【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2025年5月29日~30日

この時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すと長年にわたってこういった風景が全く変わらない点は驚きです。ここはタイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するピンク色のタニウツギや紫色の桐の花も見事な時期です。今回は天気が次第に悪くなる傾向とのことで、初日の深夜から2日目の午前中にかけては残念ながら雨の予報が出てしまいました。

29日、この日の東京都内は早朝から薄雲がかかっていましたが、集合時間が近くなってきたころからは晴れ間が見え始めていました。予定通りご集合が完了したことから09:00に出発してひとまず関越自動車道を走り新潟県を目指しました。車内では今回のツアーで期待できる種について解説するとともに、現地の環境についてもお伝えしました。ただ、途中では乗用車が横転するほどの事故があったことから30分ほど遅れが生じてしまいました。そのため途中のサービスエリアに立ち寄った後は各自、移動中のバス車内で昼食をとっていただけるよう準備していただいてから再出発しました。その後はやや青空が見えるサービスエリアに立ち寄ってから、高速道路を降り、それ以降はひたすら山道を走って峠を越え、途中、車窓からは豪雪地帯らしい家屋、そしてこの時期の北信越を代表するピンク色のタニウツギの花が見えていました。その後はようやく現地に到着したことから、ここで観察機材の準備をしていただき、明日の天候が悪いとのことから、早々に出発してまずはチゴモズを探してみました。ここではカッコウの声が響き、間近に止まったノジコがレモンイエローの美しい姿を見せながら軽やかにさえずってくれました。また遠くの杉の木にはブッポウソウが止まっていて、フライングキャッチをしているのか、飛び立っては戻り、また飛び立っては戻りといった行動を繰り返していました。また眼下の草にはオオヨシキリが止まってけたたましくさえずり、この日はモズのつがいの姿もありました。そうこうしているうちに遠くの杉の木に止まって鳴いているチゴモズのオスの姿があり、しばらくして飛び去ったことから場所を変えて探してみました。ここでは再び電線に止まってさえずっているノジコが見られ、飛んできたカッコウが杉の木に止まってさえずってくれました。またサシバの姿がたびたび見られたもののチゴモズの気配がなかったことから再び場所を変えてみましたが、以降、その姿がなかったことから休憩をとってから移動することにしました。到着すると早速、つがいと思われるブッポウソウが2羽で仲良く止まっていて、一旦飛び去ってしまったものの、付近の枯れ木に仲良く止まってくれました。しばらく観察した後は残念ながら姿が見えなくなってしまいましたが、その間にはイカル、ヤマガラが杉の木に止まったり、トビ、ハチクマ、アマツバメ、サショウクイが飛んだりと楽しめ、帰り間際には飛んできたブッポウソウが電線に止まり、フライキャッチで餌をとらえたもう1羽が飛んできて隣に止まり、その餌をもう1羽に与える求愛給餌を見ることができました。探鳥後は宿に向かい、到着後は一旦お部屋に入っていただき夕食をいただいてから外に出てヨタカの観察をしてみました。まだまだ薄明るい頃からヨタカの声が聞こえましたが、その声が接近する様子はなく20:00にこの日の探鳥を終えました。

30日、この日は早朝から小雨が落ちていましたが、外に出るとオオルリやアカショウビンの声が響き、2羽のイカルが木に止まっていました。早朝は予定通りブッポウソウを見に行くことにしました。現地に到着すると早くも2羽のブッポウソウの姿がありましたが、あっという間に飛び去ってしまい、その後は気配がなかったことから少々場所を変えてみました。小雨が降る中でしたが森の奥からはブッポウソウのけたたましい声が聞こえ、しばらくすると2羽のブッポウソウが上空を飛びまわってくれました。探鳥後は一旦宿に戻って朝食をいただき、その後は遠くの山々の上にあった雲が次第に取れていく中、チゴモズを探してみることにしました。途中にあるポイントでバスを降りると、まだまだ小雨が降ってはいましたがノジコの元気なさえずりが聞こえ、探してみると桐の木に止まっているレモンイエローの美しい姿を見ることができました。ただ30分ほどしてもチゴモズの気配がなかったことから、休憩をはさんで昨日、チゴモズを見た場所に行ってみることにしました。この頃にはようやく雨が上がり、空がかなり明るくなってきていました。バスを降りると雨上がりのせいか、ホトトギス、ツツドリ、カッコウ、クロツグミがさえずり、相変わらずノジコが新緑に溶け込むようにしてさえずっていました。また眼下ではオオヨシキリが元気よく歌い、この日はつがいと思われる2羽のモズの姿もありました。そしてようやくチゴモズの姿があったものの、少々距離があったことから移動して待つことにしました。ここでも各所でノジコがさえずり、電線にはニュウナイスズメが止まっていました。しばらくするとモズのつがいが鳴き始め、モズが去った後にはけたたましく鳴きながらチゴモズが杉の木のてっぺんに止まりました。その後、一旦姿を消してしまいましたが、直後には周辺の低木に止まるなどして頻繁に姿を見せてくれ、思いほのかじっくりとその姿を堪能することができました。またこの日はサシバの姿もよく見られ、杉の木に止まっている姿や「ピッ、クィー」という甲高い声で鳴きながら周辺を飛び回る姿も多く見られました。そして突然、ホトトギスのメスの声が聞こえ、林から飛び立った個体が杉の木に止まりました。そのため望遠鏡で見てみると後ろ姿ながら頭部のみが赤い独特の姿で驚かされました。そして時間がちょうど12:00になったことから観察を終了して昼食の時間とし、残った時間がわずかだったことから、そのまま周辺を散策してこの日の探鳥を終えました。雨が心配な1日ではありましたが、気がつくと空には青空が見えていていました。

今回は2日目に雨の予報が出てしまいましたが、結果的には早朝に小雨が降った程度で済み、探鳥に大きな影響が出ることはありませんでした。主役のブッポウソウは2日目は動きが悪くほぼ見られませんでしたが、初日に飛翔や求愛給餌といったさまざまな行動が見られました。チゴモズは期待していた場所では見られずでしたが、幸いにも別の場所で1個体が見られ、高木に止まって鳴いている姿、さらには低木で餌を探すシーンなど比較的じっくり観察することができました。ほかにも当地を代表するノジコ、サシバもよく見られ、アカゲラ、オオアカゲラ、アオゲラ、イカル、カッコウ、そして今回はホトトギスを見る幸運もありました。また声だけでしたがアカショウビンやヨタカも確認できました。今後も当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが保たれるようご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

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