【ツアー報告】ブッポウソウとチゴモズが棲む松之山の森 2025年6月6日~7日

(写真:ブッポウソウ 撮影:山田美樹様)
この時期は恒例となっている北信越のブナ林をめぐりながら主にブッポウソウとチゴモズを探すツアーの時期です。今回訪れる場所は私的には20年以上通っていますが、のどかな山村風景はまるで日本むかし話に出てくるような独特の風情があり、豪雪地帯らしい家屋の作りも印象的です。思い返すと長年にわたってこういった風景が全く変わらない点は驚きです。ここはタイトルにもなっているブッポウソウ、チゴモズといった希少な野鳥が生息しているほか、ブナ林を好む野鳥たちが数多く生息し、この時期は北信越を代表するピンク色のタニウツギや紫色の桐の花も見事な時期です。そろそろ梅雨入りが気になる時期ではありますが、今回は両日ほぼ晴天予報で最高気温が26℃まで上がるとの予報が出ていました。
6日、この日の東京都内は早朝から快晴で、最高気温が28℃まで上がるとの予報が出ていて、現地の天気予報でも最高気温が27℃になるとのことでした。予定通りご集合が完了したことから09:00に出発してひとまず関越自動車道を走り新潟県を目指しました。車内では今回のツアーで期待できる種について解説するとともに、現地の環境やここまでのツアーでの状況についてもお伝えしました。まずはサービスエリアに立ち寄った後はさらにバスを進めて高速道路を降り、それ以降はひたすら山道を走って峠を越えました。天気予報では快晴とのことで暑さが心配でしたが、この頃からは薄雲が広がってきていて、太陽がギラギラした感じではありませんでした。車窓から外を見ると豪雪地帯らしい独特の形をした家屋、そしてこの時期の北信越を代表するピンク色のタニウツギの花が見えていました。その後はようやく現地に到着したことから、ここで各自昼食をとっていただくとともに、観察機材の準備をしていただきました。その後はまずチゴモズを探してみました。最初の場所では早速、電線に止まったホオジロがさえずり、しばらくするとレモンイエローが鮮やかなノジコがさえずり始めました。また、けたたましくさえずっていたオオヨシキリが木のてっぺんに止まってさえずり、上空にはハチクマが悠々と旋回していました。しばらくすると遠くからアカショウビンの涼しげなさえずりが聞こえ、カッコウも鳴き始めたことから見ていると、カッコウが間近にある杉の木に止まって、独特のポーズをとりながらさえずっていました。ただチゴモズの気配がなかったことから場所を変えてみることにしました。ここではホトトギス、クロツグミのさえずりが響き、遠くの枯れ木にはブッポウソウが止まっていました。ただここでも残念ながらチゴモズの気配がなかったことから休憩をとって移動することにしました。途中にある場所でも少々バスを降りて探鳥しましたが、ここでは杉の木に止まるサシバが見られ、アオサギが飛んでいました。夕方に現地に到着するとブッポウソウの気配がなかったことから、見晴らしの良いところまで歩いてしばらく待ってみることにしました。すると1羽のブッポウソウが飛んできて止まり、別の個体がブナ林の陰から飛び出してきて飛翔し、翼にあるライトブルーの斑をしっかり見ることができ、ブッポウソウ本来の美しい姿を見ることができました。帰り間際には「ゲッ、ゲッ」と鳴きながら2羽のブッポウソウが上空を飛んで、急降下するような独特の飛翔を見せてくれました。探鳥後は宿に向かい、到着後は一旦お部屋に入っていただき、夕食後は外に出てヨタカの観察をしてみました。ただこの日はなかなか声が聞こえず、ようやく声が聞こえたかと思うとすぐに止んでしまい、残念ながらしっかりとその声を聞くことができませんでした。
7日、この日は早朝からほぼ快晴の中、予定通り早朝に出発してブッポウソウを見に行くことにしました。現地に到着すると残念ながらブッポウソウの姿はありませんでしたが、ブナ林の奥からはアカショウビンの涼しげなさえずりが聞こえていました。その後はブッポウソウの姿が見られたものの、アカショウビンが近くまでやってきてさえずっていたことから少々移動して探鳥することにしました。移動後はアカショウビンのさえずりは聞こえなくなってしまいましたが、付近にはオオアカゲラの姿があり、ブナ林の中からはブッポウソウの声が聞こえていました。そのため待っていると2羽のブッポウソウが飛び始め、青空を波形に飛翔する美しい姿をたっぷり見ることができました。またブナの枯れ木に止まる姿も見られ、順光で見られた姿は印象的でした。探鳥後は一旦宿に戻って朝食をいただき、その後は暑くなってくることが予想される晴天の中、チゴモズを探してみることにしました。途中にあるポイントでバスを降りると、アオサギが飛び、周辺からはノジコの元気なさえずりが聞こえてはいましたがチゴモズの気配がなかったことから、休憩を挟んで別の場所で探してみることにしました。ここでは昨日同様に電線で元気にノジコがさえずり、オオヨシキリも珍しく電線に止まってさえずっていました。さらにこの時間はサシバの姿が目立ち、杉の木に止まっている姿が見られたり「ピッ、クィー」という甲高い声で鳴きなが飛翔する姿を何回も見ることができました。またホトトギスのメスの「ピピピピ・・・」という声が聞こえ、直後にはメスを追うように飛び回るオスの姿も見られました。その後は少々場所を変えてみましたがチゴモズの気配はなく、時間もお昼になったことから一旦、昼食の時間としました。昼食後も過去にチゴモズを見た場所を時間いっぱい巡ってはみました。この時間もノジコ、オオヨシキリが見られたほか、カッコウが電線に止まって間近に見ることができました。またこの日は各所でアカショウビンのさえずりが聞こえ、ある場所ではかなり近い距離感でそのさえずりを聞くことができました。
今回は両日ともに天候が良く、一時的ではありましたが真夏のような陽気になる時間帯もありました。結果的にはチゴモズの姿を見ることができなかったですが、ブッポウソウに関しては、ぜひ見ていただきたかった飛翔形を存分に見ることができ、さらには天候が良かったことから青空を背景に見ることができたのも印象的でした。また今回は各所でアカショウビンのさえずりを聞くことができ、ここ数年はほとんど気配すら感じなかったので意外な感じがしました。ほかにも当地を代表するノジコが各所で見られ、サシバも飛翔形を含め、その声もよく聞くことができました。またオシドリ、オオアカゲラ、イカル、カッコウ、サンショウクイなども見られ、声だけでしたがアカショウビンやヨタカ、クロツグミも確認できました。今後も当地ののどかな山村風景と人の営み、そして野鳥たちの営みが保たれるようご協力ください。この度はご参加いただきましてありがとうございました。
石田光史