【ツアー報告】出水・諫早・有明海 冬の九州縦断 2024年2月9日~11日

(写真:ソデグロヅル 撮影:寺田祐治様)

冬の道東と並んで冬といえば絶対に外せないのがこの九州でしょう。出水には万羽ヅルと呼ばれるツルたちが集う世界的な越冬地があり、そこには全生息数の90%占めるナベヅル、50%を占めるマナヅルをはじめ、クロヅルやカナダヅル、そしてこの冬はたった1羽ながらソデグロヅルが越冬しています。ほかにも世界的希少種のクロツラヘラサギやズグロカモメ、有明海の干潟にはさまざまなシギ類が群れ飛び、ツクシガモの大群も圧巻です。今回は鹿児島県の出水平野から諫早干拓、そして最後は有明海の干潟と九州を縦断しながら主に3カ所の代表的な探鳥地をめぐります。数日前には都内で大雪警報が出る事態になりましたが、幸にもこの3日間は春のような穏やかな陽気になるとの予報が出ていました。

9日、数日前には東京で大雪警報が出るという異例の事態がおきましたが、この日の東京都内は早朝から快晴。羽田空港にご集合いただいた後は、この日の予定をお伝えしてから搭乗し、鹿児島空港に向かいました。ほぼ予定通り快晴の鹿児島空港に到着後は観察機材の準備をしていただいてから出発しました。この日はツルたちが群れる出水平野に向かう予定でしたが、まずは付近にある池に立ち寄りました。春のような暖かな陽気の中、堤防には20羽ほどのクロツラヘラサギが群れ、その中にはたった1羽ながらヘラサギの姿があり、時々起きては特徴的な嘴を見せてくれました。ほかにもツクシガモが群れ、カルガモ、マガモ、ホシハジロ、キンクロハジロ、ハシビロガモ、コガモなどのカモ類、さらにはタシギ、アオアシシギの姿もあり、最後にはオオタカの幼鳥が飛んでいきました。その後は休憩してから、いよいよ出水平野に向かいました。ただソデグロヅルは早朝以外は別の場所に行っているとのことで、まずはその場所に行ってみることにしました。現地が近づくと畑地には点々とナベヅル、マナヅルの姿が見られ、到着した畑地でもかなりの数のナベヅル、マナヅルが見られました。ただソデグロヅルの姿はなかったことから、出水平野に向かうことにしました。まずはトイレに寄りましたが看板にはナベヅル9,583羽、マナヅル3,373羽、クロヅル8羽、カナダヅル6羽、ソデグロヅル1羽とあり、まずはこの5種を探すことから始めました。ミヤマガラスとコクマルガラスの群れを横目で見ながら現地に向かうとこれが正解だったようで、なんとソデグロヅルがたたずんでいました。さらには3羽のカナダヅルの姿があり、驚いたことにどんどん近づいてきて結果的には手が届くような距離でのんびりと餌を探し始めました。ソデグロヅルはしばらくのんびりしていましたが、歩き出して近づいてきたかと思うと、突然飛び立ってさらに近い場所に降りて餌を採っていました。その後はやや距離はありましたがクロヅルも見つかり、なんとかツル5種を観察することができ、夕方まで観察を続けているといつの間にか風が刺すように冷たくなってきていました。

10日、この日の朝はやや雲がかかってはいましたが天気予報は悪くはなく、日の出前に出発して早朝のツルの塒立ちを観察しました。ソデグロヅルは干拓地内の塒にいて、早朝には飛びたってしまうとのことで見ていると、ナベヅルやマナヅルが騒ぎ立てている中でもじっとしていて果たしてどこに行くのかといった感じでしたが、突然飛びたって干拓地からは離れていきました。その後は干拓地内での給餌作業が始まり無数のツルたちがどんどん飛来してまさにクライマックスといった状況になりました。しばらく観察した後は群れているミヤマガラスを間近に観察し、その中に混じっているコクマルガラスの成鳥も見ることができました。そしてこの日も再度別個体と思われるクロヅルを観察してから一旦、ホテルに戻って朝食をいただき、その後は熊本港フェリーターミナルに向いました。出航後は堤防上にいるウミウを見ながら進み、たまたま海がベタ凪だったこともあって、群れで浮いているカンムリカイツブリが各所で大量に見られ、船首方向に浮いているカンムリカイツブリが一斉に飛び立つ様子も見ることができました。また船尾方向を見るとユリカモメ、ウミネコが飛び交い、たった1度ながらスナメリを見ることもできました。諫早干拓に向かう途中では風がないので条件が良いかと思いましたが、準備を整えて堤防に上がると意外にも風があり、早くもその風に乗るかのようにハイイロチュウヒのメスが飛んでいました。ひとまずツリスガラの気配がないかと歩いてみましたがその気配はなく、そうこうしているうちにもハイイロチュウヒのメスが複数飛びたち、我々の目の前を乱舞していました。逆方向に歩くと湖面から飛び立っては降り、また飛び立つといった行動を繰り返すトモエガモの群れが見え、いよいよハイイロチュウヒのオスも飛び始めました。すると数万羽はいようかというトモエガモの大群が一斉に飛び立ち、まるで巨大な生き物のようになって空中を移動し始め、あまりの数の大きさに圧倒されたのでした。

11日、この日の朝はやや冷え込んだものの早朝から快晴の中、朝食後に出発しました。カササギに期待したものの気配はなく、行進するかのように歩くマガモ、そして木々にはツグミが群れ、ジョウビタキの姿もありました。その後はヨシ原でツリスガラを探してみました。川にはヒドリガモやマガモ、カルガモ、オカヨシガモが群れ、潮位が低いこともあって干潟になった場所にはタゲリの姿もありました。ヨシ原を見るとホオジロやアオジ、オオジュリンが見られましたが、なかなかツリスガラの姿はありませんでした。ただ来た道を戻って再度探したところ、ホオジロ、オオジュリンとともに採食しているツリスガラの姿があり、わずかな時間ながらその姿を見ることができました。その後は最後の探鳥地である東与賀の干潟に向かいました。ただこの辺りからはよくカササギが見られていることから外を見ていると、たまたま小さな公園のような場所に餌を探している3羽のカササギがいたことからまずはバス車内から観察し、その後はバスを降りて観察しました。カササギは木に止まったり地面を歩いたりしていて比較的じっくりと観察することができました。途中で探鳥をしたため到着が遅れてしまいましたが、東与賀に到着後は各自準備をしていただいてから干潟に向いました。到着がやや遅れてしまったため干潟はすでに満潮でシギたちは降りる所がなくなり歩道に群れ、ハマシギ、シロチドリ、メダイチドリの混群が一斉に飛び立っては降り、また飛び立っては降りといった行動を繰り返していました。この場所には次々にハマシギがやってきては大乱舞状態になり、圧巻の光景は帰るまで続きました。次第に潮が引いてくると干潟には無数のツクシガモが群れ、ダイシャクシギ、ダイゼン、ハマシギ、セグロカモメ、ニシセグロカモメ、ズグロカモメも次々に干潟に降りてきていました。そして戻る途中には4羽で干潟にたたずむソリハシセイタカシギも見ることができ、振り返るとどこまでも続く干潟とどこまでも続く野鳥たちの群れにあらためて驚きと感動をもらいつつツアーを終了しました。

まず今回は3日間を通して晴天に恵まれ、穏やかな陽気の中で過ごすことができ幸いでした。出水では圧倒されるようなナベヅル、マナヅルの群れの中からカナダヅル、クロヅルに出会うことができ、特にどんどん近ずいてきた3羽のカナダヅルは印象的で、さらに今年はソデグロヅルにも出会うことができ、ミヤマガラス、コクマルガラスの混群も圧巻でした。諫早干拓ではハイイロチュウヒのオス、メスの飛翔、そして真っ黒な塊のようになって移動するトモエガモの大群には圧倒されました。最後に訪れた東与賀ではハマシギ、シロチドリ、メダイチドリの乱舞、干潟にはツクシガモ、ダイシャクシギ、ズグロカモメが群れ、4羽のソリハシセイタカシギにも出会えました。ほかにもヘラサギ、クロツラヘラサギ、カササギ、ツリスガラ、タゲリ、ツルシギなども盛り上げてくれました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

クロヅル 撮影:宅間保隆様

 

カナダヅル 撮影:小澤正幸様

 

ソリハシセイタカシギ 撮影:日比隆様

 

ツリスガラ 撮影:福渡毅様

 

オオタカ 撮影:押田正雄様

 

ツリスガラ 撮影:寺田祐治様

 

カササギ 撮影:宅間保隆様

 

ソデグロヅル 撮影:小澤正幸様

 

ハマシギ 撮影:日比隆様

 

コクマルガラス 撮影:福渡毅様

 

カササギ 撮影:押田正雄様

 

ツリスガラ 撮影:寺田祐治様

 

トモエガモの大群 撮影:宅間保隆様

 

ツクシガモ 撮影:小澤正幸様

 

ズグロカモメ 撮影:日比隆様

 

ツクシガモ 撮影:福渡毅様

 

ツリスガラ 撮影:押田正雄様

 

ハイイロチュウヒ 撮影:宅間保隆様

 

マナヅル 撮影:小澤正幸様

 

マナヅル 撮影:日比隆様

 

ヘラサギ 撮影:福渡毅様

 

ツルシギ 撮影:宅間保隆様

 

カナダヅル 撮影:日比隆様

 

ナベヅル 撮影:福渡毅様

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