【ツアー報告】冬の信州でイスカに会いたい! 2024年1月30日~31日
(写真:イスカ 撮影:IH様)
人気のある赤い鳥の中でも特徴的な嘴を持っているイスカは日本国内では冬鳥とされていますが夏季にも見ることがあり、少々謎がある鳥でもあります。また毎冬毎冬飛来するわけではないためなかなか出会いのチャンスがないのも事実で、出会うことはなかなか難しいのが現実です。イスカは特にマツの種子を好んで食べるため針葉樹の林を探すことが重要で、松かさをこじ開けやすいよう嘴が互い違いになっていることが最大の特徴です。この嘴を使ってマツなどの針葉樹の種子をついばんで食べるためこういった採食シーンが見られればとも思いツアーを企画しています。またツアーではここ数年、皆様からのリクエストが増えているシングル部屋を利用したプランにしています。今回は幸いにも両日共に天候には問題ないだけでなく、暖かな小春日和になるとの予報の中で出発することができました。
30日、この日の東京都内は早朝から雲一つない快晴で、一時的ながら寒さも緩んで春のような暖かな朝でした。遠方からのご参加も可能になるようにとの考えから、集合時間を通常よりもやや遅めの東京駅前09:00にしていることもあってか、少々早めにご集合が完了したことから、予定よりも5分ほど早く東京駅前を出発して、ひとまず中央自動車道を走りました。バス車内ではいつものようにこのツアーで見られそうな鳥の解説やイスカの話などをしながら進め、途中、すっきりとした青空が広がるサービスエリアで休憩し、その後は車窓から頂に雪を冠した八ヶ岳を眺めながら進み、昼前には現地に到着しました。このツアーでは当日の現地の気温、路面状況が今一つわからないことから現地到着直前に時間を取り、ここで現地の状況を各自で判断していただき身支度などを整えていただけるようにしています。また時間がちょうどお昼にさしかかることから昼食も済ませていただいています。この日は風もなく穏やかで暖かかったことから想定していたような寒さはなく、積雪も全く見られませんでした。準備ができた後は再度バスにて出発し探鳥ポイントに向かいました。途中、再度トイレ休憩を挟んでから現地に向かい、到着後はバスを降りて全く積雪がない舗装道を歩き出しました。最初の展望台では早速、イスカの声が聞こえ、少々歩いたところからは松の木に止まる真っ赤なオスにいきなり出会うことができました。また付近にあったヌルデの実にはルリビタキ、ジョウビタキが姿を見せ、ヒガラ、エナガの姿もありました。さらに歩くとここでも松の木のてっぺんに止まる真っ赤なイスカに出会うことができ、観察していると数羽の群れが飛びたっていきました。また道端にはホオジロのオス、メスが揃って餌を探し、ツグミの姿も見られました。さらに歩くと周辺ではヤマガラ、シジュウカラ、ヒガラ、コガラ、エナガが各所で見られ、またイスカの声が聞こえたことから松の木を見てみると松ぼっくりをつつくメス、さらには松の木の中で動き回る真っ赤なオスも見られ、付近には10羽ほどのマヒワの群れも見られました。奥まで歩いたところで一旦、来た道を引き返し、しばらくイスカを待っていると、残念ながらイスカは見られなかったもののオス1羽、メス2羽、計3羽のベニマシコが草の実をついばむ様子が見られ、比較的高い位置にオスとメスが並んだ姿は印象的でした。イスカが現れなかったことから最後に周辺を歩いてみました。すると勘が当たったのか2羽のオオマシコが現れ、うち1羽のオスの亜成鳥が間近の地面に降りてくれました。さらに進むとまた別の群れと思われるオオマシコに出会うことができ、よく見ると藪の中に真っ赤な成鳥オスの姿がありましたが残念ながらこの時はしっかり見ることができませんでした。そのため少々時間オーバーになってしまうものの、もう一度同じコースを歩いてみました。すると今度は藪の中ながらも再び美しいオオマシコの成鳥オスの姿があり、しばらく見ているとさっと地面に降りました。見ているともう1羽の美しい成鳥オス、さらには亜成鳥のオスも加わり、計3羽のオオマシコをしばらくの間、間近に観察することができ、周囲が薄暗くなるまで観察してこの日の探鳥を終えました。
31日、この日も早朝から晴れ間が広がってきていて天気には問題なかろうといった感じでしたが、遠くを見ると山々には怪しげな雲がかかっていました。心配していたほどの冷え込みがない中、朝食後に出発して現地を目指し、トイレ休憩後は昨日と同じルートを歩いてみることにしました。バスを降りると早速、周辺からイスカの声が聞こえ、振り返ってみると松の木の上に数羽のイスカが群れて止まっていました。さらに進むと再びイスカの声が聞こえ、逆光ながらもカラマツに止まる美しい真っ赤なオス個体を見ることができました。その後は午前中にイスカがよく見られている場所で待機してみることにしました。この日は思っていたほどイスカの気配はなかったものの、真っ赤なオオマシコのオスが木の芽をついばむ姿が見られ、その後、歩いてきた方向から50羽以上はいようかというイスカの群れが飛んできましたが、その群れはあっさりと我々の頭上を通過していってしまいました。ただしばらく待機していると同数くらいのイスカの群れが飛んできてシラカバに止まったため、しばらくの間、群れで止まっている様子を観察することができました。その後はさらに奥に向かって歩くと、青いルリビタキが間近に現れ、周辺ではかなりの数のヒガラ、ヤマガラ、コガラ、シジュウカラ、そしてエナガがにぎやかに騒いでいました。またここでも10羽ほどのオオマシコの群れに出会うことができ、真っ赤なオス個体はいなかったものの地面を歩き回りながら餌を探す様子をしばらく観察することができました。観察中にはアトリの群れが飛んできてカラマツに止まり、最後はたった1羽でシラカバに止まるマヒワ、さらにはカヤクグリ、そして最後は道端に群れで餌を採っている10羽ほどのカシラダカの群れを見て探鳥を一旦終了し、トイレに立ち寄ってから公園で昼食の時間としました。昼食後は公園内で探鳥をすることにし、まずは対岸の高木に群れる30羽ほどのイカルの群れが見られました。川ではカルガモ、オオバン、カイツブリが見られ、期待していたミコアイサは2羽のみでした。公園を歩くと湖畔からはキンクロハジロ、ホシハジロ、カンムリカイツブリが見られ、ヨシ原にはモズの姿がありました。さらに歩くとたった1羽ながらカワアイサのオスの姿があり、遠くにはミコアイサのオス、さらにはホオジロガモのメスも見られました。この頃からは急に風が吹き始め、小雪がちらついてきましたがカモたちは元気で、芝生の上を行進するかのように歩く50羽ほどのヒドリガモの群れが印象的でした。
昨秋からの冬鳥の渡来状況を見る限り、この冬は冬鳥の渡来状況が比較的良いだろうと判断していました。結果、各所でさまざまな冬鳥との意外な出会いがあり、それが裏付けられました。当地もここ2年間は冬鳥の渡来状況が芳しくなく、イスカもオオマシコも個体数はわずかで、出会いはなかなか難しいものでした。ただ今年はたまたま冬鳥の渡来状況が良かったことからイスカ、オオマシコともに期待以上の出会いがあり幸運でした。特に真っ赤なオオマシコのオス成鳥に出会えたことは幸運としか言いようがありません。またベニマシコ、アトリ、カヤクグリ、ルリビタキ、ジョウビタキ、カシラダカ、エナガなども見られ、諏訪湖畔では少ないながらもミコアイサやカワアイサ、ホオジロガモにも出会えました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史