でもこの羅臼町を知っていただきたいと思い企画している羅臼昆布ヒレ刈り体験もお楽しみいただけたようで何よりでした。次回、世界遺産をめぐるツアーは4月の小笠原を予定しています。巨大なザトウクジラのブリーチングや母島のメグロ、そしてアホウドリの新たな繁殖地である聟島をめぐります。またの機会、皆様とご一緒できますことを楽しみにしております。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

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