【ツアー報告】初夏の富士山 北富士演習場と富士山五合目 2025年6月8日~9日

2013年6月にユネスコ世界文化遺産に登録された日本の象徴、富士山は野鳥の宝庫としてもよく知られています。亜高山帯の野鳥たちが間近に見られる富士山五合目は特に有名ですが、麓の森林帯はコルリの生息密度が日本一と言ってよい高さで、ほかにもキビタキ、センダイムシクイ、クロツグミ、ヒガラなどさまざまな小鳥たちが生息しています。今回はこれら亜高山帯の野鳥、麓の森林帯の野鳥たちを観察することに加え、決められた日にしか入ることができない北富士演習場内で、オオジシギやノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、カッコウ、コムクドリといった草原性の野鳥たちも探す行程を加えた富士山探鳥に特化したコースを作ってみました。ちょうど梅雨入り前で天候が安定しない時期のため、事前に天気予報をチェックし続けていましたが、この2日間は天気予報はずっと曇りとのことで、ひとまず雨さえ降らないでくれればと思いながらの出発となりました。

8日、そもそもこのツアーは東京駅前集合を通常のツアーよりも遅い09:00にして、遠方からのお客様にもご参加いただきやすくしています。余裕を持った集合時間にしていることもあってか特に問題なく順調にご集合が完了したことから、ほぼ予定通りに出発して富士山麓を目指しました。天気予報は終日曇りとのことで、ずっとはっきりしない天気でしたがバスは中央自動車道を順調に走り、車内ではこのツアーで見られる可能性が高い種の解説や前回の結果の話をしながら進みました。まずはサービスエリアに到着して休憩をとり、それ以降は曇り空ではありましたが雪を冠した富士山を見ながら進めました。そして到着した現地では薄曇りの空模様の下、少々早めの昼食をとっていただき、同時に観察機材の準備もしていただきました。そしていよいよ北富士演習場に入りました。北富士演習場は基本的には特定の日しか立ち入ることができないため、通常であればここぞとばかりに走り回るオフロードバイクが目立つのですが、この日はどちらかというと人影は少なく、途中、自転車で走る団体に会った程度でした。最初の場所では遠くからカッコウの声が響き、周辺の木ではホオジロがさえずっていました。見ていると1羽のホオアカが飛んできてコンクリートに止まり、しばらくの間、その姿を見せてくれました。少々歩くと電線に止まったノビタキがフルートの音のような声でさえずり、時折、さえずり飛翔を見せてくれました。その後は移動して場所を変えてみました。バスを降りると意外にも青空が一時的に広がり、日差しがあったことからかなり暑く感じました。ここではノビタキのつがいが飛び回り、しばらく見ていると草の中から数羽のノビタキの幼鳥が飛び出し、草に止まっては親鳥から餌をもらっていました。またホオアカも多く、あちらこちらからさえずりが聞こえ、その姿を何回も観察することができました。さらに歩くと遠くからコヨシキリの複雑なさえずりが聞こえたことから探してみると、ソングポストに何回もやってきて間近にさえずり姿をしばらく観察することができました。2時間ほどが経ったことから休憩し、その後は再度、北富士演習場に南側から入りました。ここでは再び、ノビタキ、ホオアカ、そしてコヨシキリが見られ、遠くからはオオヨシキリのさえずりも聞こえました。すると2羽のオオジシギのディスプレイフライトが始まり、奇妙なさえずりと独特の羽音を立てながら急上昇、急降下を繰り返す様子をしばらくの間、観察することができました。少々移動すると今度はオオジシギの声が地上から聞こえたため探してみましたが、草丈が高かったことから見つけることはできず、探鳥を終えることにしました。ただ戻る途中では数羽のコムクドリが地上採食していて、飛び立っては柵に止まるなど、その姿を見せてくれました。この日は結果的には終日曇りでしたが、空は比較的明るく、一時的に青空が見える時間帯もありました。

9日、この日は早朝に外に出てみると空はどんよりとした曇り空ではありましたが、富士山はその姿をはっきりと見せてくれていました。予定通り早朝にホテルを出発し、まずは富士山麓の森で探鳥をしました。早朝にもかかわらず鳥のさえずりは少なかったですが、ふと空を見上げると、驚いたことに青空が広がりはじめていました。小道を歩くと地上からヤマガラが飛び立って木に止まり、アオバトが木の実をさかんについばんでいました。周囲からはキビタキ、ホトトギス、カッコウ、センダイムシクイのさえずりが聞こえ、さらに歩くとカラマツの上で朗々とさえずっているアカハラが見られました。道を戻るとイカルが飛び、枯れ木ではホオジロがさえずっていました。そしてようやくコルリのさえずりが比較的近くで聞こえたことから探してみると、林の中の横枝でさえずり続けるコルリがいたことから、しばらくの間、時間をかけて観察することができました。探鳥後は各自朝食を購入していただき、その後は食事の時間をとってから富士山五合目に向かいました。残念ながらこの頃からはやや雲が多くなってきてしまいましたが、それでも富士山頂はよく見えていました。到着した五合目駐車場は気温11℃。ただ風がなかったことからそれほど寒さは感じませんでした。早くも周囲からはメボソムシクイ、ルリビタキの元気なさえずりが聞こえ、地味ながらキクイタダキのさえずりも聞こえていました。奥庭荘に向かって坂道を下ると、同様に鳥たちのさえずりが聞こえ、小さな水場には早くもヒガラがやってきていました。到着直後はルリビタキのメス、メボソムシクイ、ヒガラが何度もやってきて水浴びをし、その後はウソのオスも加わってにぎやかになってきました。そして前回同様に昼前あたりからは周囲からキクイタダキのさえずりが聞こえ、その後はオス、メスともに頻繁にやってきては水浴びをしていました。普段、下から観察することが多いキクイタダキですが、ここでは上から観察することができるため雌雄の区別がつくことはうれしいものです。そしてこの日は同時に2羽のキクイタダキが水浴びする珍しいシーンを見ることもできました。午後に入っても鳥たちの動きは良く、キクイタダキ、ルリビタキ、ウソ、メボソムシクイ、ヒガラが引っ切り無しに水場にやってきてくれ、ようやく青いルリビタキもやってきてくれました。ただ、いつもは午後からの登場が多いホシガラスは結局、姿を見せてくれず、14:00頃からは小雨が落ちてきたことから少々早めに探鳥を終えて東京に向かいました。

もういつ梅雨入りしてもおかしくない時期のため、天気が気になるツアーでしたが、結果的には一時的に晴れ間も見え、雨に降られたのは帰り間際だけで助かりました。初日はノビタキ、ホオアカ、コヨシキリ、コムクドリ、ヒバリ、アオジ、ホオジロなどが見られ、ノビタキのヒナが見られたり、コヨシキリを間近に見る機会がありました。そして夕方にたっぷり見ることができたオオジシギのディスプレイフライトは見事でした。翌日は早朝にコルリがたっぷり見られ、アオバト、アカハラ、アカゲラなども見られ、富士山五合目ではホシガラスは見られなかったものの、キクイタダキがたっぷり見られたほか、ルリビタキ、メボソムシクイ、ウソ、ヒガラを見ることができました。この度はご参加いただきましてありがとうございました。

石田光史

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