【ツアー報告】初夏の富士山 北富士演習場と富士山五合目 2023年6月11日~12日

(写真:キクイタダキ 撮影:坂東俊輝様)

野鳥の宝庫としてしられている富士山。亜高山帯の野鳥たちが間近に見られる富士山五合目は有名ですが、麓の森林帯はコルリの生息密度が日本一と言ってよい高さで、ほかにもキビタキ、センダイムシクイ、クロツグミ、ヒガラなどさまざまな小鳥たちが生息しています。今回はこれら亜高山帯の野鳥、麓の森林帯の野鳥たちを観察することに加え、新たに決められた日にしか入ることができない北富士演習場内で、ノビタキやホオアカ、コヨシキリ、カッコウ、コムクドリ、ビンズイといった草原性の野鳥たちも探す行程を加えて新たなコースを企画してみました。ちょうど梅雨どきということもあって事前に天気予報をチェックし続けていましたが、ちょうど梅雨に入ったこと、また今年はなぜか台風が発生してしまい、その台風が接近してくる中での出発となってしまいました。そのため初日はかなりの雨が降るだろうとの予報が出ていました。

11日、このツアーは東京駅前集合を通常のツアーよりも遅い09:00にして、遠方からのお客様にもご参加いただきやすくしています。ただこの日は天気予報が当たってしまったようで、昨夜からの雨はずっと降り続いていて東京都内は早朝から弱い雨が降っていました。集合場所も雨が降っていましたが、順調にご集合が完了したため予定よりも少々早くに東京駅前を出発することができました。バスは雨が降る中、中央自動車道を走り、車内ではこのツアーで見られる可能性が高い種の解説をしながら進みました。まずサービスエリアで休憩をとりましたが外を見ると雨はより激しさを増していました。休憩後は富士山に向かってさらに進みましたが雨はかなり激しくなりどうなることかと心配になりましたが、到着時は幸いなことに雨は小雨程度に変わっていました。休憩、そして観察機材の準備をしていただいた後はいよいよ北富士演習場に入りました。北富士演習場は基本的には日曜日しか立ち入ることができないため、通常であればオフロードバイクが走りまわっているのですが、この日は天候が悪かったせいか閑散としていました。ぬかるみを避けて安全な場所でバスを止めて観察を始めると、早速、ノビタキ、ホオアカが姿を見せてくれ、小雨模様にもかかわらずホオアカは良くさえずっていました。またカラマツにはカッコウが止まってさえずっていたため望遠鏡を使って観察することができました。このツアーはバスを下りて歩きまわることがないため、少々の雨であれば観察に支障がないのが幸いで、次の場所でもノビタキ、ホオアカに加え、コヨシキリも元気にさえずり、電線にはコムクドリのつがいが何度も止まってくれました。お昼を過ぎたことから一旦、昼食の時間をとり午後からも再び北富士演習場に入って、この時間はかなり大回りに外周を走る形でめぐってみました。小雨は降っていましたが気になるほどではなく、この時間は相変わらずノビタキ、ホオアカ、コヨシキリが見られ、同じ場所を行ったり来たりしているビンズイにも出会うことができました。また托卵をするカッコウに対して、ノビタキはかなり警戒しているようで、カッコウがけたたましく鳴いたかと思うと、ノビタキに追われて逃げ回っている姿も見ることができました。そしてやや霧がかかってきたころに、いきなりどこからともなくオオジシギが飛んできて我々の周囲を飛び始めました。観察していると「ズビャーク、ズビャーク」という独特の声を発しながら急上昇、急降下を繰り返すディスプレイフライトが始まり、いつの間にか2羽になっていました。また付近にはノスリやモズの姿もありました。一旦、休憩を挟んだ後も再び演習場に入り、最後も再びかなり間近の低空を飛び回る2個体のオオジシギを見てこの日の探鳥を終えました。かなり激しい雨の予報が出てはいましたが、結果的には小雨程度でそれほど気になる雨でありませんでした。

12日、この日は早朝探鳥のために05:00にホテルを出発しました。残念ながらすでに小雨が降っていて、本来眺めることができる富士山も見えず、遠くの山々には霧がかかっていました。早朝は主に富士山麓ではとにかく高密度で生息しているコルリを狙ってみました。幸い雨は気になるほどではなく、早くも周辺からは4個体ほどのコルリがさえずり、ほかにもキビタキ、イカル、メジロ、センダイムシクイ、クロツグミなどの声が聞こえてきていました。少々歩くとカラマツのてっぺんでビンズイがさえずっていましたが良い距離感でさえずっているコルリがいなかったため、場所を変えることにしましたが、ここでもコルリのさえずりは聞こえましたが見ることはできず一旦、朝食の時間としました。この頃には雨は上がってきてはいましたがまだまだ富士山は視界がなかったことから再度、コルリを探してみました。相変わらずコルリのさえずりが聞こえる中、まずは枯れ枝に止まってさえずっているキビタキを見ることができ、その後、ようやく高い松の木でさえずっているコルリを見ることができました。そうこうしているうちに10:00になり、この頃からはエゾハルゼミの大合唱が始まってしまったことから、この後は標高2500ⅿの富士山五合目に向かいました。登っていくと視界はどんどん変わっていき、到着した駐車場からは雪を冠した富士山をなんとか眺めることができました。雨が続いていたことから小鳥たちがやってくるのか心配でしたが、いきなりキクイタダキがやってきてくれ、その後はヒガラが何度となく可愛らしい姿を見せてくれ、ルリビタキのメス、ウソのオスもやってくれて、キクイタダキのメスも再度やってきてくれました。昼食後は周辺の遊歩道を歩いてみました。この頃には山頂も見ることができ、針葉樹の枝先で盛んにさえずっている真っ青なルリビタキのオスの姿を堪能することもできました。石の階段を上って視界の良い場所まで来ると、遠くの針葉樹の枝先に止まっているホシガラスも見ることができ、最後には「ガーガーガー」という声を聞くこともでき、展望台からは見事な雲海が見られました。その後は周囲にやや霧が出始めて視界が悪くなる中、荷物整理をしていただき帰路につきました。

今年の富士山ツアーはちょうど梅雨入り直後になってしまったこと、またたまたま台風接近のタイミングに当たってしまったことから、かなりの荒天予報が出る中での出発になってしまいました。ただ幸いなことに両日ともに雨は小雨程度で特に気になることはなく、観察に影響が出ることもありませんでした。北富士演習場ではノビタキやホオアカ、コヨシキリ、キジ、モズ、ビンズイなどを見ることができ、オオジシギのディスプレイフライトが存分に見られたことは最大の成果でした。また山麓の林では当地の代表種であるコルリやキビタキが見られ、富士山五合目ではキクイタダキやホシガラス、ウソ、ルリビタキ、ヒガラが見られました。短時間で亜高山帯、山麓の森林、草原とさまざまな環境がめぐれることは魅力的で、富士山周辺が野鳥の宝庫であることを認識できました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

ウソ 撮影:須崎明男様

 

ルリビタキ 撮影:武藤政男様

 

キジ 撮影:坂東俊輝様

 

ホオアカ 撮影:須崎明男様

 

キクイタダキ 撮影:武藤政男様

 

コヨシキリ 撮影:坂東俊輝様

 

キクイタダキ 撮影:須崎明男様

 

コヨシキリ 撮影:武藤政男様

 

ルリビタキ 撮影:坂東俊輝様

 

ヒガラ 撮影:須崎明男様

 

コムクドリ 撮影:武藤政男様

 

ノビタキ 撮影:坂東俊輝様

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